今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第177回 2018/01

右肩上がりの成長を続けるプライベート病院に病院経営の成功につながるカギを探る(後編)

札幌市北西部の高度急性期を担う地域中核病院、手稲渓仁会病院。ドクターヘリや最新の医療機器を導入するなど、積極的な展開を進めていますが、これらはすべて患者目線のサービスを追求してきたからこそできたことでした。医療法人 渓仁会 手稲渓仁会病院 院長の成田 吉明氏に成功する病院経営についてお話をうかがいました。

医療法人 渓仁会 手稲渓仁会病院 院長
成田 吉明 氏

手稲渓仁会病院

医療の質の向上と改善を続けるために内外の評価システムを効果的に活用

右肩上がりの成長を続けるプライベート病院に病院経営の成功につながるカギを探る(前編)はこちら

病院経営を成功させるには、常に患者主体であるかどうか、医療サービスの質が高い水準で保たれているかを確認することが欠かせません。特に、第三者の目線で評価していただくことは重要だと考えます。それが、日本医療機能評価機構による認証取得であったり、ISO9001認定であったりします。
 
もう一つ、医療の質の指標を掲げ、継続的に向上させる「QI(Quality Indicator)プロジェクト」への参加も有効な手段の一つです。QIプロジェクトは、「自院の診療の質を知り、経時的に改善する」ことを目的に、日本病院会が主宰する取り組みです。30病院で始まった2010年度から当院も参加しましたが、2017年度は349病院が参加する規模まで拡大しました。自院のクオリティの高さを内外に示す一つの指標となるため、当院のホームページでも情報を公開しています。
 
一方、内部の監査システムも機能しています。この「KMS(渓仁会マネジメントシステム)」は、渓仁会グループ全体から各職種が集まり、監査する側の能力をもつリーダー的存在を各現場で育てることで、内側からも医療の質の底上げにつなげる考えです。ISO9001の仕組みを模して監査システムを構築していますので、将来的にはKMSを主体にして監査を進めようと思っていますが、内部のみですと独りよがりになる可能性もあるため、第三者評価も継続して受けていこうと考えています。費用対効果も意識してうまく活用しながら、医療の質の向上と業務改善に取り組んでいきたいと思います。

病院経営の成功に欠かせないものは高いチーム力と情報共有

ハード、ソフトの両面において、先進的かつ積極的にさまざまなものを取り入れてきました。しかし、新しい計画を成功させるには、単に最新機器を導入すればよいわけでもなく、仕組みを作ればよいというわけでもありません。病院運営におけるあらゆる事柄には「チーム力」が絶対的に不可欠だと考えます。
 
先にご紹介したda VinciやTAVIは、今では多くの症例を積み重ねています。しかし、どちらも新しい技術の開始にあたっては、そこに関わる職種が集まり「チームダヴィンチ」「ハートチーム」と名付けたチームを結成し、勉強会や技術トレーニング、症例検討会を重ねてきたうえで、今日の成功を収めているのです。ERASもチーム医療の最たる例で、そこには、各チームが一つになって日々研鑽し、安全性を高めるための惜しみない努力が存在します。ときには緊急対応が必要なケースもありますが、そういうときこそチーム力を発揮して、スムーズに手術を終えることができています。チームを結成し、トレーニングを積む。その努力が今日の成果を生み出していることを考えると、実用前の最初の取り組みは間違っていなかったものと確信しています。
 
そして何より情報共有が肝心です。チーム間、現場スタッフ間はもちろん、院内全体の情報共有が、安定した病院経営に大きく関与するものと考えます。案件に応じて、適切なタイミングで私や各部署の責任者に情報が伝わるということが大切です。当院では、私が院長になったときから、毎朝院長室でミーティングを行い、前日に院内で起きたことを共有するようにしています。情報共有は、医療の質の向上や安全管理すべてに通じる、最も重要なポイントです。
 
こうしたさまざまな取り組みの成果もあり、病院としての機能はしっかり果たせていると自負しています。ですから、当院の「運営」は成功していると言ってもよいと思います。しかし、「経営」となると話は別です。当院は民間病院ですが、公的病院と同じように政策医療の一端を担っています。しかし自治体からの財政支援も税制上の優遇もありません。そのような厳しい中で、常に余裕のある黒字を維持し続けなければならないと思っていますから、当院にも経営課題はまだまだ山積しています。
 
また、病院経営の成功には、患者満足だけでなく、職員満足も追求していかなければなりません。それが両立できてこそ、真に成功している病院と言えるのではないかと思うのです。そういった意味では、各診療科の部長クラスと年3回の院長ヒアリングを行っていることは、職員満足を高めるための第一歩の取り組みだと思います。そしてこの先は、トップメンバーだけでなく、中堅クラスのスタッフともランチ会を設けるなどして、現場の忌憚のない意見も聞いていきたいと考えています。そういった意見を運営にきちんと反映させていくことが、病院経営の成功に欠かせない取り組みの一つだと考えます。

医療法人 渓仁会 手稲渓仁会病院 院長
成田 吉明氏

【略歴】
1960年北海道旭川市生まれ。1985年に北海道大学医学部を卒業と同時に第二外科に入局、1989年に北海道大学大学院を修了。帯広厚生病院、伊達赤十字病院、北海道大学病院を経て、1997年に手稲渓仁会病院に入職。外科主任医長、外科部長、副院長兼地域連携福祉センター長を歴任し、2015年4月より現職。
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