今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第179回 2018/03

看護職が親の介護と仕事を両立させるためには(前編)

超高齢社会を迎えた日本では、介護の問題を抱える家庭は少なくありません。団塊シニア世代が増えてきた看護職にとっても身近な話題。ある日突然降りかかってくる深刻な問題に、仕事を続けられず、離職という選択をするケースもあります。看護職が親の介護をすることになったとき、仕事と両立するためにはどうすればよいのか。また、現在どのような介護支援制度があるのかについて、日本看護協会・常任理事の熊谷雅美氏にお話をうかがいました。

日本看護協会 常任理事
熊谷 雅美 氏

日本看護協会

看護界でも見過ごせなくなってきている介護問題の現状

現在の看護師の平均年齢は43歳です。順当に考えれば、10年後にはこれが50代にスライドすることになり、平均年齢はさらに上がっていくでしょう。経験豊かなナースが増えることは医療の質が上がり、とてもよいことですが、それに伴って付随してくるのが「介護」の問題です。50代の看護職の場合、親は70〜80代以降。そうなると直面するのが「親の介護」です。日本看護協会では、平均年齢が高くなるにつれて、働きながら介護をする看護職の数が増えるだろうと予想しています。少子化が問題視されてきた日本では、少子化対策に積極的に取り組んできました。看護界も同様で、子どもを安心して産んで育てるという仕組みについては手厚くなってきています。一方で、介護への支援はまだ十分と言える状況ではありません。これからは子どもを育てる支援と介護の支援、両方の支援の充実化が必要になります。

看護職のWLBインデックス調査からみえてくるもの

日本看護協会では「看護職のワーク・ライフ・バランス(WLB)インデックス調査」を行っています。この調査では、WLBに関して、働く側である看護職を対象とした「職員調査」と、制度を構築・導入する側である病院などの施設を対象とした「施設調査」を同時に実施しています。調査した2つのデータから得られるWLBについての現状が、勤務環境改善を検討、実施するための一つの指針となるのです。
 
平成25年度の「看護職員実態調査」によると、現在介護をしている人は50〜59歳では14.3%、60歳以上では18.4%、過去5年以内に介護をしていた人は50〜59歳では18.6%、60歳以上では21.4%と少なくありません。しかし、平成27年に370施設に対して行った「看護職のWLBインデックス調査」では、介護による正規看護職員の1施設当たりの介護休業者数の全体平均は0.45人、400人以上の施設で1.18人、正規看護職員の平均年齢が50歳以上の施設で0.33人と多くはありません。とはいえ、2009年の「看護職員実態調査」にあった「短時間勤務を利用したい理由」という質問項目では、20〜30代では「出産・子育て」がもっとも多かったのに対し、40代前半から50代では「介護」の割合が増加していて、40〜44歳で31.3%、45〜49歳で33.9%、50〜54歳で43.8%となっていました。こうした結果を踏まえますと、これからは介護支援についても積極的に取り組んでいく必要があると感じています。

ある日突然始まることが多い「親の介護」

妊娠・出産の場合はある程度先が読めますが、親の病気や介護はある日突然起こります。しかし、看護界は常に人手不足の状態なので、急な休暇を申請しても人の手配がなかなかつきにくいのが現状です。とはいえ親の介護は待ったなし。介護の負担が大きくなるにつれ、仕事との両立がうまくいかなくなり、最終的には離職という選択になってしまうのです。経験豊かなベテラン看護職が介護を理由に離職すると、さらなる人手不足という悪いスパイラルに陥ってしまうため、なんとしてもくい止めなければいけません。
 
こうした背景には、どの職種においても言えることですが、必要最低限の人員で業務に当たることで休暇がとりにくいという日本の企業体制があります。そこを変えていくには、みんなで仕事を分担して個人の負担を軽くする「ワークシェア」を推進していかなければならないでしょう。そして、一人ひとりの看護職が仕事と介護を両立できるよう、支援制度をうまく活用してもらえるように、施設や行政、看護部長に働きかけることも重要だと考えています。
 
後編では、親の介護に直面した時に知っておきたい介護制度やナースセンターの活用法についてお話しいただきます。

日本看護協会 常任理事
済生会横浜市東部病院 顧問(前 副院長兼看護部長)
熊谷 雅美 氏
 
【略歴】
済生会神奈川県病院での臨床経験後、看護基礎教育や衛生行政などを経験。
2003年済生会神奈川県病院看護部長。
2006年済生会横浜市東部病院看護部長。2007年同院副院長兼看護部長。
2003年横浜国立大学大学院教育研究科学校教育臨床修了(教育学修士)、
2013年東京医療保健大学大学院医療保健学研究科修了(看護マネジメント学修士)
2013年認定看護管理者

2009年~厚生労働省 新人看護職員研修に関する検討会委員
2010年~厚生労働省 医道審議会委
2016年~厚生労働省 新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会構成員
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