今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第119回 2013/03

外国人看護師の受け入れにおける課題と提案

フィリピン、インドネシアからの外国人スタッフを日本で先行的に受け入れ、2008年に開始されたEPA(経済連携協定)に基づき、日本の国家資格の取得を目指す外国人看護師と介護福祉士候補者の育成に力を入れている永生病院。受け入れ施設側の苦悩や制度の在り方、看護師やコ・メディカルへの影響などについて、医療法人社団永生会永生病院の宮澤美代子さんにお話を伺いました。

医療法人社団永生会 永生病院
法人本部 相談役兼看護・介護採用担当部長
宮澤 美代子 氏

外国人看護師・介護福祉士を受け入れる「EPA」とは

日本では現在、EPA(Economic Partner Agreement:経済連携協定)に基づいて、外国人看護師および介護福祉士候補者の受け入れを実施しています。2008年にインドネシア、2009年にフィリピンとEPAが締結され、これまで累計1,562名※の外国人候補者が入国し、国内の施設で研修・就労をしながら日本の国家資格取得を目指しています。

また、ベトナムからの候補者の受け入れも既に決定しており、本年11月に同制度が施行される予定になっています。日本の少子高齢化の問題は深刻化しており、労働力が減少する中で外国人の受け入れは国としても重要な課題です。しかし政府としては、この制度はあくまでも経済活動の連携を強化する観点から実施するものであり、看護・介護分野の労働力不足への対応として行うものではないと強調しています。

※2012年度の入国完了(2012年5月29日)時点

試験的な試みからスタートした永生病院での受け入れ

永生病院でEPAを意識して外国人の受け入れを開始したのは2004年です。その頃NHKのある番組を見ていた私は、海外では外国人スタッフが医療現場で働いていることを知り、日本も将来的にこういう日が来るのではないかと感じていました。そのような時、フィリピンのある施設からヘルパー2級養成の実習の受け入れ要請があり、お引き受けすることにしました。前例のない試験的な試みではありましたが、フィリピンの実習生の皆さんはとても明るく働き者で、看護師だけでなくコ・メディカルのスタッフや患者さんとも和やかな雰囲気で実習は進みました。

この取り組みをきっかけに、その後も数名の外国人スタッフの研修を受け入れるなど、外国人の入職に積極的に取り組んでいきました。 EPAが締結された2008年にはインドネシア人の看護師2名を、2009年はフィリピン人とインドネシア人の看護師と介護福祉士それぞれ2名ずつを受け入れるなど、現在に至るまで定期的に受け入れをしています。本年から開始されるベトナムの候補生も受け入れる予定です。


  • エクセルシス・ジョン・カドゥンゴグ・ボルボンさん fromフィリピン 将来はフィリピンに帰って、独立をして親孝行したいと話すエクセルさん。「日本の医療をフィリピンに伝えたい」と力強く語ってくれた。

  • デヴィ・セプティ・ヤスリニさん fromインドネシア 来日当初の目標は国家資格を取ること。その夢が叶った今、次のゴールを「日本の大学に通って、特定看護師を目指したい」と話してくれた。

受け入れには病院全体の協力が必要

外国人候補者を受け入れるということは、受け入れる施設側にもそれなりの覚悟が必要でしょう。教育・育成は看護部、生活サポートや書類手続きは人事部、引っ越しの際は管理課といったように、受け入れは病院全体の理解と協力がなければ成立しません。それなりに人件費や諸経費などの費用負担も発生します。病院にとっては大きな負担にもなりますが、受け入れたからにはできる限りのサポートを持って、外国人候補者を育成するのは当然だと思っています。

当院では、テクニカルな面では主任や師長クラスのスタッフが現場で指導し、看護や介護の勉強については、専属スタッフによる授業などの学習支援を行っています。また、外国人候補者の一番の課題である日本語に関しても、日本語教師を招いて学習する時間を設けるなど、就労時間内に学習時間を組み込むようにしています。そして、国家試験前には朝から晩まで1日中学習できる体制にもしています。

しかし、試験を受けるために、1日中仕事をせずに勉強に時間を費やしていることに関しては、少々頭を悩ませるところがあります。本当に効率の良い学習方法なのかどうか、働いていないのに給与を同様に支払われることを良しとするのか。当院でのサポート体制もまだまだ手探り状態ではありますが、よりベストな方向に向けて育成していきたいと思っています。

日本語の習得に時間を費やすべき

EPAの看護師コースの場合、外国人候補者は自国の看護師資格を持っていることが義務付けられており、インドネシアは2年間、フィリピンは3年間の実務経験を有する者にEPAへの参加資格が与えられます。訪日前後にトータル9カ月(フィリピン)、12カ月(インドネシア)の日本語研修を経て、施設での就労・研修が開始されます。その後3~4年の間に国家試験に合格できない場合、彼らは帰国しなければなりません。

日本語研修があるとは言えやはり日本語の壁は厚く、3~4年という短い期間では充分な能力を身に付けることは大変難しいことです。期間を5年ないし7年に延長したり、准看護師の免許を持っていれば滞在が認められるなど、現在の制度には検討すべき点が多々あるように思います。実務経験を有することが義務付けられていますが、そもそも文化的な背景や医療・看護の技術レベルが異なるため、現場ではその経験があまり活かされていません。

そのような現状を考えると、自国で実務を積む期間を日本語の勉強にあて、言葉をしっかり習得してから来てもらった方がよほど日本の現場で活躍できますし、国家試験対策にもなるのではないでしょうか。抱える課題は少しずつ改善されてきてはいますが、まだまだ環境を整備する必要があると考えています。

日本の将来を見据え、政策の改善に努めたい

外国人候補者を受け入れるようになってから5年が経ちます。患者さんからもあたたかく見守っていただいており、候補者の皆さんも楽しくお話しされています。「試験、頑張ってね」と励ましの言葉もいただいているようです。看護師やコ・メディカルのスタッフたちにとっては、手間もかかるし、時間もとられて大変ですが、頑張っている候補者たちと触れ合うことで良い刺激を受けているようです。自ら学ぶ姿勢がみられるようになりましたし、わからないことを積極的に調べたり、新しい資格の取得を目指すスタッフもいるほどです。

また、異文化を知ることで視野が広がり、スタッフ同士の協調性が強まったとも感じています。 受け入れには多くの課題がありますが、施設側にとっても、外国人候補者にとっても多くのメリットがあるはずです。たとえ不合格だったとしても、帰国した方々が自国の病院で看護部長を務めていたり、日系企業で働いている例もあり、日本の技術や文化を世界に発信する架け橋にもなってくれているのです。 日本の将来に備えるためにも、受け入れ施設として国の政策を一緒に考える姿勢が大切だと思っています。これからも実績を積む中で、求められていることは何かを候補者と共に考え、継続して協力していきたいと思います。

宮澤 美代子 氏
【略歴】

相模原衛生看護専門学校卒 総合相模更生病院、田名病院を経て、1990年に永生病院に主任として着任 師長、看護部長を経た現在、永生会法人の相談役兼ね看護、介護採用担当部長
*外国人看護師・介護士やEPA看護師・介護福祉士を積極的に受け入れ、病院の取り組みや課題などを、メディアや行政に広めている
【役職】
法人本部 相談役兼看護・介護採用担当部長
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