今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第135回 2014/07

病院経営のキーパーソンは看護職

病院経営におけるスキルアップが求められる時代に、看護職の役割に寄せられる期待は依然として大きいと言われています。全国に看護職副院長を増やしたいと考えている日本看護職副院長連絡協議会会長の桃田寿津代さんに、当協議会の役割とこれからの看護職に求められる能力について伺いました。

日本看護職副院長連絡協議会 会長
医療法人社団緑成会 横浜総合病院 副院長(看護部長)
神奈川県看護部長会 会長
桃田 寿津代 氏

医療法人社団緑成会 横浜総合病院 看護部

解散寸前だった協議会。会員を募り立て直しを図る

私が日本看護職副院長連絡協議会の会長職に誘われたのは、今から約6年前のことです。1996年に開催された「第1回日本看護サミット」の際に発足した当協議会ですが、その後は会員数が増えず、当然会費も集まらないといった状況が続き、運営自体が危ぶまれる状態だったそうです。「解散も考えている」と相談してくださったのは、当時の協議会会長。どのような会なのかもわからなかった私は、当時の日本看護協会の会長だった久常節子氏に相談をもちかけ、日本看護協会の後押しを受けるかたちで、2008年より当協議会の会長職をお引き受けすることにいたしました。

しかし、何から始めればよいのか右も左もわからない状態。そこでまずは、仲間を増やすことから始めようと試みました。各都道府県の知事に猛アタックをし、県立病院の看護部長クラスを副院長職に就任させるよう嘆願したり、新聞や雑誌などのマスコミにも協力いただき、当協議会の認知拡大に努めるなどいたしました。 徐々に会員数が増えていき、日本看護協会の総会の日程と合わせて当協議会の研修会も開催するようになっていきました。私が会長職に就いた当時は20名だった会員数が、お陰さまで130~140名にまで増え、現在は、日本看護協会のJNAホール(東京・表参道)を会場に、定期的に総会や研修会などを開催しています。

自信をもって経営に参加。知識を養う場として活用

病院経営のレベルアップを図ることが求められる昨今、看護職に寄せられる期待は大きいものです。当協議会の会員の皆様には、変化する医療制度を理解し、副院長を担う看護職として自信をもって経営の意思決定に関わるための知識を養う場としても活用してもらっています。そのため研修会では毎回講師をお招きし、時代に合ったテーマでの講演会を行っています。 講師の選定は私の役割の一つです。なかなかお呼びできないような方の貴重な講演でないと集客に結びつきませんから、そういう方々をお招きできるように、私自身のネットワークづくりにも日頃から力を入れています。先日も安倍総理主催の「桜を見る会」に招待いただき、たくさんの方にお目にかかることができましたので、次回の研修会などへつなげたいと思っています。

患者や看護スタッフへの配慮。経営権があるからこそ判断できる

これからの病院経営の要となるのは、看護職副院長だと私は考えています。
これは当院での出来事ですが、気管切開で入院された年配の患者さんが、ご自分で吸引ができないからと、退院に不安を感じていらっしゃったことがありました。要支援で介護保険が適用されないため、訪問看護の利用もできないからと、地域医療連携室でも対応に悩んでいました。そのことを知った私は、患者さんに「吸引に困ったら当院の訪問看護をいつでも利用してください。お金もいりません」とお伝えし、安心して退院いただきました。なぜこのような対応をしたのかと申しますと、すべては地域の方に喜んでいただくためです。もちろん経営的な判断を踏まえた上で決断したことですが、こういった対応をどんどんできるような病院や、安心して在宅で過ごせるような地域は、素晴らしいと思いませんか。

また、私は看護スタッフに対しても、休憩室にウォーターサーバーを導入したり、スタッフ同士の交流会の予算を提供したりと、働く環境を少しでも快適にすることであれば、経費を惜しまないことにしています。先日も、多職種でボーリング大会をしたいとスタッフから申し出があり、私は積極的にバックアップいたしました。病院側からすると「看護部は何をしているんだ」と思われるかもしれませんが、医療現場という特殊な職場では、活気や楽しみがなければスタッフが育ちませんし、続かないと思うのです。しかも、現場スタッフが笑顔でやる気に満ちていると、患者さんにも良い影響をもたらすはずです。

訪問看護を患者さんに紹介したケースや、前述のようなスタッフのバックアップなどは、予算も絡むため看護部長では判断できないことで、私が副院長であり経営にタッチしているからこそ可能だったことです。そして、患者さんやスタッフが求めることを素早く察知できたのも、私が臨床での経験が長かったからだと思います。

患者さんに寄り添いながら、相談に乗り、不安を和らげ、回復をサポートできるのは一番近くにいる看護職であり、医療の中心的な役割を果たしていると言っても良いはずです。その上、看護職は院内スタッフの半分以上を占める集団だからこそ、病院の経営上、副院長ポストに看護職を置くことはとても重要なことだと考えます。看護師は本来真面目な人間が多い職業ですから、与えられた役割に対して一生懸命頑張るんです。そういった意味でも、大きな役職を与えることは、経営面のみならず、運営上の改革に看護職ならではの細やかな提案も期待でき、病院にとっても助かる面が多いのではないかと思います。

副院長を担うために心掛けてほしいこと

看護職副院長のポジションを目指すためには、次の4つのことを日頃から心掛けていただきたいと思います。

①看護技術が正確であること
②多くの経験を積んでいること
③院内の隅々まで配慮できること
④世の中の動きに敏感であること

看護技術が正確であることは、看護職としての基本です。その上で、多くの診療科で経験を積み、院内全体を見渡すことができる広い視野を持つように努めてください。そして、患者さん視点で医療・看護を考えられるように、日頃から政治や医療制度などの時事問題や日本情勢にも目を向けてください。

そして、最終的に看護職副院長に求められるのは、経営的視点からの判断を下せる能力です。特に民間病院の場合、公的病院に比べて補助金が少ないため、収支に対するシビアな視点が要求されます。例えば、看護職一人の年間人件費はおよそ500万円で計算しますが、診療報酬を加味した収支になっているかどうか、また、消耗品なども何にどれだけ予算がかかるのかを理解した上で計算できなければ、この職は務まりません。1千万円の備品を買うにあたり、消費税が5%か8%では大きく病院経営に影響を与えます。このようなことをしっかり判断できる経営感覚を身に付ける必要があります。また、医師との関係づくりやスタッフの教育においても手腕を発揮できることも大切です。

看護職副院長を全国に。それが協議会の願い

患者さんや病院で働くスタッフみんなが明るく過ごせるような病院づくりを進めてほしい。そのような役割を果たせるのは看護職副院長であり、この職をこれからも全国に広めていきたいと思っています。
そのため、日本看護職副院長連絡協議会では、就職先を探すお手伝いもしています。例えば、優秀な看護師が定年で退職するのではなく、病院に貢献できる間は可能な限り働き続けてよいと思うのです。職に就いたのちも、数年で辞めてしまうのではなく、継続して働けるような雇用関係を全国に構築していきたいと考えています。私の元へは副院長や管理職を探している病院からの問い合わせが多く寄せられます。定年が近い看護師と、人材を求める病院をうまくマッチングさせて看護職副院長を増やしていくことも、これからの課題の一つですね。

私は協議会の研修会などでのあいさつで、「患者さんや地域を豊かにできるのは看護職の私たち。頑張ればできないことは絶対にない」と、看護職副院長の可能性をどんどん広げてほしいとお話ししています。看護や医療だけでなく、さまざまな分野にご自身のネットワークを広げていただき、広く深く、そして地域の方々に慕われるような副院長を目指してほしいですね。

桃田 寿津代 氏
【略歴】
1968年 日本医学技術学校高等看護科卒業
1968年 首藤病院(大阪市福島区)
1986年 前田外科病院(東京都/現・赤坂見附前田病院)
1988年 横浜総合病院看護部長
2008年 日本看護職副院長連絡協議会会長
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