今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第21回 2005/01

これからの病院のあるべき姿を探る病院機能評価

(財)日本医療機能評価機構が、日本の病院を第三者の目で評価するという事業を開始してからほぼ7年が経ち、わが国の医療機能の評価機関として着実に実績を積み重ねています。今回は実際に病院の機能の評価に当たっている梅里さんに、医療機能評価の実際、その目指すところなどについてうかがいました。

(財)日本医療機能評価機構 客員研究主幹
日本大学医学部 医療管理学教室 助教授
梅里 良正 氏

(財)日本医療機能評価機構

日本の病院の約1/4が既に受審

1997年から評価事業を始めましたが、最近では急速に受審する病院の数が増えました。現在、全国で9122ある病院の4分の1以上が既に申込をされています。審査を終わっているのが1800弱で、そのうち認定を取得している病院が8割を超えています。比較的、認定証の取得率は高く、それほど難しくはないのではないかという印象があるかと思います。しかし、審査が終わって一発で認定という場合と、いくつかの項目の指摘を受け、再審査で認定という場合があります。一発認定は、2003年の年間平均では3割ぐらいです。

ですから何か問題の指摘は受けますよ、ということかもしれません。逆に言うとその方が病院のためにはいいと思っています。問題の指摘を受けた病院がその後改善をしてすごく良くなった状況を何回も見ておりますので、病院は必ずしも1回で認定を取ることを狙わなくてもいいのではないかと思っています。

評価の仕組みと審査の実際

審査そのものは、書類を提出する書面審査と、病院を実際に見せていただく訪問審査があります。書面審査には、病院のデータをいろいろ書いていただく現況調査と、自己評価という仕組みを作っております。自己評価は、訪問審査のときに審査員が病院で確認をする評価項目とまったく同じものを、病院側があらかじめ自分たちで評価するというものです。
私どもが行う事業は行政が行う監査ではありません。病院と一緒になってできるだけ病院を良くしていこうという、一種の改善活動と考えています。したがって、評価項目というのは試験問題に当たるわけですが、これを病院に全部事前に見ていただいて、病院が足りないと思うところは訪問当日までに直していただくようにしています。その直すことが大事だということです。直していただくことが目的なので、どういうことを求めているかという調査項目はすべてオープンなのです。
審査は8つの領域に分かれています。
①病院の組織に関わること、②患者の権利と安全に関わること、③療養環境と患者サービスに関わること、④診療の質、⑤看護の質、⑥病院運営管理の合理性、一般病院の場合はこの1から6までの6つの領域だけを評価します。精神科の病棟がある病院は、⑦精神科に特有な病院機能、療養病棟のある病院は、⑧療養病床に特有な病院機能という領域が加わることになります。この領域の下にそれぞれ大・中・小の三階層の評価項目が作られており、詳細に評価をしていくことになります。

評価項目が求めているもの

評価の領域は第一領域から第八領域までありますが、評価項目が求めているポイントを7つほど挙げてみます。
一番目は、病院が地域でどういう役割を果たそうとしているのか、病院自身がそのことをきちっと認識しているかどうかです。病院がその地域でどういう患者さんに対応する役割を持っているのか、あるいはどういう方向に向かおうしているのか。その役割を明確に認識しているということと、そのために計画的な病院の運営をしているかということを求めています。
二番目は、患者中心の病院運営であるか、患者さんを中心に考える医療提供体制であるかどうか、そういうことを求めています。
三番目は、説明責任と透明性・情報開示。これは現在の厚労省の医療制度改革の方針の一つに挙げられていますけれども、医療提供者と患者の信頼関係を確立するという意味で、説明責任と透明性・情報開示が重要であるということですね。
それから4番目は安全な医療の提供。この必要性はいうまでもないと思います。5番目は診療の質を高めていくということ。これも重要な柱になっております。6番目は療養環境が患者さんのために整えられているということ。7番目は、これらのことがあっても、病院がつぶれてしまっては仕方がありませんので、ある程度効率的、あるいは合理的な病院運営がなされ、地域での医療提供が継続していけるかどうか、これについての評価もしております。

説明責任と透明性・情報開示の意味

それぞれの領域で詳細な評価項目があるわけですが、その中で国民の方々に特に関心が高いと思われる項目をピックアップして少しご紹介します。
説明責任と透明性・情報開示という項目ですが、これは説明と同意、そしてその記録がきちんとできているかどうか。診療記録の開示ということで、診療情報の適切な開示・提供をしているかどうか。今は、もうないとは思いますけれど、原本のコピーは渡さない、要約なら提供するというような病院は、都合の悪いことは書かないのではないかと思われますね。原本のコピーを開示することが原則です。とにかく患者さんとの信頼関係を確実に高めていくことが狙いの一つになっています。

それから、今はいろいろなプロジェクトが動いておりますが、厚労省のがん拠点病院のプロジェクトは、胃がんや肺がんといった、疾患別のがんの進行度別の5年生存率を各施設からデータを収集して、施設名を公表して、どの施設は何パーセントと示していこうとしています。その数字が、0.5%でも高ければそっちの施設へ、という誤った解釈をしても困りますが、自分の病院の成績をどんどん外に示していくことが求められています。このような診療成績の公表なども含めて、透明性と情報開示ということを求めております。

安全な医療提供についての評価

病院では今、いろいろな取組みをして安全性を確保しようとしています。しかし、error to human という本にも書かれたように事故はどうしても起こってしまう場合があります。これはなかなかゼロにすることが難しいのですが、可能な限り発生を防止すようとする努力は大切です。例えば、患者さん、あるいは治療する身体の部位、検体、医薬品、診療録などを取り間違えないようにするためにどのような工夫がされ、それが手順として確立しているかなどといった項目ついて審査します。
診療録の取り違えなどは、「あいうえお順」でカルテを並べれば、基本的には同姓同名の方のカルテは隣に並んでしまいます。ですから、うっかり隣のカルテを取るということは起こり得るわけですね。そういう危険性を減らすために、評価機構では患者さんの診療録はID番号で並べて管理することが大原則になっています。
それから情報伝達エラー。これはコンピュータを使えばいいということではなくて、どうしたら情報伝達エラーをなくせるか、その仕組みを求めています。ドクターが書いた指示書をナースが転記していないかどうか、転記をすればその度に誤る率が増えますからね。そういうことが行われていないかどうか、誰が指示を確認するか、確認をしたらナースがそこに指示受けということをきちんとサインしているかどうか、実施者の名前がそこにはいっているかどうか、というようなことです。

それから重複投薬とか重複検査をしないということ。コンピュータは導入されていなくとも、1患者1冊のカルテとして、処方は全科共通のところに貼るとか、検査のオーダーを出したら結果も含めて全部共通のところに貼るなどして、情報の共有を図り、絶対に重複して薬は与えないし、重複して不要な検査はしない、そういうことができるシステムになっているかどうかです。全ての項目で、本来の目的を考えて頂きたいと思います。

診療の質の確保に関する評価とは

診療の質の確保を図るには、評価が必要です。すなわち診療のパフォーマンスの評価です。これから病院に求められていくことの一つの重要な柱であろうと私は思っています。評価項目としては、医療の質に関する情報を把握しているかという項目があります。医療の質に関する情報というのは、診療の実績です。治っているかいないなどの最終結果以外にも、例えば褥瘡がどこの病棟でどのくらい起きているか、この場合、ADLのいい患者さんばかりの病棟で調べて0%だと喜んでも仕方がないので、ちゃんとADL別に、ある程度リスクありの患者さんの褥瘡の発生率を病棟ごとに比較して、うちの病棟はちょっと高いのではないかとか、もっとケアのやり方を工夫しなければいけないのではないかとか、そういうことを日常的に少しずつ良くしようという活動をしているかどうかが評価されます。
その他、症例検討会が行われているか、CPCが行われているかなども評価しています。たとえば、入院時点では死亡するなど予測もしなかった方が死亡されたケースでは、どうしてその方が亡くなったのかということは、病院として徹底的に原因を追究する必要があるだろうと思います。そういう分析が病院としてルーチンワークでやられているかどうか、それはこれから2年先3年先にその病院のクォリティを大きく変えていくだろうと思います。そういう将来的に病院の質がすごく高くなっていくような行動を今組み込んでほしい。そういう項目があります。その他、関連する評価項目はまだまだたくさんありますが、すべて、診療の質の確保という大きな目標達成につながっていくものです。

梅里 良正 氏
日本大学医学部 社会医学講座 医療管理学部門 助教授(医学博士・工学修士)。 1981年、日本大学医学部 医療管理学教室 助手。1989年、日本大学医学部 医療 管理学教室 専任講師。1990年 より、Fellow of the Center for Research in Medical Education and Health Care, Jefferson Medical College, Philadelphia, Pennsylvania, U.S.A. 1992年 より現職。1995年から(財)日本医療機能評価機構 客員研究主幹。
2000年より熊本大学非常勤講師。2004年より京都大学非常勤講師。
【所属学会・役職、委員会等】
日本病院管理学会(評議員)、日本医療情報学会(評議員)、
日本診療録管理学会(評議員)、日本公衆衛生学会(評議員)、
日本医学教育学会
日本病院会統計情報委員会委員等
【主な研究領域】
・医療の質と効率の改善
・病院機能評価
・診療情報管理、等
インタービューTOPへ
ページの先頭へ戻る