今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第29回 2005/09

脳卒中の後遺障害を予防する超急性期リハビリテーション

日本人の病死の原因のトップスリーは、がん、心臓病、脳卒中で、この順番で死亡率が高い。しかし、この中で寝たきりになる確率はというと、脳卒中がトップにきます。寝たきりや重度の介護が必要となる生活は、本人もさることながら家族の精神的肉体的負担が非常に大きく、まさに国民的な課題といえるでしょう。今回は脳卒中による寝たきりや重度の介護状態を防止するために、超急性期リハビリテーションの必要性を訴える福田道隆さんにおうかがいしました。

財団法人 黎明郷(弘前脳卒中センター
黎明郷リハビリテーション病院
介護老人保健施設 つがる)理事長
福田 道隆 氏

財団法人 黎明郷

寝たきりになる原因のトップは脳卒中

今、介護保険でいろいろな病後のリハビリや生活を支えるということが行なわれ、それに伴い脳卒中の問題が大きくクローズアップされています。それはどうしてかというと、寝たきりになる人は脳卒中が原因であることが非常に多いからなのです。実際、死亡率の順序で言いますと、がん、心臓病、脳卒中の順なのですが、寝たきりになる原因の一番は脳卒中ということになります。

すなわち、死なないで長く障害を持ったまま寝たきりになってしまう。ですから、脳卒中の治療をきちんとして、少しでも後遺症が残らないような治療をすれば寝たきりになる人が少なくなるということで、今、非常に大きく取り上げられるようになったわけです。
脳卒中は大きく分ければ3つあります。血管が破れて出血する「脳出血」、血管が詰まってそこから先に栄養がいかなくなるため脳の組織が壊れる「脳梗塞」、血管にこぶができて破裂し脳全体に出血する「くも膜下出血」、の3つです。日本では昔は脳出血の割合が一番多かったのですが、食生活が欧米化したことから、脳出血は非常に少なくなり、替わって脳梗塞になる人が多くなってきています。

超急性期治療はなぜ必要か

超急性期治療というのは脳卒中における極めて早期の治療のことを指します。先ほど言いましたように、脳卒中には3種類ありますが、最近の日本では高齢者で血管が詰まるという人が脳卒中全体の50~60%を占めています。
では、脳梗塞はどういうものかと言いますと、血管が詰まってその先に血液がいかなくなって脳の組織が壊れるわけですが、詰まった箇所と、その周りにある程度の血液の流れが保たれていますが脳機能が停止している箇所があります。この箇所をペナンブラと言いますが、もし血液の流れがうまくいかないとペナンブラの機能回復がどんどん悪くなり、発症から3~4時間以後は機能回復できない箇所がどんどん大きくなってしまいます。ペナンブラの回復をできるだけ早くして機能低下をなるべく抑える、詰まったところだけで抑えられれば病気の影響は最小限ですみます。発症から3~4時間以内に治療できれば、非常に良い成績が残せるのです。

「超」という言葉は、例えば脳卒中になってから次の日に調子が悪いから病院に行くというのではなく、ちょっと言葉が変だ、頭が痛いな、手がしびれてきた、足がもつれたなど、そういうことがあったら、すぐ病院に行って診察してもらい、必要な時はCTとかMRIなどの写真を撮ってみるということです。そうすれば治療が必要かどうかの判断ができるわけです。早く病院に行って検査をしてもらえば、病状も軽くてすむことになるのです。

脳卒中治療における問題点

現在の脳卒中治療の問題点の一つは、患者さん自身が、ちょっと口がまわらない、手がしびれた、足がちょっとと言いつつも、もうちょっと様子を見ようとか明日まで待とうとかいうことで、患者さん自身が積極的に治療をしないということです。まあ、私たちも、少しぐらい熱があってもそのうち下がるだろうなどと考えますから、無理もないことなのですが。

しかし、さっきも言いましたが、しびれとか頭が痛い、口がちょっと重い、足がもつれそうになるなどということがあれば、脳卒中の前兆と考えて間違いはありません。高血圧や糖尿病の人でそういう症状が起きたらなおさら発症率は高いですから、まず患者さん自身が早く気付いて、気付いてというよりも、そういう症状があったらすぐ病院で受診して精査するということが大切です。
二つ目は、一般の開業医の先生方が、すぐCTをとるとかMRIをとるというレベルにはまだないということ。したがって、そういう先生方がこれは脳卒中ではないかという疑いの目を持つということが大切です。そして、ちょっとでもそういうことが疑われたら、すぐ専門の病院に送って精査してもらうことが大事です。
三番目はやはり、脳卒中の専門病院があまりないということと、それに従事する医師の数がまだ非常に少ないということ。脳卒中の治療にあたっては、循環器系の内科の先生、神経内科の先生、脳外科の先生、放射線の先生など多くの医師によるチーム医療になります。またリハビリテーションということになりますと、さらにリハビリテーション科医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、リハビリテーションに従事するスタッフも数多く必要になります。そういうマンパワーの問題も非常に大きな問題ですね。

脳卒中患者のリハビリテーションの実際

現在、脳卒中のリハビリテーションというのは大きく分ければ3つ、細かく分ければ4つに分かれています。一つは急性期リハビリテーション。それから亜急性期に対応する回復期リハビリテーション、慢性期に対応する維持期リハビリテーションと、終末期リハビリテーションということになります。
診療報酬上からは急性期リハビリテーションは一般病棟で行われ、発症から90日以内まで継続されます。その後が回復期リハビリテーションで、入院期間は最長6ヵ月間、維持期というのはその後と考えられています。 
しかし、これはあくまで診療報酬上の区分であって、実際にリハビリテーションを行なっている立場から言いますと、一般に急性期は約2週間、その後3ヵ月から4ヵ月くらいが亜急性期の回復期、その後が慢性期と考えています。

急性期はどうしても活動が制限されます。立ったらすぐにめまいがするとか、心電図に異常がある場合もありますしね。ですから、急性期のリハビリテーションは、摂食・嚥下の訓練や、起き上がったときにめまいがしないようにするなどの訓練になります。ベッドで寝ている期間が、2、3日から3週間くらい必要な場合もありますので、その間はある程度限定されたリハビリテーションということになります。

これに対して回復期には、立ったり座ったり、トイレに行ったり、服を着たり、食事をしたり、口のまわりの訓練、飲み込みの訓練などいろいろ積極的な訓練が入ってきます。ですから、回復期リハビリテーションはマンパワーがすごく必要になってきます。

超急性期からリハビリテーションを始めるために

私ども黎明郷リハビリテーションセンター病院の例を見ますと、ここに入ってこられる方の約40%は弘前から来られる患者さんでした。そしてその方々が回復期リハビリテーション病棟に紹介されるのは、だいたい発症から40日後です。ところが40日間も救命治療だけで、十分なリハビリテーションせずに、点滴などのようなことしかしていないと、もうあちこちの関節が硬くなってしまって動かなくなります。
まずそれをなくさないことには、ということで、実は今年の7月に弘前に脳卒中センターを開院しました。超急性期の治療をして症状を軽くし、急性期の治療を2週間くらいで終えて回復期リハビリテーション病棟に移行できれば、かなりの患者さんの症状を軽くできると思ったからです。

脳卒中専門の病院は最近、各県に1つくらいは出来ていますが、まだまだ本当に少ないですね。そして、一般の病院ではリハビリテーションスタッフがいないために、なかなか脳卒中の急性期リハビリテーションを行なってくれる病院がありません。大きな病院でも、そういうスタッフが2人とか3人というレベルですから、そういう治療が必要だとわかっていてもなかなか出来ないというのが現状だろうと思います。脳卒中による寝たきりの患者さんを出さないために、超急性期からのリハビリテーションが行なえる環境を早く整えることが必要です。

必要な地域連携と、保健医療福祉の統合

脳卒中治療の今後のあり方を考える時に、一つは一貫して治療が行なえる施設をたくさん作る施設完結型と、一定の機能を持ついろいろな施設が連携して地域全体で治療を完結する地域完結型があると思います。私は密接な地域連携が一番重要なことだと考えています。
地域連携をいかにスムーズに動かしていって、例え病気になってもすぐ治療して、濃厚なリハビリテーションを受け、タイムリーな情報提供を受けて地域に帰って在宅に入る。また、その手前には予防ということを考えていく。脳卒中の原因として、高血圧や糖尿病、高脂血症、喫煙などいろいろ挙げられており、そういうことを予防するということも大きな治療の一環として見直されていますからね。このようなトータルな観点に立って、地域全体を眺めながら考えていくことが、今後は重要になってくると思います。

今、地域リハビリテーション協議会というのが、各県に必ず設置されています。そして、その中で最もリハビリテーションが進んでいる施設を地域リハビリテーション支援センターとして指定しています。当院もその指定を受けているのですが、支援センターの役割は、まず県全体の地域リハビリテーションのレベルアップを図るということと、二次医療圏域にある地域リハビリテーション広域支援センターへの指導です。研修会や特殊な技術の提供、難しい患者さんを引き受けるなどの役割も担っています。密接な地域連携の下で患者さんをトータルに診ていくという観点からは、地域リハビリテーション協議会の活用は非常に有効だと考えております。そこでは保健医療福祉が統合された型で進むべきです。

福田 道隆 氏
1935年、青森県八戸市生まれ。'59年、弘前大学医学部卒業後、1964年、弘前大学大学院医学研究科修了。整形外科助手。1965年、整形外科講師。1968年、肢体不自由児施設 はまなす学園園長。1978年、弘前大学脳卒中研究施設リハビリテーション部門教授。2000年、青森県立保健大学理学療法学科教授、黎明郷理事長(兼任)。2005年、黎明郷理事長(専任)

ご専門は整形外科、リハビリテーション医学。
【役職】
弘前大学 名誉教授、
青森県立保健大学 名誉教授、
日本リハビリテーション医学会 名誉会員、
日本リハビリテーション病院施設協会 理事、
青森県成人老人リハ病院施設協議会 会長、
青森県地域リハビリテーション協議会 副会長
【主な著書】
『今日の治療指針』(1992年、医学書院、分担執筆)、『障害について考える』(1994年、全国肢体不自由児・者父母の会連合会)、『脳卒中治療学 田川皓一編』(1996年、西村書店、分担執筆)、『実践リハ処方』(1996年、医歯薬出版、分担執筆)、『脳卒中のリハビリテーション 平井俊作・江藤文夫編』(1997年、分担執筆)、『最新リハビリテーション医学 米本恭三監修』(1999年、医歯薬出版、分担執筆)、『こどものリハビリテーション医学』(1999年、医学書院、分担執筆)、『GMFM監訳』(2000年、医学書院)他多数。
【論文】
脳性麻痺、脳卒中、手の外科などに関する論文多数
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