今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第33回 2006/01

健康維持のためのサプリメントの理解と適切な使用

国民の健康への関心が高まり、サプリメントを摂取する人たちが増えています。しかし、末期がんが消えたという事例集で健康食品を勧めたりするバイブル商法が摘発されたり、スリムな身体を求める女性たちのダイエット食品による死亡事故などが後を絶ちません。そこで今回は、科学的根拠に基づいたサプリメントの研究を行なっている信川益明さんにおうかがいしました。

杏林大学医学部総合医療学教室 助教授
日本健康科学学会 会長
医学博士
信川 益明 氏

杏林大学医学部
日本健康科学学会

国際的視野でのサプリメントの基準作り

私は(財)日本健康・栄養食品協会というところで、厚生労働省の審査員の方々と意見交換を行いながら、特定保健用食品などの論文の審査をしたり、規格基準を作ったり、JHFAマーク表示許可の適否審査している中で、サプリメントというのは非常に大切だと思うようになりました。それで数年前より、サプリメントを私ども日本健康科学学会のテーマの一つとして取り上げ、文部科学省科学研究費補助金(研究成果公開促進費)補助事業の交付を受けて、「サプリメントに関する公開シンポジウム」を毎年開催してきています。

1975年頃のアメリカのサプリメントの状況は、日本の以前の状況と同じでした。つまり、科学的に証明された、ヒト臨床試験を行なったようなサプリメントは出ていなくて、得体の知れないものがずいぶん出回り、それによる健康被害が出ていたのです。それでアメリカ国民の側から、情報の開示をきちっとしてほしい、ヒト臨床試験などをやって、効果とか安全性、有効性をきちっと出してくださいという要望が出てきたわけです。その後アメリカは試行錯誤しながらきちっとした制度を作り上げてきました。

サプリメントに関してはアメリカだけではなく、ヨーロッパやアジアなどさまざまな国が集まったコーデックス委員会というのがありまして、国際的な視野から、科学的根拠をどのように証明したらいいかとか、どういうヒト臨床試験をしたらいいか、製品の表示の仕方はどうかなどを検討しています。表示の仕方で言うと、例えば、「このサプリメントを摂ると血圧が下がります」と表示するのはいけないのです。サプリメントは薬ではないので、日本の場合は薬事法に違反しますし、アメリカでも同じように考えています。表示の適切な方法としては「高血圧の方は塩分の少ない食品を摂ることが好ましい」と表示し、その下に「この製品は塩分の量が少ないです」というような書き方はいいでしょう、というような基準を作っているのです。これは毎年見直しをしています。

健康食品の区分と日本の法的制度

薬事法は医薬品の承認を得たものについては効能効果をうたっていいのですが、健康食品はもちろん医薬品の承認は受けていませんから、効能効果はうたえません。それから誇大な広告をすると、健康増進法に違反します。
ところで、健康を維持するもので食品と医薬品が両極端にあるわけです。食品は食品衛生法で、医薬品は薬事法で規制されています。そして、平成13年に保健機能食品制度ができたことによって、「保健機能食品」というものが食品と医薬品の間にできました。それが「特定保健用食品(通称トクホ)」と、「栄養機能食品」です。それ以外のものを「いわゆる健康食品」と言っているわけです。

医薬品以外で、ヒト臨床試験を行なっているものは特定保健用食品だけです。現在約550品目しかありません。ヒト臨床試験は、実際に人に8週間から12週間くらいの期間、量も通常摂取量の3倍ぐらい摂ってもらって、有効性と安全性の試験をするものです。そしてこの研究結果を記載した論文を専門家がきちんと問題がないか審査後、企業は厚生労働省に申請し承認をとります。したがって、これについては中身の成分が100%わかっていますし、信頼性が高いわけです。

もう一つの栄養機能食品ですが、これは実は、人に必要なビタミンやミネラルについて17種類選び、その1日摂取量の上限と下限の量を決めて、その範囲内の量が入っていれば栄養機能食品と表示できるというものなんです。これは承認の必要がありません。その量が入っていれば表示していいのです。つまり、その食品に含まれているビタミンなりミネラル以外の残り(例えば99%)については、何が入っているか誰もチェックしていません。有効性も安全性もチェックしていませんし、ヒト臨床試験もやっていないのです。
消費者にとってみれば保健機能食品(栄養機能食品)と書いてあって、これは厚生労働省が作っている制度にのっとっているものですから、信頼性が高いように思ってしまいますね。そこで、表示の仕方を変更することが検討されています。

サプリメントの適切な理解を

もっと問題があるのは、それ以外の「いわゆる健康食品」です。何千何万と世界中に出回っています。ただ、その中で信頼性がおけるのは日本ではJFHAマークのついた製品と言えるでしょう。(財)日本健康・栄養食品協会の規格基準検討委員会が、例えばクロレラとか、プロポリス食品といったものの基準を作り、同協会の適否審査委員会がその基準にのっとった製品であるかどうかを審査して、JFHAマーク表示を許可しています。

これは、特定保健用食品のようなヒト臨床試験はやっていませんが、中身は100%チェックします。つまり何が入っているか、大腸菌は入っていないかとか、発がん性物質が入っていないかなどをチェックします。それから日本の原材料なのか外国から輸入している原材料なのか、ちゃんとしたところから輸入しているかどうか、きちっとしたところで製造されたものを購入しているかどうか。表示の仕方が誇大になっていないかもチェックします。そういう規格基準に照らして全部パスしたものについて、JAHAマーク表示が許可されて製品パッケージに印刷されているのです。これが約750品目あります。ですから、これについてはヒト臨床試験はしていないですが、特定保健用食品の次に信頼性が高いと言えます。

それ以外の残りの「いわゆる健康食品」は専門家はもちろん誰もチェックしていないのが実情です。何が入っているかわからないということはちょっと怖いですね。私たちとしては、特定保健用食品やJFHAマーク表示許可製品や食品を増やしていきたいと思っています。

健康維持の基本は食事。足りないものを補う姿勢で

サプリメントとか健康食品、いろいろな言い方をしていますが、私は健康補助食品と言いたいですね。よく誤解されて、例えば某メーカーの固形のものと、某メーカーのマルチビタミンというのを摂る。それで、自分は1日に必要なビタミン全部とカロリーと食物繊維などもばっちり摂るからこれでいいんだと、まるで宇宙食みたいな感じで摂る学生などがいます。宣伝の仕方により確かにそうとれるのかもしれませんが、そうではないのです。人が生活する上で必要な栄養成分は食事で全部摂ってほしい。でも、現代人は忙しかったり生活が不規則だったりと、いろんな事情で不足するものがありますね。ビタミンとかミネラルで不足したものが出る。その時、補うために使うのが健康補助食品なんです。そこを理解してほしいですね。

不足していないものを摂っても、そういうものはほとんど排泄されてしまうわけですし、逆に多く摂ると有害なものもあります。そこを考えていただきたいです。ということはサプリメントを使う前に、自分の今の食生活を見直して、何が足りないのか、食事で補えないものかどうか、補えないと思ったものについてだけサプリメントを使ってみようと考えたほうがいいですね。
サプリメントは医薬品と違い、食品に近いものです。効くか効かないかは摂取してみなくてはわかりません。このことを理解して、1ヵ月から3ヵ月摂取してみて体調が良くなったと感じたら使い続けてみたらいかがですか、という気軽に対応するものです。なぜかというと薬は動物や植物から抽出したものですが、それを飲めば血中に入ってターゲットとなるところだけを狙って効くようにしているものです。食品はそれとは違うのです。

昔は栄養成分はみな食品で摂っていました。ただ現代は食品自体も変わってきていますし、生活の仕方も変わっています。ですから、その足りないものを補う一つの選択肢として健康補助食品としてのサプリメントがあるわけです。どれがどう効くかは試してみるしかないと思います。その方が摂取して身体の中でどう作用しているかはわからないことがほとんどです。大切なことは摂取した結果として、摂取する前より改善され、効果があると思えたかです。ただ、できればサプリメントは100%中身がわかっているもの、少なくとも有害なものが入っていないものを摂ってほしい。ここがポイントだと思います。

1月28日(土)に当学会主催の「サプリメントに関する公開シンポジウム」が、東京医科大学病院臨床講堂にて行われます。公開シンポジウムですから、「どなたでも」参加してシンポジストの話を聞くことができます。高校生大学生、社会人、現場の看護師の方や保健師の方、社会福祉施設の社会福祉士の方やボランティアの方、薬剤師の方などもぜひ参加してほしいですね。また製品開発を考えている企業の方とか、販売している人なども、サプリメントに関する最新の世界の動き日本の動きを理解して、適切に使用していただきたいです。改善が全く期待できないものだったり、改善が疑わしい製品だったりすると困ります。ダイエット食品で人が亡くなるというような悲しい事態だけは避けたいですね。

信川益明 氏
慶應義塾大学大学院医学研究科予防医学系博士課程修了。医師、医学博士(慶應義塾大学)。杏林大学医学部総合医療学教室助教授、同大学付属病院診療情報管理センター長。日本プライマリ・ケア学会認定医、日本医師会認定産業医。日本健康科学学会会長、日本健康・栄養システム学会理事、日本医療福祉設備協会理事、日本病院管理学会監事、日本プライマリ・ケア学会・日本交通科学協議会・日本診療録管理学会・日本レーザースポーツ医学会評議員、(財)日本健康・栄養食品協会学術専門委員・規格基準検討委員・適否審査委員会委員・論文検討委員。(財)日本医療機能評価機構評価調査者、(社)日本病院会専門課程小委員会委員、健康・栄養食品CRO連絡会信頼性保証部会長。International Journal of Healthcare Technology and Management・Editorial Board Member、日本医療情報学会・日本診療録管理学会編集委員、日本学術振興会科学研究費委員会専門委員、文部科学省科学研究費補助金研究成果公開発表シンポジウム実行委員長等。厚生労働科学研究等の学術研究活動に従事。
【著書】
『新よくわかるサプリメント 医者と患者のための完全マニュアル第4版(監修著)』(株式会社三宝社)、『食品機能素材Ⅲ(共著)』(株式会社シーエムシー)、『医療科学第2版(編著)』(株式会社医学書院)、『医療原論(共著)』(株式会社弘文社)、『プライマリ・ケア医の一日(共著)』(エルゼビア・ジャパン株式会社)、『医学略語辞典第4版(共著)』(中央法規出版株式会社)、『医療安全用語辞典(共著)』(エルゼビア・ジャパン株式会社)、『医療情報 医療情報システム編(共著)』(株式会社篠原出版新社)、『ごみの百科事典(主査著)』(丸善株式会社)、『医療・病院管理用語辞典(改訂版)(共著)』(エルゼビア・ジャパン株式会社)、他。
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