今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第142回 2015/02

介護予防や見守りなどにも期待。高齢者ボランティアが広げる地域の和(前編)

多くの地方自治体で介護支援ボランティア制度が取り入れるなど、介護予防の効果も期待されている高齢者のボランティア活動。高齢者がより生き生きとやりがいをもって活躍するためには、地域でどのような支援が必要となるのでしょうか。横浜市の地域ケアプラザで地域福祉のコーディネートを担当している金子 裕利 氏にお話をうかがいました。

社会福祉法人 横浜博萌会 汲沢地域ケアプラザ
地域活動・交流事業 コーディネーター
金子 裕利 氏

汲沢地域ケアプラザ

地域と協力してつくる、介護ボランティアのしくみ

汲沢地域ケアプラザは、市民の誰もが住み慣れた町で安心して暮らせるよう、横浜市の委託を受けて福祉・保健サービスなどの事業を担う施設です。
地域交流活動のコーディネーターである私の役割は、地域のみなさんとケアプラザをつなぐこと。その方法のひとつが地域におけるボランティア活動の調整です。

当施設で受け入れているボランティアは、大きく分けてふたつ。ひとつは、施設内のデイサービスや老人ホームなどで介護保険サービスの利用者のお手伝いをする、施設ボランティア。利用者の話し相手や散歩の付き添い、行事の手伝い、レクリエーションの指導など、さまざまな活動で活躍いただいています。これは横浜市の介護支援ボランティア制度、「よこはまシニアボランティアポイント」と一部関わってくるものです。もうひとつは町内会など地域住民自身が運営するボランティアグループの支援です。自主的につくられたスポーツや趣味のサークルと同じような位置付けとして、ボランティアの集いがあります。

このような支援事業は横浜市内にある132館すべてのケアプラザで行われており、施設のボランティアと地域のボランティアの担い手をそれぞれどう増やすか、育てていくかが横浜市の福祉の当面の課題のひとつとなっています。

福祉事業におけるコーディネーターの役割

汲沢ケアプラザでは、横浜市戸塚区の人口約27万5,700人のうち、3地区(25自治会・町内会)の24,422人(2014年現在)を担当しています。
例えば、地域ボランティアへの支援を挙げますと、高齢者の日常を支援するボランティアグループの立ち上げに携わりました。元々、コーディネーターである私は地域のあらゆる活動に携わり、今回のような地域活動の相談を受けることが多々あります。ケアプラザは地域包括支援センター機能が備わっているため、包括支援センターと連携することでさまざまな相談ケースを受け、この地域にお住まいの高齢者にはどのような課題があるのか、介護保険の範囲でまかないきれない箇所はどこなのかなど、多くの地域情報を把握することができます。

私は担当している各地域活動の組織やグループの会議にも参加させていただいていますので、そこで得た「生きた地域の情報」と「ケアプラザで把握している情報」を組み合わせながら、活動や運営方法についてアドバイスをしたりします。今回でいえば、例えば先駆的な活動に取り組まれている地域への見学会をはじめ、活動の中で対応が難しいケースなどがあった場合にはボランティア研修会等の提案もしていくことで、継続した活動になっていけるように支援しています。

私たちコーディネーターはどのような事業を進めればよいのかを指導するのではなく、住民の皆さんが自ら問題を感じた時に、常に傍にいる存在であるからこそ、ともに考えていけるのだと思います。
それは、このボランティアグループにおいても同じで、あくまでもそばで見守る存在であり、住民の皆さんが活動自体も、活動を検討する会議も含めて主となり進めていけるように心がけています。その活動が私の「ボランティア育成」の事業でもありますし、ここが他の地域ケアプラザと異なる部分です。

住民自ら問題を提起し、解決していけるよう支援する

ケアプラザや行政が主となり事業を進める際には、例えば地域に向けて「認知症の患者を家族にもつ方の交流を目的に認知症カフェを立ち上げましょう」と提案します。そしてケアプラザや行政が運営の骨子をつくり、あとの運営は住民にまかせるというのが一般の流れです。しかし、その事業はほとんどが単発のもので、立ち上げたカフェが本当に地域で役立っているのか、という設置後の状況まではあまり考えられていません。このやり方にはコーディネーターとして疑問が残ります。例えばサロンや拠点を地域の中で設けるにあたり、地域アセスメントをどこまで実施したか、また地域を構成する住民団体等とともに考え設置しているか。そして、地域に委託した事業は、ランニングコストや活動を行うボランティアさんご本人への負担など、問題に発展していくことも少なくありません。

単にケアプラザ側が活動を推し進めていくだけでは、ボランティア活動は地域に根付かないと思います。住民の皆さんが主体となり、事業を進めて初めて、ボランティアの皆さんの「やりがい」のある活動になるのではないでしょうか。

今、ある地区では認知症を地域全体で考えていく機会(自主事業等)をケアプラザと町内会組織とでともにに進めています。結果的に、サロンなどが地域で作られるか、勉強会のような活動が立ち上がるのか、それは今後、住民の皆さんとともに考えていければと考えています。まず地域で生活されている皆さんに知っていただくことと気付いていただくこと。それが日頃の見守りや誰もが住みやすい地域づくりにつながると考えています。

ケアプラザや行政が中心となり、ボランティアを募集したり、育成したりすることは全国どこの施設や自治体でも行っています。しかし、汲沢地域ケアプラザはそれだけではなく、地域ケアプラザから問題を提示するのではなく、地域の中から問題提起し解決していくようなサイクルを作り上げていきたいと考えています。

「介護支援ボランティア制度」とは?

2007年5月に東京都稲城市から始まった、高齢者を対象とする有償ボランティア制度。厚生労働省の認可を受けたこの制度は、高齢者が地方自治体の主催による介護支援に関連するボランティアを行うことで一定のポイントがたまり、そのポイントは今後の介護保険料の軽減に使うことができます。地域ケアプラザのほか、特別養護老人ホームやデイサービスなど、受け入れ拠点として認定された施設でのみポイントを貯めることが可能です。

横浜市では、「よこはまシニアボランティアポイント」の名称で2009年10月より導入を開始。高齢者への介護予防の意識付けや見守り、介護保険料の軽減、生きがいづくりなどに役立つと期待されています。同制度は、2015年2月現在、介護保険外のサービスも対象としており、地域の給配食活動等のボランティアを始めとする地域活動も含まれています。

詳細は、横浜市Webページをご覧ください。
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/kourei/kyoutuu/syoukai/volunteer/


地域の人々の「やりがい」となるよう、地域活動を支援している汲沢地域ケアプラザ。
後編では、ボランティア活動が高齢者に与える影響についてせまります。

※後編の更新は、2/16(月)の予定です。

金子 裕利 氏

【略歴】
2000年 東洋大学経営学部商学科卒業
2003年 日本社会事業学校研究科卒業
2003年 社会福祉法人横浜博萌会入職、汲沢地域ケアプラザ コーディネーター就任

【資格】
社会福祉士
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