今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第51回 2007/07

患者視点の看護必要度の導入で、より客観的な評価が可能に

診療報酬改定の中で注目される看護必要度の概念。患者数と看護者の比率だけで算定されるこれまでの基準看護が見直され、患者に必要な看護ケアの量によって、看護師の配置を決めるようになれば、より合理的な看護師配置を行うことができ、患者さんにとってメリットのある看護師配置が期待されます。今回は看護必要度をいち早く導入し、活用されている福井トシ子さんにお話をうかがいました。

看護師 助産師 保健師
経営情報学修士(MBA) 保健医療学博士(Ph.D) 診療情報管理士
福井 トシ子 氏

杏林大学医学部付属病院

看護師の配置を決める根拠となり得る客観的なツール

私は看護必要度を現場に導入し、それを看護師の配置にどのように活かすことが可能かを思考錯誤しながら、現在データ収集を行っているところです。
これまでは、看護師の配置をするのに、患者さんがどういう状態であれば、何人の看護師が必要かという患者さん側から捉えた、客観的な根拠を得ることができるツールがありませんでした。しかし、重症度・看護必要度という標準化されたツールができたことで、患者さんの状態からみた看護師の配置人数が、おおよそ見当がついて、看護師の配置ができるようになると考えたのです。

それでケアコム さんに相談し、システム化を実現させていただくことができました。そのシステム化ができたことで、すべての部署が重症度・看護必要度を入力することが可能になったのです。
もちろんその入力を実施するためには、看護師に教育を行い、正確に入力するということが前提になります。

当院では重症度・看護必要度が毎日入力されていますので、毎日、どこの病棟で重症度が高いか必要度が高いか、ということが把握できるようになりました。
次の段階は応用ということになるのですが、重症度が高い必要度が高い病棟にはそうでない病棟よりも、看護師の配置を多くしなければならないということになります。実際には、病院全体の中でどうするということについてはまだ課題が残っています。

しかし、重症度・看護必要度を入力して1年になりますので、その傾向を把握することも容易になったことから、病棟単位では、重症度・看護必要度が低くなる曜日には、看護師を少なくして、必要度の高い病棟に看護師をサポートで出そうということが、現実にできるようになってきました。

人員確保のためのデータとしても使える

これまでは看護師の確保をする時に、診療報酬上というか、入院基本料といった、基本的な要件として決められている以外の看護師の人数を確保しようという場合、客観的な根拠がないために、なかなか交渉しにくいということがありました。 
しかし今後は、重症度・看護必要度を重視して入院基本料が決められてくるものと考えられます。 そうなれば、現在行なっている重症度・看護必要度の入力データから、必要な看護師の人数を示していくための、交渉データに使うことができるのではないかと考えています。

患者さんの側から見たケアの必要度という考え方

重症度・看護必要度が導入されたことの意義は、日本全国どこでも同じツールを使って、患者さんから見たケアの必要量を把握することができることで、病院ごとの比較ができるようになったということだと思います。
平成18年4月の診療報酬改定の時に、重症度・看護必要度の評価を行い、これを基に看護師の傾斜配置をしなさいという、告示が出たことがきっかけになっています。

実は、同様の考え方を何年も前から先陣をきって行なっていた病院もあります。ですが、そのツールは開発された病院にとっては大変意義のあるツールで、有効活用されていますが、どこの病院でも同じように使うというには困難が伴いました。
しかし、この重症度・看護必要度というのは患者さんの側から見たケアの必要量なので、どこの病院でも同じ方法で使用することができるのです。これがとても大事だと思います。
つまりそれによって、どこの病院にはどれぐらい重症の患者さんがいるか、ということがよく分かるわけです。ですから、今回、7対1という看護師の配置について、重症度・看護必要度の低い患者さんが多いのに、入院基本料が高いからといって、7対1を取得してしまうといった矛盾も出たわけですが、今後はそういうことも解消されていくのではないでしょうか。

重症度・看護必要度導入にはITの活用が必須

看護必要度を現場に導入していくためには、病院情報システムが欠かせません。重症度・看護必要度の評価項目は28項目あります。これを毎日入力するということになるのですが、当院の場合は1日900人くらい入院患者さんがいらっしゃいます。ですから、28項目を全員分毎日入力して、それを日々、例えば1ヵ月30日分、病棟ごとに、あるいは患者さんごとにどういう傾向があるかということが分からないと意味がないわけです。

それを手作業でやるのは、とうてい無理です。また、どういう患者さんが入院されて、例えば、年齢が何歳であるとかどういう病気であるとか、そういうことも踏まえて考えますので、それらを全て手作業でやっていくということもとうてい不可能です。病院全体の情報システムの中の一つとして導入したということが、非常に重要であると思っています。

患者さんにとって好ましい、看護必要度による人員配置

看護必要度による人員配置は、患者さんにとって非常に良いことです。看護を必要とする患者さんが、手厚い看護が受けられるようになりますからね。ただ、今は7対1という基準しかありませんので、看護必要度がこれぐらい高いから、7対1ではなくて4対1にしたいと思っても、看護師の数が確保できないというのが現状です。

当院では、看護必要度の高い病棟に、他の病棟の看護師からサポートしてもらうことは徐々に始めていますが、もっと固定して人数そのものを増やすということは、まだできていません。今後、この重症度・看護必要度がどこの病院でも活用されるようになると、このような状況が解決できていくのではないかと期待しているところです。

また、重症度・看護必要度の入力をするのには相当の精密度が要求されるのですが、それが記録と関連させてきちんとできているかどうかを厳密に監査していくことも、私どものもう一つの課題となっているところです。

福井 トシ子 氏
【略歴】

2005 年3 月 国際医療福祉大学大学院博士後期課程修了
東京女子医科大学病院 母子総合医療センター、糖尿病センター、杏林大学医学部付属病院総合周産期母子医療センターなどを経て現職
【役職】
公益社団法人日本看護協会 常任理事
【資格】
看護師、助産師、保健師、診療情報管理士、経営情報学修士、保健医療学博士
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