今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第52回 2007/08

認定看護師(CEN)に高まる期待と、今後の課題

最近、スペシャリストナースとかエキスパートナースという言葉を耳にするようになりました。医療の高度化・複雑化に伴う時代のニーズによって誕生した、専門性の高い看護のスペシャリストのことです。その役割や現状、今後の課題などについてうかがいました。

社団法人 日本看護協会
常任理事
廣瀬 千也子 氏

日本看護協会

21世紀の「看護制度のあり方検討会」から生まれた資格認定制度

1987年、厚生省(当時)「看護制度検討会」は19回も開催されたという、内容の濃い検討会で、多くの看護制度に関する論点がまとめられました。
その中の一つが「専門看護婦(士)の育成(当時)」であり、資格認定制度の必要性でした。近年の医療の高度化、専門分化や国民の健康に関する高まりは看護業務にも影響を及ぼし、複雑かつ高度な業務や特殊な技能を要する業務、健康教育等に関する業務が増加してきました。このような変化に対応するためには、卒後教育の一環として各分野での看護業務が円滑に実施できるような専門看護婦(士)を育成する必要性が述べられていました。当時、アメリカの専門看護婦(士)は、従来の看護機能のほかに医師の機能と考えられていた身体評価の技術(フィジカルアセスメント)をもってスクリーニングし、特定の基準内で治療的処置を行っている現状がありました。

21世紀は、ますます専門的な看護業務の必要性は高くなることが予想され、各専門領域での一定の業務経験を有する看護婦(士)に対して、一定の研修課程を履修する等を条件に、認定するシステムを確立することを検討すべきと報告されました。

専門看護師(CNS)、認定看護師(CEN)は日本看護協会が交付する資格

日本看護協会は、専門看護婦(士)いわゆる看護スペシャリストへの道を検討しました。看護界の総意および文部省・厚生省(当時)と協議の結果、各専門領域の看護の質を保証するためには、学会や他団体により、様々な認定者を輩出するのではなく日本看護協会に一本化する制度を検討、1994年に専門看護師(Certified Nurse Specialist, CNS)制度を創設しました。報告書から制度発足までに約7年を要しました。

専門看護師(CNS)は、大学院修士課程を修了しなければなりません。当時は、大学院修士課程を修了して専門看護師(CNS)になる人はまだ少なかったこともあり、翌年、1995年、認定看護師(Certified Expert Nurse 、CEN)制度が発足しました。さらに1998年には、看護管理者などを対象に看護管理の体系的教育を受け資格認定を与えられる、認定看護管理者(Certified Nurse Administrator,CNA)制度が発足しました。

資格認定制度が発足し、10余年が経過しました。2006年現在、専門看護師(CNS)186人、認定看護師(CEN)2474人、認定看護管理者(CNA)307人が医療・保健・福祉分野など病院や地域で活動しています。

非常に厳しい資格要件を満たして生まれる資格認定者

3つの制度における教育システムは多少異なります。専門看護師(CNS)は、看護系大学院修士課程修了が要件です。日本看護協会は日本看護系大学協議会と契約を締結しています。教育課程の認定は、看護系大学協議会が担い、専門看護分野および個人認定は日本看護協会が担います。一方、認定看護師および認定看護管理者の教育は日本看護協会が教育機関および教育課程の認定を実施しています。

専門看護師(CNS)は、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人・家族や集団に対して、水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた者で、6つの役割である実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究の機能を果たします。専門看護師(CNS)は、まず国家免許を持っていること、次に大学院修士課程で日本看護系大学協議会が定める専門看護分野で、一定のカリキュラムを習得します。また、最低5年以上の実務経験が必要です。しかも、例えばがん看護の場合でしたら、看護の実務経験5年以上のうち3年以上ががん看護領域での実務経験が必要、そのうち1年以上は大学院修了後の実務経験です。そして日本看護協会の認定審査を受け合格してはじめて、専門看護師(CNS)としての交付・登録となります。5年ごとの認定更新が必要です。非常に看護の質に厳しい制度となっています。

現在、専門看護師(CNS)は、精神看護、がん看護、地域看護、老人看護、小児看護、母性看護、成人看護、クリティカルケア看護、感染看護の9専門看護分野において186人の専門看護師(CNS)が活動しています。一番多いのが、がん看護領域のCNS 79人です。
次に認定看護師制度についてお話します。認定看護師(CEN)とは、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる者をいいます。臨床現場において実践、指導、相談の3つの役割を果たすことにより、看護ケアの広がりと質の向上を図ることに貢献します。

認定看護師制度は日本の看護教育や臨床の実際を考慮して1995年に発足しましたが、当時は専門看護師(CNS)の不足、また経験豊かな熟練した看護職の存在や学会等で認定看護師を育成する動きがあり、当時の看護界の状況を踏まえて発足しました。認定看護師(CEN)は国家資格を持ち看護の実務経験5年以上のうち3年以上が認定看護分野の実務経験が必要です。そして日本看護協会が認定している教育機関に入学し、600時間以上6ヵ月以上の教育を修了し、そして日本看護協会の認定審査を受け合格してはじめて、認定看護師(CEN)としての交付・登録となります。5年ごとの認定更新が必要です。

認定看護師、CENの役割と特長

認定看護師(CEN)の3つの役割のうち1つは、患者さん、家族、および集団に対して水準の高い看護実践ができることです。患者さんへの直接ケアは重要です。そして看護実践を通して、指導、相談(コンサルテーション)をするのです。現在、この3つの役割が非常に明確だということで、認定看護師(CEN)は臨床現場でのニーズが高いのです。

認定看護師制度は2つの主な特長があります。認定看護分野の認定および教育機関の認定です。
認定看護分野を認定するためには3つの要件が必要とされます。それは①臨床経験だけではなかなか習得することができない知識や技術があること。②他の分野と重なり合ったとしても独自の知識や技術があること。例えばがんは、ホスピスケア、がん化学療法看護、がん性疼痛看護、乳がん看護と4つの認定看護分野がありますが、それぞれ独自の知識・技術の領域があるため認定されました。③法的・経済的な側面に位置づけられ、将来それが期待される(例えば、医療法や診療報酬など)です。

現在、認定看護分野は17分野が認定されています。①救急看護、②WOC看護(創傷ケア・ストーマケア・失禁ケア)、③重症集中ケア、④ホスピスケア、⑤がん性疼痛看護、⑥がん化学療法看護、⑦感染管理、⑧訪問看護、⑨糖尿病看護、⑩不妊看護、⑪新生児集中看護、⑫透析看護、⑬手術看護、⑭乳がん看護、⑮摂食嚥下障害看護、⑯小児救急看護、⑰認知症高齢者看護です。認定看護分野の中で一番多いのはWOC看護(創傷ケア・ストーマケア・失禁ケア)認定看護師(CEN)442人、その次に多いのが感染管理認定看護師(CEN)390人となっています。

教育機関の認定には4つの条件が求められます。①600時間以上6ヵ月以上の教育の運営、②専任教員の資格、配置など、③教育施設および臨地実習の条件など、④入学および修了の要件です。現在、教育機関は全国で18校認可され、45の教育課程(コース)が実施されています。看護系大学のセンターが13校、都道府県看護協会立6校、日本看護協会立2校、その他団体2校です。この教育機関の拡大は、2003年日本看護協会の通常総会において「認定看護師教育の拡大」が承認され、都道府県看護協会を中心に周辺の看護系大学、大学病院等と連携して認定看護師の教育機関を拡大してきた成果です。

資格認定者の最近の傾向と今後の課題

認定看護師教育の需要の高まりの背景には、法的経済的支援として診療報酬改定の一定の評価が影響しています。特に2002年以降の診療報酬では緩和ケアの加算は第三者評価の審査項目に入ったということが非常に大きな流れとなりました。また医療法での位置づけや厚生労働省の「質の高い看護師養成」の予算化等、そして病院機能評価受審における評価項目「専門性の高い看護師の配置」等が追い風になっていることが背景にあります。2006年4月の診療報酬改訂においては、「褥創のハイリスク加算」という1回500点と高い点数加算が設定されました。一定の教育を受けた者に専従配置という要件は、WOC看護(創傷ケア・ストーマケア・失禁ケア)認定看護師が位置づけられ評価されました。関連学会や有識者等が、エビデンスのあるデータを集積し診療報酬上の加算となったのです。看護界にとっては大変な快挙です。現在、認定看護師(CEN)は看護職の魅力的なキャリア選択の1つとなっており、病院管理者、看護部、医師、同僚からもその活動は認知されてきています。

2006年、認定審査合格者は757人で、現在、認定看護師総数は2474人です。今年2007年は、956人が認定審査を受けます。今後、新たに毎年約千人の認定看護師が輩出され、6年後(2012年)には約1万人の見込みとなります。しかしこの数は、日本の看護職のわずか1%にしか過ぎません。

認定看護師制度も含めて、今後の認定資格制度の課題は、主に3つあると考えています。具体的には、1)制度的な課題です。社会認知をより促進させるため国の助成、診療報酬や法整備に位置づけていくことです。看護系学会や医師や薬剤師、患者団体など他組織との連携・協議を促進し看護資格認定制度を理解していただく。そして国民に対して、看護の資格認定制度をもっと知っていただくための普及活動が不可欠と考えています。2)教育です。教育は質の確保と数の確保の両方の教育が重要です。3)組織体制の整備です。認定者が雇用され活動をするためには、施設規模に応じた適切な配置が必要です。同時に認定者は、「患者さんに見える効果、つまり導入成果」を示していくことも不可欠です。認定看護師(CEN)として活動できる配置や権限など雇用に関するしくみを組織化していく必要があると思います。

まとめますと、看護の資格認定制度の理解と普及に努め、認定者の活動を通して、臨床現場への認定者の導入定着がより促進されていくと考えています。裾野が広がれば頂上も高くなり、優れた人材育成が促進されると考えております。看護資格認定制度がさらに発展していくためには、常に制度を見直し時代の変化に対応できる制度に改善していきたいと考えております。

廣瀬 千也子 氏
【略歴】

1966年、慶應義塾大学医学部付属厚生女子学院卒業後、慶応義塾大学病院就職。1985年、同大学病院看護師長。(この間1986年法政大学経済学部に入学、1990年卒業)。1993年、慶應義塾大学病院副看護部長(業務・感染管理)。1996年、同大学病院副看護部長(人事)。2000年、社団法人日本看護協会 看護研修学校専任教員(感染管理学科)。2001年、社団法人日本看護協会 看護研修学校校長。2003年より現職。
【主な研究テーマ・活動内容】
・2002年 厚生科学研分担研究(医療従事者における針刺し/切創の実態と対策の状況に関する調査)
・2003年~2004年 厚生科学研究主任研究(認定看護師による看護ケアの評価に関する研究)
・2004年~2006年 厚生科学研究分担研究(新人看護職員研修の推進に関する研究)
【著書・著作等】
・2003年 平成15年版 看護白書 p125-163日本看護協会出版会
・2003年 平成15年度版 医療白書 p95-105 日本医療企画
・2003年 感染管理ハンドブック改訂版 日本看護協会
・2005年 感染とケア第2版 ケアのこころシリーズ⑨監修インターメデイカ
・2006年 感染管理QUESTION BOX 1~4監修中山書店
・2006年 ICP(感染管理実践者)テキスト監修メデイカ出版
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