今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第144回 2015/04

看護師・介護士にも広がる睡眠障害 不眠改善の鍵は身体リズムの整調(後編)

不眠の時代ともいえる現代。24時間営業の店舗がそこかしこにみられ、真夜中でも消えることのない企業の明かりや、眠らない若者たちも今や珍しくありません。それに比例してか、睡眠に悩みを抱えている人も多くなっているといいます。とくに、不規則な交代勤務に従事する看護師・介護士に増えるリズム障害は、これからの高齢社会を考えると根治したい課題でもあります。不眠治療の第一線で、多くの研究や治療に携わってきた岡島義先生に、睡眠障害とその付き合い方、最前線の治療方法などについてお話をうかがいました。

早稲田大学 人間科学学術院 助教
博士(臨床心理学)
臨床心理士、 専門行動療法士、 産業カウンセラー
岡島 義 氏

早稲田大学 人間科学学術院
睡眠総合ケアクリニック代々木

うつ病と関係が深い不眠症

睡眠問題の研究の歴史はそう古くはありません。これまでは、睡眠の問題に関する研究が単独で行われることが多かったのですが、心の病気や身体の病気の発症や持続と結びつけられることはありませんでした。例えば、うつ病の患者さんは不眠症も患っているケースが多いのですが、うつ病が治れば不眠症もなくなると思われていました。ところが最近では、うつ病が治っても不眠症状が残る人が多いことが確認され、またその不眠がうつ病の再発の一つのきっかけになることもわかってきました。不眠自体を解消しなければ、うつ病など病気の根本的解決にならないと考えられるようにもなり、睡眠の問題を解消する重要性が指摘されるようになってきました。

高い効果を発揮する、不眠症を改善するための認知行動療法

現在、日本での不眠症の治療は薬物療法が主流です。病院では、問診で睡眠状態を確認され、眠れない症状があれば薬が処方されます。薬は医師の指導のもとで服用すれば副作用もあまり起きませんし、即効性があるため、本当につらい症状がある場合は服用をおすすめします。しかし、慢性的に飲み続けると耐性が形成されることがあるため、効果を感じられず服薬量が増えたり、「薬がないと眠れない」とやめられなくなったりするケースもあります。
 
薬物療法以外に認知行動療法という心理・行動的アプローチの治療法もありますが、日本ではあまり知られていません。認知行動療法とは、不眠が続くことでいつの間にか“くせ”になってしまった生活習慣や考え方を明らかにし、それらを改善するためのセルフコントロール力をつけるための心理療法です。睡眠の問題が発生したら、カフェインをとっていなかったかとか、眠くないのにふとんに入っていなかったかなど、過去の自分の行動をふりかえり身体のリズムを調整していくのです。1回50分、合計4~6回のカウンセリングと、毎日つける睡眠ダイアリー(※2)を構成要素とした認知行動療法が用いられることが多いです。私の臨床経験では、認知行動療法でよくなる方が6割以上と高い効果を得ています。カウンセリングを全うされた方が、再び不眠症に悩んで来院されることはほとんどなく、有効的な治療方法の一つです。
 
しかし、認知行動療法などの薬以外の治療法を提供する医療施設は少なく、関東で5件くらい、全国でも数える程度しかありません。そもそも、薬を用いずに不眠症を治せることを知らない人が多いのが現状です。もちろん、症状によっては薬物療法が適切な場合もありますが、認知行動療法という手段もあることも知っていただけるとよいですね。
 
※2睡眠ダイアリーについては、岡島氏最新刊『4週間でぐっすり眠れる本』で詳しく方法を紹介されています。

24時間“昼間”な日本社会を変えたい

おもしろい研究があります。石器時代の生活スタイルに現代の人たちを戻したときに睡眠はどうなるかということを調べたら、寝つく時間は2時間前倒しになり、睡眠時間も長くなるという結果が示されたそうです。私は今後、「24時間営業をなくして、全国21時にはすべて閉店!」、そんな社会を目指したいと考えています。
 
「1日の時間の中で削れるとしたら睡眠」という発想ではなく、睡眠の優先度を高く考えていただきたい。削るとしたら仕事で、睡眠をしっかり確保して日中のパフォーマンスを上げれば、おのずと仕事の作業効率も向上する。そうすれば帰る時間も早くなり、睡眠をしっかりとれる好循環を生み出すことができます。お日様の昇り沈みとともに1日を過ごす社会のほうが、生産力のある暮らしが実現できるはずです。そのような生活サイクルを推奨できるような研究をしていきたいと思っています。睡眠は、生活の基本である衣食住と同じように考えるべきであり、身体のリズムを整えることを大切にしていただければと願っています。

早稲田大学 人間科学学術院 助教
博士(臨床心理学)
臨床心理士、専門行動療法士、産業カウンセラー
岡島 義 氏
【略歴】
1979年 東京生まれ
2003年 日本大学文理学部心理学科卒業
2008年 北海道医療大学大学院心理科学研究科博士課程修了、博士(臨床心理学)取得
公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究員、東京医科大学睡眠学講座客員講師,医療法人社団絹和会睡眠総合ケアクリニック代々木主任心理士を経て、2015年 早稲田大学 人間科学学術院 助教
臨床心理士、専門行動療法士として睡眠障害や気分障害、不安症に苦しむ人々への支援を行いながら、認知行動療法の効果を高めるための研究活動を行っている
 【著書】
『4週間でぐっすり眠れる本』さくら舎
『認知行動療法で改善する不眠症』すばる舎、共著
『不眠の科学』朝倉書店、編共著
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