今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第148回 2015/08

骨折や寝たきりを未然に防ぐために、ロコモ度判定の活用を(後編)

ロコモティブシンドローム(運動器症候群、略称「ロコモ」)とは、骨や関節、軟骨、椎間板、筋肉といった運動器に何らかの障害が起こり、機能が低下した状態です。日本整形外科学会が超高齢社会の到来に向けて2007年から提唱している概念で、学会は「ロコモ チャレンジ!推進協議会」を立ち上げて啓発を進めています。協議会の委員を務める聖隷佐倉市民病院 関節センター センター長 岸田 俊二氏にロコモについて詳しくお話を伺いました。

聖隷佐倉市民病院
関節センター センター長
岸田 俊二 氏

聖隷佐倉市民病院

ロコモと密接に関係する骨粗鬆症。日本人女性に多い「やせ」が問題にも

前編でも述べましたが、骨粗鬆症はロコモの原因となる主な運動器疾患のひとつです。
人間のライフサイクルで骨密度が一番高いのは20~30代です。そこからなだらかに低下していき、50代を過ぎると女性は閉経で女性ホルモンの分泌量が下がるため、骨密度が急激に低下します。骨密度が最も高くなければならない若い時期にダイエットなどでやせすぎていると、それ以降は下がる一方であるため骨粗鬆症のリスクが高まります。
 
私が専門とする股関節の骨折は圧倒的に女性が多く、国内の手術件数は2012年で20件です。2030年には30万件くらいになるのではといわれています。しかし、一般の方の骨粗鬆症の認知度はあまり高くありません。必要な人の10%程度しか治療がなされていないともいわれています。股関節の骨折で入院した場合、創部の反対側の骨折を未然に防ぐために骨粗鬆症の治療もしなければいけません。しかし、こちらも実際に治療されているのは全体の13%程度です。
 
これらは骨粗鬆症に自覚症状がないことが一番の要因です。骨折して初めて自分が骨粗鬆症である知る方も少なくありません。

多職種が連携し改善に貢献。骨粗鬆症リエゾンサービスで服薬遵守率に変化

骨粗鬆症学会は骨粗鬆症リエゾンサービスという取り組みを開始しています。この取り組みの一環として、医師以外の骨粗鬆症の患者さんにかかわる医療従事者、つまり、看護師や理学療法士、薬剤師、栄養士などの職種を対象に、骨粗鬆症マネージャーという資格を設け教育を行っています。
 
なぜ医師以外かといいますと、多職種が連携することで治療継続を推進しようというのがコンセプトにあるためです。背景には、骨粗鬆症の薬は一定期間継続する必要があるにもかかわらず、徹底されていない現状があります。
 
具体的な例としては、骨粗鬆症マネージャーに認定された薬剤師は、服薬が継続されているかを患者さんのご自宅に電話し確認するなどします。骨粗鬆症マネージャーの看護師が、かかりつけ医に直接電話して連携を図る場合もあります。
これらの取り組みによって服薬の継続率が大幅に改善しています。退院1年後の継続率は、病院だけだと37%程度ですが、近隣のかかりつけ医に定期的に処方してもらうようにすると70%近くまでアップしているのです。
 
精密検査など病院でなければできないこともあります。検査値は病院で病診連携手帳に記入し、かかりつけ医や患者さんがいつでも確認できるようにしています。「いつ薬を処方した」「いつ病院を受診した」といった情報も共有して、密な連携を図っています。2014年の第1回の試験では、聖隷佐倉市民病院から11人が認定されました。単一の施設では国内でもトップレベルの認定者数です。


  • 病診連携手帳。受診の際は必ず提示してもらう

  • かかりつけ医が注射記録、病院が検査値記録を記入している

骨粗鬆症も治療できる時代。ロコモ度判定で早目の受診を

これまでは整形外科の医師が整形外科の分野の範囲でロコモ対策に取り組んできましたが、これからは内科や脳外科、脳神経外科、神経内科といった他科との連携も大切になってくると思います。なぜならば、患者さんが初めは整形外科ではなく、他科を受診するケースも多いためです。
 
現在、ロコモ チャレンジ!推進協議会では、日本骨粗鬆症学会や日本リハビリテーション医学会、日本栄養改善学会などと一緒に、ロコモの啓発と予防を行う取り組みを始めています。また、ロコモの啓発を推進する整形外科医を「ロコモアドバイスドクター」として登録し、一般の方にお話しいただく際のスライドを提供する活動も行っているので、整形外科の先生方にはぜひ利用していただきたいです。他科の先生にとって運動器の問題は馴染みが薄いかもしれませんが、ロコモの原因となる骨粗鬆症などは高齢者には多い病気ですので、ロコモに関してぜひもっと知ってほしいと思っています。
 
骨粗鬆症に関して言えば、ホルモン製剤や骨の代謝を変える薬によって治療できる時代になりました。今までは治療できなかったようなケースでも、ロコモ度判定により早目に移動機能の低下に気づいて受診し適切な薬物療法を行えば、骨折や寝たきりになることを予防できます。
外へ出て何かしたいというのは人間の根源的な欲求です。しかし、移動機能が低下すると、外出しづらくなりご近所との付き合いが減るなどして、QOLが低下します。運動や食事で予防できる部分があれば、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

聖隷佐倉市民病院
関節センター センター長
岸田 俊二氏
 
【略歴】
1998年 千葉大学整形外科入局
2006年 千葉大学大学院修了
2008年 千葉大学大学院 整形外科 助教
2015年 聖隷佐倉市民病院入局
 
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会リウマチ認定医
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