今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第150回 2015/10

看護の専門性のさらなる発揮に向け、「特定行為に係る看護師の研修制度」を活用しよう(前編)

2015年10月、「特定行為に係る看護師の研修制度」の施行にともない、指定研修機関では、手順書で特定行為を実施することのできる看護師の育成がはじまりました。研修を修了した看護師は、患者さんに対しどのような関わりができるようになるのでしょうか。日本看護協会の洪 愛子氏に、お話をお伺いしました。

日本看護協会 常任理事
洪 愛子 氏

日本看護協会

特定行為研修制度創設の背景

超高齢社会において高まる医療ニーズに対応するため、国はチーム医療を推進してきました。そのひとつの方策として、「特定行為に係る看護師の研修制度」が創設されました。本制度は、手順書(※1)により特定行為を行う看護師に対し、「特定行為研修」の受講を義務付けた制度です。特定行為研修を修了した看護師は、医師の判断を待たずに、手順書により特定行為(※2/診療の補助行為に含まれる)を実施できるようになることが今回の制度の特徴です。
 
日本看護協会は、本制度を活用することで看護師がさらに専門性を発揮できるよう、患者さんの状態に合わせたタイムリーな対応や「治療」と「生活」の両面から患者さんへアプローチが強化され、質の高い医療を効率的に提供できると考えています。特定行為研修を修了した看護師には、特定行為のみを行うのではなく、看護の関わりの中で特定行為も含めた医療を提供することにより、必要なタイミングで必要なケアを提供することが期待されます。

【特定行為の例(38行為21区分より一部抜粋) 】
■呼吸器(気道確保に係るもの)関連 ・経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整
■ろう孔管理関連 ・胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
・膀胱ろうカテーテルの交換
■創部ドレーン管理関連 ・創部ドレーンの抜去
■血糖コントロールに係る
 薬剤投与関連
・インスリンの投与量の調整

「特定行為に係る看護師の研修制度」の概要は、厚生労働省のウェブページをご覧ください。
リンク先:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html

※1手順書とは……医師又は歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるためにその指示として作成する文書(保健師助産師看護師法第37条の2より)のこと。
※2 特定行為とは……診療の補助であって、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされるものとして厚生労働省令で定めるもの(保健師助産師看護師法第37条の2より)のこと。

特定行為研修を看護の専門性のさらなる発揮に活用してほしい

日本看護協会では、看護の専門性を更に発揮した活動を展開できる制度の活用が重要だと考え、本制度を活用した大学院教育を推進しています。また大学院以外で推進する特定行為研修として、今年度は本会実施の厚生労働省試行事業に参加した認定看護師を対象とし、特定行為研修を実施します。
特定行為研修の参加者としては、看護師として充分な臨床経験があり看護の基盤がしっかりしている方、かつこの研修を受ける動機が明確になっている方、ご自身のスキルを地域の患者さんのために活かしたいと考える方に、ぜひ研修を受けていただきたいです。
 
各医療機関や訪問看護ステーションで働きながら研修を受ける看護師に対し、受講の環境を整えるための支援は必要不可欠です。そのため、本研修では、e-ラーニングも活用できる仕組みとなっています。特に在宅領域における研修中の代替職員の確保等への支援について、厚生労働省へ要望をしています。
 
リンク:厚生労働省『指定研修機関(一覧)』

“患者にとっての最善”を見極める力を養うことが本質

同制度の本質は、特定行為を実施するスキルのみをもった看護師を育成することではありません。看護師は患者さんの状態を診て、「特定行為を実施するかどうか判断し、実施または実施しない」「手順書に記載された患者の状態に当てはまらないため、医師に連絡をする」など、どの行動をとるか判断できることが本質だと私は考えます。ここでのポイントは、「実施しない」という判断もできるということです。患者さんに最善の医療を提供するために、患者さんの状態を的確に把握し、アセスメントを行い自身で「判断する」ことに自らの限界を踏まえ、責任をもたなければならないと思います。
 
試行事業に参加した看護師たちは、タイムリーかつ効果的に患者さんの治療と生活の両面から関わる活動ですでに活躍しています。本会としては、この研修を受講するだけではなく、患者さんにより質の高い医療を提供できるよう、新たな挑戦、スキルアップに臨んでいただきたいと願っています。


後編では、特定行為研修を修了した看護師の可能性についてお話いただくとともに、よくある質問に回答いただきます。

洪 愛子氏
日本看護協会 常任理事
 
【略歴】
2000年 社団法人日本看護協会 入職
2004年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程 修了
2009年 社団法人日本看護協会 常任理事 就任
 
【主な著書】
『ポケット版感染対策チェックテスト100―感染対策キホンのき』(2014年、日本看護協会出版会、共著)
『院内感染予防必携ハンドブック (Primary Nurse Series)』(2013年、中央法規出版)
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