今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第153回 2016/01

全国の病院が参加するデータベース事業「DiNQL」が、看護の未来を変える(後編)

2015年4月に本格運用が始まったDiNQL(ディンクル)。労働と看護の質を向上させるためのデータベース事業で、現在、全国521病院、3,996病棟が参加しています。その概要やメリットについて、日本看護協会理事の川本利恵子さんに伺いました。

公益社団法人日本看護協会 常任理事
川本 利恵子 氏

日本看護協会

データの〝見える化〞がもたらす、大きな変化とは?

前編はこちらからご覧ください

事業の開始から約3年。多くの病院にご参加いただき、データを〝見える化〞することの効果や広がりを実感しています。
 
特に、情報を入力するとすぐにレーダーチャートというわかりやすい形で結果が見られる点が好評で、「現場の看護師にも伝わりやすい」「DiNQLによって、課題に対する意識が共有できるようになった」との声をいただいています。出力したものを、看護師だけでなく、医師や事務職などの多職種間で共有し、チームで分析しているケースも多いようです。また、データを使って業務改善に成功した病院の事例を見聞きして、「自分たちも○○病院を真似て取り組みを始めてみよう!」「データを使って、より有用な新しいグラフを作ってみよう!」と動き出す病院も増えてきました。
 
データの分析結果や新たに作成したグラフなどは、例えば新しい医療機器を導入したいときの説得材料として使われたり、人材を配置・教育する際のエビデンスとして使われることが多いようです。中には、認定看護師がいることで大幅に褥瘡の発生率を減らすことに成功した病院のデータを参考にして、数名の人材を約半年間、認定看護師研修に出し始めたという病院もありました。
 
一つひとつの病院の中だけでなく、病院の垣根を越えた業務改善の輪が広がり始めている。これは、インターネットを使った、全国規模の、リアルタイムデータベースだからこそ生み出せた潮流だと言ってよいでしょう。DiNQLによって、少しずつではありますが、看護の現場が変わりつつあると感じています。

ITやデータは単なるツール。考える人材が、事業成功の鍵を握る


7人1組で行うグループディスカッション
私たちの目的は、決して、ビッグデータを集めることではありません。目指しているのはあくまで「労働と看護の質を向上させること」。そのために重視しているのが、データ分析を行う際の、ものの見方や考え方を身につけてもらうことなのです。
 
事業参加直後の説明会では、できる限り正確にデータを入力していただくため、詳細な操作方法や運用組織のつくり方をつぶさにレクチャーします。その後、ご自身の病院に戻ってデータを入力し、ベンチマークを確認していただいて、実践段階へとシフト。ある程度、データの分析や運用ができるようになってきたら、ワークショップに参加していただくようご案内をしています。
ワークショップは、実際の事例をヒントにしながらデータ活用の方法を考える、アグレッシブな学びの場です。まずはDiNQLを活用して業務改善に成功した病院の事例発表をお聞きいただきます。
 
その後、グループディスカッションがスタート。自分たちの病院のデータも参考にして、どんなところにひっかかったのかや、データをどう活用し、どんなふうに行動するつもりかなどを議論してもらうのです。こうして主体的に議論を深めることで、自ら活用法が見出せるようになっていくんですよね。データの読み取り方や考え方がわかると、どんどん行動が発展し、中には私たちが思いもしなかったような使い方をする病院も。こちらが勉強させていただくことも多く、とても刺激的な場になっています。

国の提言書にも登場するDiNQLの存在感

ITは、単なるツールにしか過ぎません。主役は、あくまでも看護を実践する人。ですから、IT人を活用して看護について考え、試行錯誤する人を増やしていかければならないと考えています。
 
今年の6月、厚生労働省から、20年後を見据えた保健医療システムをつ
くるためのプラン、「保健医療2035提言書」が発表されました。
提言書の中に、「看護の質データベースの構築など、医学系専門分野以外における質向上のための取組も推進すべきである」という一文が盛り込まれていることをご存じでしょうか。明らかにDiNQLを意識した内容で、関係者一同「地道な取り組みを評価していただいた」と、とても喜んでいます。
今後に向けて、システムも増強し、1万病棟分のデータがやってきても問題なく処理できるよう環境を整えました。また、電子カルテやその他医療機器との連携プランも、近々、発表できる見込みでいます。
 
 2016年早々には、2016年度の参加病院を募集し始める予定です。
「いい看護がしたい!」
 ――看護職の誰もが願うその〝思い〞を、DiNQLを活用して、一緒に実現していければ、これほどうれしいことはありません。

公益社団法人日本看護協会 常任理事
川本 利恵子 氏
日本看護協会
 
【略歴】
2007年 山口大学大学院 医学研究科 博士課程
2012年 厚生労働省  緩和ケア推進検討会、日本看護科学学会  評議員・理事
2013年 厚生労働省  厚生科学審議会
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