今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第159回 2016/07

地域の医療事情を変える情報システム 「さどひまわりネット」の挑戦とは(前編)

医師や診療所の不足が深刻であった佐渡島の医療事情を改善するため2013年に運用を開始したネットワークサービスが「さどひまわりネット」です。島内の医療機関や介護施設が連携し、患者さんの情報を共有する革新的なシステムで、練り込まれたコミュニティづくりの仕組みが全国から注目を集めています。計画段階から携わってきた佐渡総合病院病院長の佐藤賢治さんに詳しいお話を伺いました。

新潟県厚生農業協同組合連合会 佐渡総合病院 病院長
特定非営利活動法人 佐渡地域医療連携推進協議会 理事
さどひまわりネット管理委員会 委員長
佐藤 賢治 氏

佐渡総合病院

医療機関、介護施設 佐渡全体で患者さんを支えていく

さどひまわりネットは、島内の医療介護に関する情報をインターネット上で共有することができる、画期的な連携システムです。電子カルテの有無を問わず参加できるところが特長で、病院や診療所だけでなく、歯科、薬局、介護施設といった幅広い組織との連携が行えるところがポイント。これによって、介護施設で医療情報を参照したり、医療機関で介護情報を参照したりすることがフレキシブルにできるようになりました。患者さんの個人情報に配慮したセキュアメールや掲示板といったコミュニケーションツールも充実しており、施設間の円滑なやり取りを促す役割も。現在、島内の約6割の医療介護施設、25%の住民がこのネットワークに参加しています。

立ち上げのきっかけは、佐渡島の限られた医療資源をなんとか活かしたいと考えたこと。佐渡島は人口に対して医師の絶対数が少なく、診療所も多くはありません。こうした状況下で十分なケアを実現するには、さどひまわりネットのような新しいシステムを使って独自のネットワークを構築することが欠かせないと思ったのです。また、東日本大震災によって多くの医療介護情報が消失したことも、ネットワーク化の後押しになりました。もともと医療業界は、ネットワークによる情報管理がとても苦手です。バックアップを含むすべての情報を院内だけで管理し、運用するのが当たり前。以前は、情報を外部に置くことなど考えられませんでした。が、震災が起こり、多くのデータが一瞬で失われたことで、ほかの業界のように「情報を外に置いて守る」ことが重要だという流れになってきたのです。

システムの開発には、行政、医師、歯科医、薬剤師、いろいろな立場の方が関わってくださいました。しかし、それで揉めるようなことはなく、みんながそれぞれの立場で真剣に、大きな課題を解決するにはどうしたらよいかを考えてくださった。そのおかげで、多施設・多職種が関わる大きな仕組みを短期間で構築できたと思っています。

多職種の連携を成功させる鍵は コミュニケーション

さどひまわりネットのようなネットワークシステムを構築する上で、最も大切なのが「継続性」です。いくら機能を充実させても、そこに「継続して使ってくれる多くの人」が集まらなければ意味がありません。そこで重視したのが、コミュニケーション機能です。患者さんや施設の情報が傍受されない仕組みのセキュアなメールや、患者さん単位のスレッドをつくることができる掲示板などの機能を充実させました。こうした機能によって多施設・多職種間の連携が始まり、盛り上がりを見せることで、生きたシステムへと成長していくのです。電子カルテの情報を集めるだけのシステムでは、本来のネットワークとは言えません。あくまで双方向のコミュニケーションが大事なんですよね。

また、共有する情報の項目と深さについて、事前に地域で、十分に協議することも大切です。「あれもこれも」と情報を盛り込みすぎてしまうと、コストばかりが増大し、使いにくいシステムになってしまいます。場合によっては、最低限の情報だけ掲載し、詳細は各施設に問い合わせてもらう、といった割り切りも必要だと思います。

実際に運用してみて意外だったのは、職種によって使われる機能が違うこと。介護職の方はセキュアメールを多用して、ケアプランのやり取りを行っているようです。紙を使う必要がなく、通信費もかからない。また、なかなかつかまらない多忙な医師に何度も電話で問い合わせをするより効率がいいということで、好評を博しているとのことでした。一方、医療職の方は、メールも掲示板もほとんど使わず、電話と紙という従来型のコミュニケーションを続けているそうです。なかなか「今までのやり方」を変えることができないようです。

医療や介護に携わる方々は、一般的なネットワークシステムに触れず仕事をしているケースが多い。メール以上の機能、たとえば掲示板やグループウェアのようなものは使っていただけないのだなあと、少々反省しました。今後はLINEのような機能を追加し、より皆さんにとって馴染みやすい機能を集中的に強化したいと考えています。


後編では、多職種による交流イベント「さどひまわりネットユーザー会」をはじめ、医療を変えていくための取り組みについてお伺いします。
後編は、7/20前後に公開予定です。

新潟県厚生農業協同組合連合会 佐渡総合病院 病院長
特定非営利活動法人 佐渡地域医療連携推進協議会 理事
さどひまわりネット管理委員会 委員長
佐藤 賢治氏

【略歴】
1986年 新潟大学医学部卒業、新潟大学外科教室入局
1995年 佐渡総合病院 勤務
2001年 佐渡総合病院 外科部長
2012年 NPO法人佐渡地域医療連携推進協議会 理事、ネットワークシステム検討委員会委員長
2014年 さどひまわりネット管理委員会 委員長
2015年 佐渡総合病院 副病院長
2016年 佐渡総合病院 病院長
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