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小林光恵さんのこちら、ナース休憩室別館小林光恵(こばやしみつえ)プロフィール

こんにちは、小林光恵です。
皆さんとナース休憩室で
雑談しているときのような気持ちで、
つれづれに書いていきたいと思っています。

第2回 退院した患者さんにハナムケの鼻歌? 2004/7
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 知り合いの若いナースMの職場(内科病棟)が最近少し変化したそうです。ぎすぎすしがちだった雰囲気が、和やかになってきたといいます。

M「小百合さんが新風を吹き込んでくれたんだと思う」
 小百合さんというのは、ご主人の転勤に伴い、前の病院を辞めてこの四月にMのところに入職したナースだそうです。ナースとしてのキャリア10年の彼女は、前の職場でのやり方を強く主張するでもなく、かといって言われるままに業務をこなすといったなげやりな態度でもなく、威張らず、バランス感覚があり、大人の落ち着きを持った人物なのだとか。

M「そんな小百合さんの風を感じた初めての出来事が、ラーメン事件」
 ある日、日勤後の休憩室で小百合さんが、突然テーブルをドン!と叩いて立ち上がり、「やっぱりだめよ、職員食堂にラーメンがないなんてさ」と低くつぶやき、その足で職員食堂や事務部などしかるべき部署に、ラーメン導入を嘆願しに行ったのだそう。
 彼女の熱心さに押し切られる形で、二週間後には職員食堂のメニューにラーメンが加わり、それなりの味ではあるもののメニューの幅が増えたことで職員からはうれしい悲鳴が聞かれたそうです。

M「小百合さんに<ラーメンのこと、すごい行動力でしたね!みんな喜んでいます。ありがとうございました>と言ったら、彼女に<別に、みんなのためにやったわけじゃないですから>ってさらりとかわされて。それがまた痛快な感じで」
 小百合さんが新人ナースのころ、ある患者さんが「あとは祈るのみ」という状態になってしまい、彼女は心中で祈りながら職員食堂のラーメンを食べたら、その患者さんが助かったのだとか。以来彼女は、ここぞという時に願をかける気持ちで職員食堂のラーメンを食べることにしているのだという。「そういうときにラーメンがないと困るからさ」と小百合さんは語ったそうです。

M「それと、ハナムケの鼻歌のことも新風のひとつだと思う。このあいだ、彼女、コンドルが飛んでゆく、を鼻歌で歌ってた」
 小百合さんが、ナースステーションや休憩室で小さく鼻歌を歌っているのに気づいたスタッフが「なにかいいことでもあったんですか?」と訪ねたら「いいことっていうか、かかわっていた患者さんが退院した日には、ハナムケの気持ちでなにか歌を、鼻歌で歌うことにしててね」という答えだったそうなのです。

M「そのハナムケの鼻歌を真似するスタッフが出てきて、私もやるようになって、こないだは、ある患者さんが退院したとき、どういうわけか、叔母がよく歌う『矢切の渡し』って歌が浮かんでそれを鼻歌で歌ってたら、小百合さんに<それって意味深だね、ここから逃げたいの?>なんて突っ込まれちゃって。たしかに、歌詞が♪連れて逃げてよー♪とかだからね、ハハハ」
 私は、Mが久しぶりに笑うのを見てほっとしました。実はM、この春でナースとしてのキャリア4年目を迎えたのですが、半年ほど前から「辞めたい辞めたい」を繰り返すようになり、口にするのは、気の合わないスタッフや職場へのこまかな不満ばかりだったのです。

M「それとね、小百合さんの謎というのがあって、彼女、なぜかときどき男性用の香水をつけてるんです。ラーメンのことみたいにきっと何か理由があるんだろうと思って聞いてみたんだけど、<理由はおしえない。言うと減るから>って言っておしえてくれないんです。なんか、おもしろくて」
 <言うと減るから>って、いいですねえ。小百合さんは、なかなかの人物とお見受けしました。Mはたぶん、当分は辞めたいと言いださないことでしょう。気になりますね、男性用の香水の訳が。判明したらここに追って報告させていただきます。

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