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相手にリクエストを伝えるためのアサーティブトレーニング

自分の意見や感情を自分が考えている通りに伝えるのは難しいと諦めていませんか? 「相手に伝える」練習をすることで、コミュニケーションは変えられます。自分が何に考えているのか、相手に何をしてほしいのか、整理して伝えるトレーニングをしましょう。横浜市立大学医学部看護学科講師の田辺有理子先生に、アサーティブトレーニングの方法を教えてもらいました。

講師プロフィール

横浜市立大学医学部看護学科講師
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会シニアファシリテーター
AHC認定アサーティブトレーナー
田辺有理子氏
 
北里大学大学院看護学研究科修士課程修了。看護師として大学病院勤務を経て,2006年より大学教員として看護教育に携わり,2013年より現職。朝日新聞デジタルの医療・健康・介護のWebサイト アピタル(apital)でコラム「医療・介護のためのアンガーマネジメント」を連載中。

【その他の記事】
「仕事のコミュニケーションを円滑に。アサーティブな私になる」
「今日からはじめる「アンガーマネジメント」イライラを上手に流す術」
「引きずる怒りを断ち切る「アンガーマネジメント」怒りに振り回されないワタシになろう!」

伝わっている? あなたの言葉の意図

看護・介護の場面では、患者さんや利用者さんの安全を守る必要がありますから、同僚や後輩が事故につながりかねない行動をとったとき、注意を行う場面もあります。しかし、伝えたいことのポイントを整理できず、うまく伝えられないことはありませんか? 特に、叱る時やお願いしたい時は、意見が対立したときに、押し通す人もいれば、言えない人もいて、うまく伝えないとその後のお仕事にも響く可能性があります。そんな時にお互いを尊重しながら話せると、お互い気持ち良く仕事ができるのではないでしょうか。アサーティブ(相手を尊重しつつ、自分の意見をきちんと伝える)なコミュニケーションを意識することは非常に重要です。

シーン例
先輩であるAさんは、後輩のBさんに注意を告げています。
 
A「Bさん、あなた、○○さんの入浴介助は2人でやると決まっているのに一人で入ったの? 勝手なことしないでよ」
B「ごめんなさい……」
 
これでは、Aさんの伝えたいことは「Bさんが勝手な判断で介助をして怒っている」ということしかわかりません。「あった出来事」だけを一方的に話してしまい、本当に伝えたいことが伝えられていない状態です。これでは、BさんはAさんが何を自分に指摘したいのか、また自分はどう対処していいのかわかりません。もしくは、勝手に解釈をして、本来言いたかったことと違うように受け取ってしまうかもしれません。もちろん、Bさんの勝手な判断への注意もAさんの伝えたい想いの一つではあるのですが、その裏にある「一人での介助は危ないから、私を呼んで介助してほしかった」という想いは、Bさんには伝わらないでしょう。これでは、コミュニケーションは成り立ちません。
 
では、自分の気持ちを上手に伝えるにはどうすればよいのでしょうか。

伝え方の基本 「起きた出来事」と「感情」を分け「DESC」の流れに沿って話してみよう

ヒトの感情は、いくつも複雑に絡み合っているもの。ほぐして整理することで、自分がどうしたいのか、相手にどうしてほしいのか、見えてくるはずです。起きた出来事だけでなく、その出来事に対して自分がどう感じているかを整理してみてください。
さらに、その「感情」を元に、相手に何をしてほしいのかをリクエストします。
 
ここでご紹介したいのがDESC法という手法。①Describe(描写する)→②Express(表現する)Explain(説明する)Empathize(共感する)→③Specify(提案する)→④Choose(選択する)の4ステップの順で進めます。
 
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  • Describe(描写する)
出来事や状況、相手の行動を描写する。
客観的、具体的な特定の事柄、言動であって、相手の動機、意図、態度などを含まない事実を述べます。自分も相手も納得できる事象を示します。
 
Express(表現する)
Explain(説明する)
Empathize(共感する)
自分の気持ちを表現する。
Describeで挙げた事実に対する自分の主観的な気持ちを示す、もしくは相手の気持ちに共感します。自分の気持ちや感情を建設的かつ明確に、感情になりすぎないよう話します。
 
Specify(提案する)
相手に何をしてほしいのかを伝える。
相手に望む行動、妥協案、解決案などを提案します。具体的かつ建設的に、小さな行動の変動について、明確に提案します。
 
Choose(選択する)
選択を促し、折り合いをつけます。
肯定的・否定的結果を考え、それに対してどのような行動をとるか選択肢を示します。その際、挙げる選択肢は具体的で実行可能なもので、相手を脅かすものにならないよう注意します。
 
【出典】平木典子『改訂版 アサーション・トレーニング―さわやかな〈自己表現〉のために』pp.117-118、2009、日本・精神技術研究所を参考にして作成。
 
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この時、特に注意しなければならないのが、前の項でもお伝えしたように①D(事実)と②E(感情)を混ぜないこと。それから、④Cで選択を促し、決定権を相手に与え、意見を押し付けないようにすることです。
 
【DESC法を用いた例】
先ほどの、入浴介助を勝手に一人で行ってしまったBさんに注意をする先輩のAさんが、DESCの流れで伝えるならどのような伝え方になるでしょうか。
 
Describe(描写する)
A「2人でやると決まっている介助を一人でやっていましたね」
Express(表現する)、Explain(説明する)、Empathize(共感する)
「転んだらどうしようかとヒヤヒヤしました(表現)。一人介助は利用者さんが転倒する危険性もありますよ(説明)。もしかしたら、みんなが忙しそうだから気を使ってくれたのかな(共感)」
Specify(提案する)
「次回から一人で介助しないでスタッフを呼んでくださいね」
Choose(選択する)
B「はい、次は誰かを呼んで対処するようにします」(Bさんが自分の今後の行動を選ぶ)
 
一方的に攻められると人は防御姿勢で聞き入れられないこともありますが、このステップを踏んだ言葉ならば、相手も「リクエストを受ける」体制をつくりやすくなります。本当に聞いてほしい内容なら、丁寧に順を追って話すようにしましょう。

■言わなくてもいいことは「言わない」という選択肢もある
アサーティブコミュニケーションでは、単に自分の意見を主張するとか表現するというだけでなく、言わない、あるいは自分が引くという選択を自分で選ぶこともできます。順序立てて自分の中で感情を整理してみると、意外と「言わなくてもいいこと」もあると気付きます。我慢できること、仕方ないと諦められること、または言ったら人間関係にヒビが入りそうなことは、言わない方がいい場合もあります。
そこで、自分の意見を言わないという選択肢が生まれるのですが、ここで大事なのは自分の行動を自分で決めたうえであえて「言わない」ということ。言えなくて心の中でモヤモヤを抱え込むのと、自分自身で「言わない」と決めて言わないのとでは、心の重さが違います。言わないと決めたのなら、その結果を受け入れ、その結果に対して文句を言ったりしないように心をもっていきましょう。

主語を自分にする「Iメッセージ」を上手く使おう

先輩に叱られている時、たとえそれが事実であっても、そのことばがじくじく刺さり、傷ついた経験はありませんか? あなたもそれを後輩にしているかもしれません。
 
そんな時使えるのが、主語を「あなた」から「私」に変える「Iメッセージ」というテクニック。「あなたは〇〇」というのではなく、「私は〇〇だと思う」と言い換えるだけで、批判的な発言が少し和らぎます。
 
例)
Youメッセージ
「なぜあなたは入浴介助を1人でやっちゃったの?」
 
Iメッセージ
「入浴介助に入る前に、(私はあなたと)打ち合わせをしたい」
 
主語を「あなた」にすると、「あなたはダメ」と一方的な批難になってしまいがち。一方、主語を「私」にすると、自分の発言を「私」がもつことになり、ワンクッション挟んだ印象になりますよ。

「No」をきちんと伝えよう

人に頼まれごとをされた時、どうしても断らなければならない時もありますよね。人間関係を気にしてどうしても断りきれない……と思わなくてもよいのです。
よいコミュニケーションとは、承諾でも拒否でも、お互いが納得し合える状況へともっていくこと。かならずしも「Yes」を答えなくても良いのです。
「伝える」時と同じく、丁寧に自分の気持ちを伝えれば、きっと納得してもらえるでしょう。

これらの意見を伝えるトレーニングを、怒っている時以外の会話にも活かせるでしょう。コミュニケーションは、これまでの自分の経験のなかで身につけてきたものなので、すぐに変えようとしても難しいものだと思います。しかし、自分の気持ちに目を向けることや、少しずつ想いを表現するようにと意識することで、少しずつ変えられるものですから、練習していくことが大事です。
 
また、相手の話をよく聞こうとすることも、コミュニケーションにはとても大切なことです。
自分の言いたいことばかりを伝えたい!と考えていると、相手の話を聞く姿勢ができず、うわの空になってしまいがち。アサーティブコミュニケーションは、自分が率直に主張するだけでなく、相手を理解しようとする姿勢や相互に歩み寄るプロセスが大切です。
お互いが気持ち良く話せる環境をつくれるよう、意識しましょう。

コミュニケーションをもっと知りたい人へ

『おはよう21  2017年4月号増刊号』
 出版:中央法規出版
 価格:1,285円
 
『イライラとうまく付き合う介護職になる! アンガーマネジメントのすすめ』
 著者:田辺有理子
 出版:中央法規出版
 価格:2,160円

記事トップ画像提供:ペイレスイメージ

UP DATE 2017/04/25

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