今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第184回 2018/08

日本に類を見ないまったく新しい発想の病院に患者中心の医療を具現化する方法を探る(前編)

がん・心臓病・脳卒中に特化した医療の提供を目的に、平成19年に設立された埼玉医科大学国際医療センター。“患者中心主義”を徹底的に貫いた病院づくりと枠組みづくりが評価され、平成27年には大学病院で日本初のJCI(国際病院評価機構)認定も取得しました。日本の病院のステレオタイプとは異なり、革新的な病院経営のあり方について、病院長の小山勇氏にお話しをお聞きしました。

埼玉医科大学国際医療センター 病院長
小山 勇 氏

埼玉医科大学国際医療センター

がん・心臓病・脳卒中を専門とする病院建設は
日本の体制に対するチャレンジだった

平成19年4月に設立された埼玉医科大学国際医療センターは、埼玉県全域を範囲に、がん・心臓病に対する高度専門特殊医療に特化し、かつ高度の救命救急医療を提供することを使命としています。母体は、当院から3㎞ほど離れた場所に位置する埼玉医科大学で、そこには特定機能病院の埼玉医科大学病院があります。当院の開設計画がスタートした当時、大学病院の許可病床は1,185床で、常時1,100人程度の入院、2,000人を超える外来患者が来院していました。地域には中・大規模な病院はほとんどなく、極端な話、風邪をこじらせた患者さんも大学病院に来ているような状況。いわゆる〝最後の砦〞として、地域の中核病院の機能も果たしていました。ですから、私たちはその当時から、地域医療を非常に重要視して取り組んでいました。その一方で、もちろん大学病院として高度先進医療の機能も発揮していかなければなりません。しかし、当時の大学病院でさらに機能を高め、特に急性期の高度先進医療を伸ばしていくには、マンパワーや組織の問題、そして敷地の広さの問題などが立ちはだかり、このままでは限界があるのではないかと考えられていました。

ちょうどその頃、第4次埼玉県地域保健医療計画において、がん・心臓病・脳卒中を含む救命救急を条件とする医療整備計画があり、400床の増床を認める公募があったため応募。採用が決定し、当院は大学病院の200床を移転させた計600床を有する病院としてスタートしました。
 
私たちの大きな目的は、がん・心臓病・脳卒中に特化した医療の提供です。これはもともと、埼玉医科大学名誉理事長であった故・丸木清浩先生のかねてからの夢でした。中には、「すぐに潰れてしまうのではないか」「こんな田舎で需要はないだろう」との不安の声も。しかし、今の日本には当院のような形で特化した専門病院がありません。大学病院の一つの使命として、また来る日本の将来に向けて、時代を先読みした取り組みが必要だと考えたのです。
 
ところが、当院は専門病院として認めてはもらえませんでした。日本の病院は、特定機能病院と専門病院、一般病院の3つに分かれますが、専門病院というのは一つの専門をもつ病院のことを指し、がん・心臓病・脳卒中と3つの専門分野があるのは専門病院とは認められないというのです。こうした面では、計画当初から日本の組織や専門治療の体制に対するチャレンジだったといえます。3つの専門分野をいかに統合して、埼玉医科大学国際医療センターとして総合的に運営していくかということが当院の大きな課題でもありました。

あるはずのものが〝ないないづくし〞の病院は
欧米の医療施設を参考につくられた

開院の準備は、平成16年8月から始まりました。実施計画の段階で病院建設の参考にしようと、ドイツ、イギリス、アメリカなど欧米の先進的な医療施設を視察することになり、大学や病院幹部などで編成された視察団で、日間にわたって8施設を訪問しました。「日本の病院は参考にするな」というのが、丸木清浩先生の教えでした。日本の病院を見ていると、つくりや組織がほとんど同じ。画一的な発想しかできなくなるから、というのが理由です。つまり、当院はすべて海外の病院を参考にしてつくられています。
 
例えば、象徴的なのが病院の入口です。特に病院の場合、入口というのは非常に重要で、患者さんが初めて足を踏み入れたときに思うことは、この病院に対する〝期待〞です。入った瞬間に希望を感じ取ってほしいと願い、当院の入口は一風変わった雰囲気になっています。すぐに目に飛び込んでくるのは、2枚の大きな絵と白いグランドピアノでしょう。海外には、4〜5mの高さの両手を広げたキリスト像が正面玄関に立っていたり、入口に母子像が設置された病院もあります。海外の実例があったからこそ、当院でも実現できました。
 
それから、通常は入口ロビーにある窓口や会計、診療科ごとの外来受付がないのも、珍しい構造だと思います。あるのは、包括的がんセンター、心臓病センター、脳卒中センター、救命救急センターと、大きく分けられた診療部門の外来です。受診受付は、各センターに設けられたコンシェルジュにて行っています。そして、ほかにも当院は〝ないないづくし〞。外来患者を番号で呼出すための電光掲示板もなければ、サイレントホスピタルを目指しているので院内放送もありません。待合スペースに設置している椅子も、今後は少なくしていく予定です。患者さんには呼出器を携帯していただいているので、「もうすぐ順番です」「診察室に入ってください」といったメッセージは、その機器を使って呼出します。また、椅子を少なくするのは、患者さんは呼ばれるまで診察室の前でじっと待ってしまうから。本来はどこにいてもよく、自由に過ごしていただきたいと思うのです。
 
従来の慣れ親しんだ病院のスタイルとは異なる点が多いため、「コンシェルジュって何?」「何科に行ったらいいの?」と、当初は患者さんにも戸惑いがあったようです。丁寧に説明をしていく必要がありましたから、最初は大変でしたね。しかし、慣れるものです。今は、コンシェルジュにいろいろと相談いただけるようになりました。

小山 勇氏

昭和52年東京医科歯科大学を卒業後、三井記念病院のレジデントや米国留学を経て、昭和60年埼玉医科大学第一外科に入局。埼玉医科大学国際医療センターの設立に携わり、現在は病院長として、研修時代に実体験し強く共感した「患者中心主義」を病院の理念に掲げ、既存の大学病院の概念を覆す体制を構築すべく尽力している。
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