今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第190回 2019/02

創立150周年を控える国立大学病院の病院長が果たすべき使命とは(前編)

神戸大学医学部附属病院は、平成31年に創立150周年を迎えます。同院は、国立大学病院として日本の医療の発展を支えていくため、平成28年に文部科学省によって新設された国立大学改革の「3つの枠組み」に参画。「世界最高水準の大学病院」を目指して、医学教育の質の向上にも取り組まれています。世界に目を向ける大学病院病院長が果たすべき使命とは。神戸大学医学附属病院病院長平田健一氏にお話しをおうかがいしました。

国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 病院長
平田 健一 氏

神戸大学医学部附属病院

最善の道を選択しながら社会の期待に応え日本の医療に貢献することが使命

神戸大学医学部附属病院の歴史は、明治2年に開院した神戸病院に始まります。その後、県立神戸病院、県立神戸医科大学附属病院などを経て、平成16年からは国立大学法人の病院として運営されています。そして、平成31年には創立150周年となり、昨年病院長に就任した私は、その大きな節目を病院長として迎えられることを大変喜ばしく思っております。

今回の記事のテーマは「病院長の使命」ということですが、大学病院の病院長の使命とは、すなわち「病院の使命」ということになると思います。
大学病院は民間病院などとは大きく異なり、ある意味特別な環境下で運営が行われています。そのため、一人の病院長が交代したからといって、経営や方針がガラリと変わることは多くないと思いますし、病院だけでなく大学も関わり合いながら運営は進められますから、大学と附属病院が一体となって同じ方向を目指していかなければなりません。たとえ収益が見込まれないようなことであっても、患者さんの〝最後の砦〞として病院を機能させなければなりませんし、不採算部門だからといって切り捨てたり、収益が見込まれるところばかりに人員を配置したりといった経営は、大学病院という立場上、許されません。そうでなければ、日本の医療は守れませんからね。コストや人員などのバランスをうまく取りながら、安定的に病院を運営するというのは非常に難しいことではありますが、社会的に必要なところは、大学病院が責考えて、最善を選んでいくしかないと考えています。そうして、日本の医療の発展に貢献していくことこそ、神戸大学医学部附属病院の使命であり、病院長としての私の使命でもあると思っています。

基本理念に基づきながら世界水準の大学病院を目指す


▲(図1)神戸大学医学部附属病院基本理念
私たちが使命を果たすためには、教育・研究・診療すべてにおいて高いレベルを保ちながら、その発展に取り組み続けることが大切です。そして、それは病院の基本理念に基づいて、常にブレることなく推し進められることが重要です。

当院では、6つの基本理念を掲げており(図1)、一つ目にある「患者中心の医療の実践」は、すべての根底にある理念となります。そして、大学病院としてはやはり、二つ目の「人間性豊かな医療人の育成」に力を入れ、優れた医師や看護師などの医療人を育てていくという大きな役割があります。


▲(図2)国立大学改革を目的に文部科学省によって新設された「3つの枠組み」
皆さんは、平成28年度に国立大学改革に向けて文部科学省によって新設された「3つの枠組み」をご存じでしょうか。これは、「地域・特定分野・世界」に分けられた3つのグループ(図2)の中から、大学が自主的に属するグループを選び、社会ニーズに対して大学の特色や強みを発揮して、機能強化を目指すことを狙いとした取り組みです。神戸大学は世界的に競争できる「世界最高水準の教育研究」を目指していきたいため、「世界トップ大学と伍して卓越した教育研究を推進」を選択しました。このグループは、全国で16の大学が選んでおり、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学といった旧7帝大や研究大学といわれる大規模校が多く選択しています。同じグループ内で競争が生まれることはもちろん、優秀な研究者がどれだけ育ったのか、世界大学ランキングで何位に選ばれたのかなどと、常に世界のトップと競争しなくてはいけません。そのため大学の医学部では、研究に熱心に取り組む人材や、臨床においてもリサーチマインドをもった人材を育て、ノーベル賞を受賞するような研究者を一人でも多く輩出できるよう精力的に取り組んでいます。

また、医学教育の質を国際的な基準から評価する「日本医学教育評価機構(JACME)」による分野別認証評価の認定も目指しています。2010年に、米国医師国家試験受験資格審査NGO団体(ECFMG)が、「2023年以降は、国際基準で認定を受けた医学校の出身者のみ申請資格を認める」と発表しました。神戸大学出身者が、米国などで臨床や研究を行うためには、医学部がJACMEの認定を受ける必要があります。アウトカム基盤型教育やActive Learningを積極的に導入し、医学部のカリキュラムをさらに改善していきたいと考えています。

平田 健一氏
国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 病院長

昭和59年神戸大学医学部卒業後、同大学医学部第一内科入局。
平成4年同大学大学院医学研究科修了。
平成8年から米国Vanderbilt大学、Stanford大学研究員。
神戸大学大学院医学研究科循環器内科学教授、同大学医学部附属病院副病院長を経て、
平成30年2月より同病院長、現在に至る。
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