今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第197回 2019/09

健全経営を担う人材不足という課題に 「ちば医経塾」がもたらすものとは(前編)

高度急性期病院の経営が非常に困難である昨今。健全な病院経営の実現のためには、有効な経営戦略に精通した、優秀な人材が求められます。千葉大学医学部附属病院では、平成30年5月に「ちば医経塾」と称した、病院経営のスペシャリストを育成するプログラムの第1期を開講。全国各地から病院長、医師、看護師、コメディカルなど多種多様な医療人が参加しました。現在、第2期を開講中。「ちば医経塾」の概要や成果、今後の展望について、同病院長の山本氏と「ちば医経塾」立ち上げに携わった亀田氏にお聞きしました。

国立大学法人 千葉大学医学部附属病院
病院長
(左)山本 修一 氏

病院長企画室 総合調整員
社会医学系専門医
(右)亀田 義人 氏

千葉大学医学部附属病院

患者の安心を最優先に考えがんと共に生きる時代を支える病院


外来診療棟
山本修一氏(以下、山本) 現在の千葉県の人口は約600万人です。その大きな数を支える医療機関の中で、千葉県唯一の国立大学病院である私たちは、県民にとって最後の砦であることを非常に強く認識して運営にあたっています。しかしその一方で、最後の砦というのは、患者さんにはとても重苦しい響きのある言葉です。患者さんの不安やストレスを少しでも和らげて、明るく前向きな気持ちで来院していただきたい。そんな思いで造ったのが、平成27年にフルオープンした外来診療棟です。
 外来診療棟の建物は、非常に斬新な造りになっています。ガラスと木材が調和したデザインで、医療の透明性と温かさを表現しました。「ここは大学病院なの?」と、病院を受診するという不安が解消し、緊張が和らいでしまうような病院にしたいと思っていましたから、オープニングセレモニーで森田健作知事より「ここなら病気が治る気がするよね」と言っていただいたときは、まさに狙い通りの印象だと、うれしかったですね。「患者支援センター」のオープン、検査部門の集約、授乳室の整備など、より一層安心して、スムーズに診療を受けていただけるようさまざまな工夫を凝らしました。また、見晴らしのよい最上階に設けた「通院治療室」は、ベッドとリクライニングチェアが49床あり、国立大学病院では最大規模となっています。
 そして、令和3年には新中央診療棟もオープン予定です。手術室を現在の17室から20室に増やし、放射線治療の設備も増設します。さらに、従来の外来手術の延長線上ではなく、完全に日帰りに特化した日帰り手術センターの併設や、大規模で高度な救命救急センターの設置も予定しています。
 今後、がん患者はますます増える見通しです。「がんと共に生きる」というのは、これからのキーワードになりつつありますよね。手術は最短の入院期間で終わらせ、抗がん剤治療や放射線治療は通院治療で対応する。それこそお勤め帰りに治療を受けられる、そんな環境をつくっていかなければいけないだろうと考えています。
 私はよく、「世界一の大学病院を目指す」とお話しします。医療・サービスの質を上げるためには、やはり世界一を目指さないといけないと思います。すなわち、私たち自身が常にそうした思いをもちながら、病院環境をよくしていこうと取り組むことが重要だということです。医療の変化や患者ニーズにしっかりとお応えし、私たちの責任をきちんと果たすためにも、充実した施設整備を進めているところです。

健全経営を担う人材不足の解消に「ちば医経塾」という形で立ち向かう

山本 充実した設備環境、良質な医療の提供の実現には、健全な病院経営が欠かせません。これらは常に、病院運営の両輪でなければならないのです。しかし、高度急性期病院の経営は非常に困難な時代ですよね。難易度の高い患者さんに対して多くの医療資源を投入する中、DPC(包括医療費支払い制度)の導入により、経営はギリギリの状態。さらに、教育と研究という国立大学病院が果たすべき使命もあるわけです。医療を取り巻く環境は極めて厳しく、経営上の舵取りが本当に難しいと感じます。
 
亀田義人氏(以下、亀田) 効率的かつ戦略的な病院経営が求められる状況下で、健全経営を目指すためには、病院の中で物事を牽引する人材が必要です。私は、厚生労働省から現場に戻ってきたとき、そうした人材が非常に不足していることを肌で感じました。「これからは、経営マインドやマネジメントスキルをもつ人材の育成が必要だ」と強く思いました。すると、山本病院長もまさに同じことを考えていて。こうした背景から、病院経営のエキスパートである井上貴裕副病院長が中心となって立ち上げたのが「ちば医経塾」でした。

後編では、「ちば医経塾」の具体的な取り組み内容や、「ちば医経塾」によって得られた効果、これからの展望をお聞きしました。

病院長
山本 修一氏

千葉大学医学部卒業後、米国コロンビア大学研究員、東邦大学佐倉病院教授などを経て、平成15年に千葉大学に着任。平成26年より病院長および千葉大学副学長を併任、現在に至る。専門は眼科。

病院長企画室 総合調整員
社会医学系専門医
亀田 義人氏

佐賀大学医学部卒業後、千葉大学循環器内科に入局。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医学)後に、厚生労働省へ出向。雇用均等・児童家庭局母子保健課課長補佐、医薬食品局血液対策課課長補佐を経て、現在に至る。

 
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