デキル人へ一歩前進 お役立ちライブラリ

キレイのひみつ、元気の秘訣、おいしいごはん、リフレッシュ術など、皆さん
がちょっぴり気になるアレコレにお答えします!休憩時間や通勤などのスキマ時間にサクッと読めるお役立ちコラムです。

必要なのは技術ではなく、工夫とアイデア
おいしい介護食づくりをはじめよう!

夫・アキオさんのがん闘病をきっかけに、おいしさと食欲をそそる見た目にこだわった介護食づくりを始めた料理研究家のクリコさん。“ミキサーにかけた流動食”という介護食の固定概念を覆す、さまざまなレシピを考案し、おいしい介護食づくりのノウハウを確立。アキオさんの体力回復はもちろん、念願だった職場復帰も実現させました。
クリコさんのレシピには、食べる側だけでなく、作る側にもうれしい工夫やアイデアがいっぱい。後編では、実際においしい介護食をつくるにあたっての注意点や、おさえておきたいポイントを紹介します。

ほしい情報やサービスに出会えない、 介護食を取り巻く状況とは?

クリコさんがアキオさんの介護を始めたのは、2012年。当時、病院に助言を求めても適切なアドバイスが得られず、参考になるレシピ本は見つけられず、市販の介護食品は流通量が少ないうえ、夫の好みに合わず……。はじめての介護食づくりに役立つ情報やものに、なかなか出会えなかったそうです。7年ほど経った今、介護食をとりまく状況は変化しているのでしょうか。
 
「大型書店を回ったところ、当時よりも介護食のレシピ本の数は増えていました。とはいえ、介護食とひと口に言っても、噛む力と飲み込む力によって食べられるものの形状は変わってくるので、どの本が適切なのか、パッと見ただけではわかりにくいのが現状です。市販の介護食品については、相変わらず近隣のスーパーには取り扱いがなく、手に入りにくい状況は変わっていません」
 
おいしい介護食に対するニーズはあっても、参考になる情報や頼れる商品はいまだ少ない。そんな中でも、かすかな希望を見出せるような出来事があったそうです。
 
「食品メーカーさんが介護食のCMの放映を始めました。これを見たときは、飛び上がるほどうれしかったですね。また出演されているのが、個人的にファンの中村雅俊さんで、なおさらうれしいなと(笑)。すごく若々しい中村雅俊さんが介護食のCMに出ていること自体が、すごく意味のあることだと思うんです。ここから介護食という言葉の認知度が、どんどん上がっていくことを期待しています」

介護食を作り始める前に おさえておきたい注意点

介護食づくりは、調理方法や注意点が普通の家庭料理とは異なります。まずは、作り始める前に知っておくべきことを教えていただきました。
 
絶対に気をつけよう「誤嚥」と「窒息」
「誤嚥対策こそ、介護食が家庭料理と違う最大にして最重要ポイントです。キノコや里芋など表面がツルツルした食材は勢いよく喉の奥に滑り込むため誤嚥しやすく、窒息にもつながます。そのほか、パンやカステラなどのパサパサした食品、薄くスライスしたきゅうり、わかめなどペタペタと喉に張り付くものも要注意。噛みやすく、飲み込みやすいことが介護食づくりの鉄則です」
 
細かく刻んだら、必ず「とろみ」をつける
「噛みやすくするには、『やわらかく加熱調理する』『切る・刻むなど大きさを小さくする』『ピュレやペースト状にすりつぶす』といった方法があります。では、飲み込みやすくするにはどうすればいいのでしょうか。じつはこれが一番わかりにくいんです。その答えは、細かく刻んだ食材が口の中でばらけないようにひとかたまりの状態にすること。つまり、とろみをつけることが重要です。とろみづけは、水溶き片栗粉だけでなく、ホワイトソースやマヨネーズなどの市販の油脂を含んだ食品でも可能。細かく刻んだらとろみをつける。これは必ず覚えておきましょう」
 
噛む力と飲み込む力を把握すること
「介護食づくりを進める中で、最初に知っておくべきだったと痛感したのが、夫の噛む力と飲み込む力がどの程度なのかということ。それを把握していなかったので、夫の咀嚼・嚥下の状態と食べられるものの形状が一致せず、とても困りました。その反省から、夫への聞き取りと観察を重ね、試行錯誤の末にまとめたのが、『噛む・飲み込む力に合わせた、食べやすい食品の形状表』です。介護食づくりを始める前に目を通して、今の状態がどこにあたるのかを確認しておきましょう」


▲噛む、飲み込む力に合わせた食べやすい食品の形状と必要な調理方法と注意点(『噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん 誤嚥を防ぐ!』より抜粋)

噛む、飲み込む力に合わせた食べやすい食品の形状をと必要な調理方法と注意点をより詳しく知りたい! という方はこちらをご確認ください。

味も見た目もレベルアップ! おいしい介護食づくりのポイント

おいしく、食欲をそそる見た目にこだわった介護食づくりを徹底して実践してきたクリコさん。時間をかけずに、味も見た目もレベルアップさせるには具体的にどうすればいいのでしょうか。簡単に取り入れられるアイデアや工夫をお聞きしました。
 
とことん使える「野菜ピュレ」を活用
「茹でた野菜をミキサーやフードプロセッサーにかけてピュレをつくれば、さまざまな料理に活用することができます。栄養が摂れるだけでなく、旬を味わうこともでき、彩り豊かなので食卓も華やかになります。他の食材と組み合わせると、主食からデザートまでいろいろな料理を短時間で作ることができるのも特徴です。そのうえ、野菜ピュレを使った料理は誰が食べてもおいしいので、食の喜びを家族で共有できるんです。介護食だから、おいしくなくて当たり前ではなく、闘病中だからこそ、おいしく食べて体力回復につなげてほしいと思います」
 
野菜ピュレの活用は、これ以外にも大きなメリットがあるそうです。
 
「普通の家庭料理に比べて、手間と時間がかかる介護食づくり。作る側が疲弊してしまわないよう、時短を徹底し、心のゆとりを持つことが何より大切です。時短につながる工夫として、実践してきたのが野菜ピュレの冷凍保存です。これによって大幅に時間が短縮できるようになりました」
 
それだけでなく、アキオさんが大好きなクリームシチュー、ハッシュドビーフといったテッパン料理は完成した状態で必ず一食分冷凍していたそうです。冷凍保存で時短につなげることが、ラクで楽しい介護食づくりのポイントと言えるでしょう。
 
盛り付けのコツはタテに積むこと
「野菜ピュレなどの流動状のものを、平らなお皿に盛るとヨコに流れて広がり、おいしそうに見えません。そこでどうするか。ヨコに流れて広がるものをタテにするのです。透明なガラス食器に色味が異なるピュレを二層、三層と積み上げることで、色のコントラストが美しいひと品に。立体的に演出し、見た目で食欲を喚起することも大切です」

▲かぼちゃやにんじん、ほんれんそうなど色とりどりの野菜ピュレ

自由な発想で作り出せるから、 介護食づくりは楽しい!

病院や介護施設では、介護される側が複数にのぼり、一人ひとりの状態もさまざま。こうした現場で取り入れてほしい介護食づくりの工夫についてもお聞きしました。
 
「病院や施設では、野菜ピュレを活用していただきたいですね。というのも、他の食材と合わせることで主食からデザートまで、アイデア次第で無限大に活用できるので、使い勝手が抜群なんです。また、高齢者=さっぱりしたものが好きというイメージがありますが、ある介護施設で好きなお料理を聞いてみたところ、ランキングには、天ぷらや唐揚げなどが上位に上がっています。なので、病院や介護施設でも揚げ物をどんどん出していただきたいですね。揚げ物がメニューの中に少しあるだけで、すごく満足感が得られるそうです。前編でご紹介した『ふわふわシート肉』をお団子にしてつくる唐揚げもおすすめです」
 
「介護食は新ジャンルの家庭料理なので、自由な発想で作ればいいんですよ」と肩ひじ張らないクリコさん。クリコさんにとって、介護食とはどういうものなのでしょうか。
 
「介護食づくりのコツをつかみ、自由に作れるようになって、介護食って家庭料理なんだ、と気づいた時に、私、台所で生まれて初めて一人でガッツポーズしたんですよ(笑)。それくらいものすごくうれしくって。なので、私にとって介護食とは、家庭料理の延長線上にあるものですね。必要なのは特別な技術ではなく、工夫だったんだなと。噛めないという制限があるからこそ、生まれたアイデアや工夫がたくさんあって、制限があることをプラスに変えていくことが、私の中ですごくおもしろいことに変わっていったんです。『介護食づくりってすごく楽しい』ということを、皆さんに伝えたいですね」

肩の力を抜いて、ラクに楽しく介護食づくりと向き合うことの大切さを教えてくれるクリコさん。アイデア満載のレシピはもちろん、その明るく前向きな姿勢にも、たくさんの元気と勇気をもらえます。冷凍保存を駆使したり、時には市販品を取り入れたりしながら、もっと自由に、おいしい介護食づくりを始めてみませんか?

おすすめ書籍

『噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん 誤嚥を防ぐ!』
著者:クリコ
監修:阿部仁子
出版:講談社

「口腔底がんで噛む力を失くした夫に、
食べる喜びをもう一度味わってもらいたい!」
愛する夫への愛が生んだ介護食レシピがさらにパワーアップ!本書では柔らかさや食べやすさ、作りやすさはもちろん、食欲をそそる見た目を重視したオリジナルレシピを多数掲載しています。

料理研究家・介護食アドバイザー
クリコ

本名は保森千枝(やすもり ちえ)。
1988年 自宅にサロンスタイルのイタリア料理研究教室
    「Cucina Curiko クチーナ・クリコ」を開講。
2009年 和食料理教室開講。
2011年 口腔底がんの手術により噛む力を失った夫に
             おいしく食べて、元気になってほしいという願いを込めて、
             独学で介護食づくりを始める。
2014年 介護食アドバイザーの資格取得。

「簡単においしく」「家族と同じ献立」「好みの味つけ」「美しい盛りつけ」をモットーに、介護食づくりを提案。その経験を生かし、講演会や料理講習会で活躍中。著書に『希望のごはん』(日経BP社)、『誤嚥を防ぐ! 噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん』(講談社)。Webサイト「やわらかい・飲み込みやすい、クリコ流ふわふわ希望ごはん」を運営中。

UP DATE 2019/06/26

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