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一人で悩む看護師さん多数!
先輩が教えるべきコミュニケーションのとり方

皆さんのまわりに、コミュニケーションで悩んでいる看護師さんはいませんか? 医療現場で求められるコミュニケーションは、ふだんのように楽しくおしゃべりする時とは違います。例えば不安な気持ちに寄り添ったり、患者さんの今後の福祉向上につながるようなコミュニュケーションが求められます。患者さんとの会話に苦手意識を持ち、一人で悩んでいる看護師さんの強い味方が先輩看護師です。今回は保健師であり、カウンセリング方法の一種である「動機づけ面接」のトレーナーでもある三瓶舞紀子さんを取材。前編では、先輩が後輩にコミュニケーションスキルを教えるコツについてお聞きしました。

なんでコミュニケーションスキルが必要なの?
患者さんに寄り添い、支えるプロとしての責任

そもそもなぜ医療現場でコミュニケーションスキルが求められているのでしょうか? 充実した生活を送るために、健康であることは欠かせません。しかし、ここ数年で人々の生活は大きく変化し、生活習慣病という言葉にもあるように、病気が慢性化しています。治療と経過にとても長い時間がかかり、病気が退院後の生活に大きく影響することも......。そのような状態が続くと、外出する意欲がなくなったり、趣味を楽しめなかったり、さらには生きるための気力を失ってしまう人も多いといいます。
 
「最近話題になっている『セルフネグレクト』という問題をご存知でしょうか。セルフネグレクトとは、暮らしに不可欠な衣食住や、医療、健康、安全を維持するためのサービスを拒否する状態にあることを指します。特に高齢者の方に多い傾向がありますが、どの年代でも起こり得ることです」(三瓶さん)
 
セルフネグレクトという状態は、病気にかかったことや、ショッキングな出来事がきっかけで陥る方が多いといわれています。将来が見えず不安になったり、落ち込んで立ち直れなくなったりしている患者さんに対して、看護師・介護士としてどのように接することができるでしょうか? ここで必要となるのが、患者さんの気持ちや考えを正確に理解し、一緒に課題解決へと向かうためのコミュニケーションです。慢性疾患が増え経済状況の格差が広がりつつある今の社会では、不利な状況にある人ほど、より健康的な自分らしい生活や人生を諦めてしまいがちです。だからこそ、看護師・介護士のコミュニケーションスキルはより一層求められているのです。

現場での教育が最大のポイント
コミュニケーションスキルの向上は先輩にかかっている!?

では、患者さんに寄り添うプロとしてのコミュニケーションスキルは、どうしたら身につくのでしょうか。コミュニケーションスキルは看護学校の基礎教育では特別に練習をする機会はほとんどありません。疾病による生活変化や慢性疾患を抱えながらの人生を受け入れるお手伝いをするような患者さんとのコミュニュケーションスキルは、現場に出てから初めて必要になります。
 
「コミュニケーションについては、実際に現場で働いてみて初めて知ることや、学ぶことがとても多いです。たとえば、骨折で入院されている患者さんと、末期癌で入院されている患者さんでは精神状態や求めているものが全然違いますよね。患者さんの病状や、抱えている不安によって適切なコミュニケーションの取り方は違うんです。ですので、コミュニケーションスキルを教える適任者は、今まで現場でいろんな経験をしてきた先輩看護師であるといえます」
 
現場で働いてきた先輩看護師は、新人に比べ多くの修羅場をくぐり抜けてきたことでしょう。コミュニケーションスキルを含め、今まで培った経験や知識を後輩に教えることは先輩の大きな役目です。
とはいえ、先輩だからといってコミュニケーションスキルを教える専門家ではありません。後輩を指導するときに、どう教えればいいのか分からない先輩も多いのでは? そんな時、教える立場にある看護師、介護士さんには次の3つのポイントを意識してほしいと、三瓶さんは言います。
 
「まずは正解を見せること。自分がお手本になり、患者さんとスムーズにコミュニケーションをとっている場面を見せてあげましょう。次に選択させること。『患者さんの状態を知りたいときに、痛いですか? と聞くのと、痛みはどうでしょう、と聞くのはどちらが適切だと思う? 』と、正解だと思うものを教えている相手に選択してもらいます。最後にしっかりと理由を説明しましょう。この状況ではなぜこの行動をとることが最善なのか、理解して行動に移してもらうことが大切です」
 
後輩は、先輩の正しい対応を見て、自分で選択し、その理由を知ることで、言葉だけで説明されるよりも深く理解でき、行動しやすくなります。言葉だけで一気に教えるのではなく、ふだんからこの3ポイントを意識しながら教えてあげましょう。

Point
現状の教育で十分ではない?
コミュニケーションを基礎教育から学べる環境へ

医療現場でのコミュニケーションスキルが重要視されているにも関わらず、基礎教育としてコミュニケーションのスキル練習を取り入れている大学や看護学校はまだまだ少ないのが現状です。基礎教育で具体的なスキルを練習するようなコミュニケーションを学ぶ場があれば、看護師さんの悩みが軽減されるのはもちろん、患者さんの負担も減るだろうと、三瓶さんはいいます。

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「現場に出てからコミュニケーションで悩んでいる看護師さんってとても多いんです。そういった看護師さんたちを減らすには、看護学校や大学に通っているときから、実際の患者さんとの場面を想定して会話のやりとりを練習して身に着けることができる授業を設けるべきだと、私は思います。コミュニケーションを教える方法の一つ、行動療法から生まれた動機づけ面接(Motivational Interviewing)というカウンセリング法をご存知でしょうか?元々はアルコール依存症の患者さんに行うカウンセリング法でしたが、今は様々な医療・保健現場で使えるコミュニケーションスキルとして注目されています。相手の考えや感情を理解し、変わりたいと思う気持ちを引き出す具体的なスキルです。私は動機づけ面接を基礎教育に取り入れてほしいと思っています。
 
たとえば、『もういいよ、そんなの』という患者さんの気持ちや状況を想像し、『(そんなふうにおっしゃるのは)もう今の状況がよくなるわけがないと絶望していらっしゃる』と、言葉にして返します。すると患者さんが実際に絶望していれば『そうか、自分は絶望しているのか』と自分の気持ちを知り、また、看護師と共有することが出来ます。気持ちを共有してもらった時に、人は、“受け入れてもらった”“解ってもらった”と感じやすいのです。もし患者は絶望しているのではなければ、『いや、そうではなくて、もう疲れちゃったんだよ』とおっしゃってくださいます。

これは、人間には、自分の考えや気持ちと違うことを言われるとそれを正したくなる“正したい反射”という心理的特徴があるからです。『疲れちゃったんですね』と相手の言葉を繰り返すことで、患者は看護師の言葉を耳から聞いて『そうか、自分はもう疲れちゃったんだな』と自分の感じ方を知り、また、看護師と共有することができます。

この繰り返しで、患者さんと看護師で患者の考えや気持ちを具体的に共有していきます。これらを共有した上で、そういった現実の中でどんな方向に向かいたいか、そのためにどのような行動が望ましいのか患者さんと話しあいます。その上で患者のペースに合わせつつ、望ましい行動をとりたい理由を中心に話を聴いていく。患者さんは、望ましい行動をとりたい理由を多く話すうちに、その行動をとりたくなってきます。そうして実際の行動に移せるよう、その人本来が持っている力を引き出していくのが動機づけ面接です。
 
病気を患っている人や、ご高齢の方は、漠然とした不安を抱えていて、それが原因でコミュニケーションをうまくとれないケースもあります。そういった方々にもこの動機づけ面接はとても効果的です」

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基礎教育からコミュニケーションスキルを磨くことで、看護師さんの悩みが軽減されるのはもちろん、患者さんの負担も減るでしょう。動機づけ面接の基礎は、3日間ほどのワークショップで習得できるので、まずは基礎教育の段階でワークショップを取り入れてほしいと、三瓶さんは言います。

先輩必見!
実例を用いた教え方講座

教えるときの3つのポイント「正解を見せる」「選択させる」「理由を説明する」を、実際にどう活用すればいいのか、説明されただけではわかりにくいという先輩も多いでしょう。そこで! 医療現場で実際に起きたコミュニケーショントラブルの例を用いて、先輩に実践してほしい教え方をご紹介します。
 
Episode1■そんなつもりじゃないのに怒らせてしまった......
この例では、選択をさせることと、理由を説明して教えています。
 
~ベッドメイキング中~
(オーバーテーブルの上にくしゃくしゃのティッシュを発見)
看護師 「これ、捨ててもよろしいですか? 」
患者  「捨てるってなんだよ! それは大事なものなんだ! 」
看護師 「(じゃあどう言えばよかったの~!?泣)」
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看護師 「先輩……。私はどう対応すればよかったんでしょう」
先輩  「例えば、そこにあなたにとっては大事なモノがあって、それを『捨てていいですか? 』と聞かれるのと、『とっておきますか? 』と聞かれるのとでは、どっちがよさそう?」
看護師 「後者のほうが気遣ってくれているように感じます」
先輩  「そうだね。患者にとってそのモノが大事なものかもしれない、自分にはゴミに見えるけど患者の考えは自分と違うかもしれないって想像できているよね」
 
「丸まったティッシュや、ペットボトルの蓋など、一見ゴミのように思えても、患者さんの私物である以上、大事なものである可能性があります。こういった内容を患者さんに確認をするときは、なるべくポジティブな言葉に変換した聞き方がお勧めです」
 
Episode2■なにも言ってくれない......
この例では、正解を見せて、教えています。
 
~患者さんに今後のスケジュールを説明中~
看護師 「いつでもご相談くださいね」
患者  「あ......はい」
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先輩  「新しく入ってきたスズキさん、大丈夫そう? 」
看護師 「はい! 特に問題はないです」
先輩  「ふむ......」
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看護師 「(あ、先輩とスズキさん!)」
先輩  「スズキさん、先ほど検査のしおりをしばらくご覧になっていましたが、今の時点で検査について何か気になることはございましたでしょうか?」
患者  「実は明日の検査について、ずっと気になっていたことがあって......」
先輩  「スズキさん、さきほど入院のご説明を致しましたが、実際の生活を想像されてみると、今の時点で何か気にかかることはございましたでしょうか?」
患者  「あ、あの、点滴が食事までに終わらなかったらどうしたらいいでしょうか」
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看護師 「なぜスズキさんが困っていることに気付いたんですか? 」
先輩  「検査のしおりを何度も見ておられたから、何か気になることがあるのかもって想像して聞いてみたの。気にかかることって、説明の後で思いつくことが多いからね」
 
「『いつでもご相談ください』と言われたとき、患者さんの気持ちになってみると、なにをどこまで相談してよいのか不安ですよね。こんな些細なことは言えない、と思っている方も多いと思います。また、“今の時点で”と加えることで、この後も相談できる機会があることを伝えています。具体的な問いかけをタイミングよくするためにも患者さんをよく観察するようにしましょう」
 
先輩に教えてほしいポイントは「患者さんの気持ちを想像し、理解すること」であると三瓶さんはいいます。気持ちを想像せず、患者さんに質問ばかり投げかけると患者さんの負担になります。動機付け面接では、質問ではなく相手の考えや気持ちを想像して伝え返す共感のスキルを使って理解しようとしていることを伝えます。また、自分の考えを当然だと思い込んで患者さんの気持ちや考えを正確に理解しようとしなければ、コミュニケーションはうまくいきません。支援のプロとして、スムーズなコミュニケーションをとれるようスキルを磨くことを心がけましょう。

いかがだったでしょうか? 毎日患者さんと向き合う看護師さんにとってコミュニケーションは欠かせないもの。自分の周りにコミュニケーションで悩んでいる後輩看護師がいるならば、先輩として相談に乗ってあげたり、お手本を見せてあげることが大事です。仕事に必要なスキルとして看護師全員が身につけていれば、患者さんの不安をいち早く解消することができるので、病棟の雰囲気もより明るく、前向きになることでしょう。
 
後編では、コミュ力アップのために日頃から意識できるポイントをご紹介します。仕事に限らず、人間関係で悩んでいる相手に使えるシンプルなテクニックが満載なので、しっかり学んで、ストレスフリーなコミュニケーションを実現しましょう!

おすすめ書籍

『看護の現場ですぐに役立つ 患者接遇のキホン』
著者:三瓶舞紀子
出版:株式会社 秀和システム

医療現場の、接遇やマナーの悩みを解決する情報が
盛りだくさん。患者さんとのコミュニケーションに
悩んでいる看護師さんにぴったりの一冊です。
 

     国立研究所研究員
     三瓶舞紀子

 
    2000年から7年間精神病院に勤務後、2007~2009年に
    聖路加看護大学大学院看護学博士前期過程修了。
    その後2009~2012年に順天堂大学医療看護学部精神看護教員として勤務し、
    2012~2014年に東京大学医学系研究科公共健康医学専攻を修了。
    現在は国立研究所研究員、および小児科医院にてカウンセラーとして勤務。
    また、動機づけ面接トレーナーとして面接法の研修や講演を行っている。

UP DATE 2019/10/21

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