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2026年10月7日(水)・8日(木)・9日(金)の3日間、福祉機器に携わる企業と人が集まるイベント「H.C.R.2026 第53回国際福祉機器展&フォーラム」が東京ビッグサイトで開催されました。本レポートでは、福祉業界におけるDXをテーマにした3つのセミナーを紹介します。
INDEX
▲会場は満席! 通路も立ち見の参加者で埋め尽くされるほど注目度の高いセミナーでした
最初に紹介するセミナーは、厚生労働省の原田一寿審議官が登壇した「介護DX関連施策の最新情報」です。原田審議官は冒頭、介護サービスの需要が増加する中、少ない人数でも現場を回せる体制づくりが重要だと説明。人材確保に向けた職員の処遇改善や生産性向上の必要性を示し、介護テクノロジー導入投資支援事業など、厚労省が行っている支援施策の最新状況や活用のポイントを解説しました。
特に重点が置かれたのが、2027年1月に予定されている「ケアプランデータ連携システム」と「介護情報基盤」の統合です。介護保険資格確認等のWEBサービスから「ケアプランデータ連携システム」にアクセスすることで、同サイト内でケアプランを共有できるようになります。これまで紙で運用されており、介護事業所で管理の負担が大きかったケアプランについて、異なるソフト同士でもデータを連携できるように。業務効率化につながることや、利用料が無料であることなどのメリットを紹介し、参加者へ積極的な利用登録を呼びかけました。
▲厚生労働省 審議官 原田一寿氏
最後に、世界的な高齢者人口の増加を踏まえ、日本の介護システムや技術が成長産業になる可能性への期待を示した原田審議官。学生や現場の従事者に向けて「希望と気概をもってがんばっていただきたい」とエールを送り、セミナーを締めくくりました。
最新の支援制度に関して詳しい説明があったため、都度メモをとり、前のめりに話を聞いている参加者が目立ちました。ただ、いろいろな支援制度があるとはいえ、日々仕事に追われている中で、「自分たちにこの制度は当てはまるのかな?」「どんなテクノロジーを取り入れたら業務効率化がすすむのかな?」と整理する時間をつくるのは簡単なことではありません。原田審議官からは「各都道府県の介護生産性向上総合支援センターで、個別の相談や最新機器の貸出を受け付けている」と紹介がありました。よりよい介護サービスの提供に向けて、そういった制度や窓口も活用できるとよいですね。
▲全国社会福祉法人経営者協議会/ふくしDX推進特別委員会 委員長 保岡伸聡氏
続いて行われたセミナー「DXで福祉現場はどう変わるのか? 〜浮いた時間が生み出す福祉経営の未来とAI活用戦略〜」には、全国社会福祉法人経営者協議会/ふくしDX推進特別委員会 委員長の保岡伸聡さんが登壇しました。
保岡さんは、全国の社会福祉法人の経営環境が厳しさを増す中で「組織の生存率を上げるためにはDX化が不可欠」だと強調。経営者が「思考の支援ツール」として積極的に生成AIを用いて、物価高騰や施設の大規模修繕などの大きな課題に対し効率よく向き合う必要があると訴えました。
▲「社会福祉法人は、すでに『薄利・赤字・人材難』へ」とセンセーショナルなスライドからセミナーが始まりました
さらに、保岡さんは生成AIの活用で生まれた時間を地域福祉の充実に充てることを提案。「社会福祉法人は地域の会社やNPO、行政と連携し、地域のプラットフォーマーになっていくべきだ」と述べました。特に、不登校児や子どもの貧困への支援など、子どもに関する事業は社会からのニーズが高く、補助金を活用することで新規事業に挑戦しやすい分野だと紹介。「地域福祉を支える存在となることで法人の存在感が増し、生存率を上げることにつながる」と、参加者に呼びかけました。
保岡さんは3年近く前から生成AIを活用し、毎日何時間も利用しているそう。アイデアが思いついたらすぐに生成AIと壁打ちし、新たな事業に挑戦していくことで、現在28もの事業に携わっています。最近は映画監督としても活動されているというから驚きです。「楽しみながら生成AIを活用して、この難しい社会を生き抜こう」とエネルギッシュに語る保岡さんの姿に、参加者の皆さんと共に刺激を受けました。
▲全国社会福祉法人経営者協議会/ふくしDX推進特別委員会 副委員長 武部幸一郎氏
最後のセミナーは「地域全体を巻き込む福祉DXの『共創の輪』! 〜学生×福祉現場×IT企業で育む地域共生と人材育成〜」です。登壇したのは、前セミナーの保岡さんと同じ所属であり、ふくしDX推進特別委員会 副委員長を務める武部幸一郎さん。島根大学の学生と共に、福祉現場の課題をデータ分析で改善したプロジェクトが紹介されました。セミナーにはプロジェクトを指導した教授や参加した学生チーム、ファシリテーターを務めたIT企業社員なども登壇し、現場での課題解決方法について解説しました。
武部さんが理事長を務める社会福祉法人豊心会では、人材不足に加え、アナログ業務による負担増加が課題だったそう。そこで、「DXで課題解決を手伝ってほしい」と島根大学にオファーしたことが、協業のきっかけだと言います。
▲島根大学 数理データサイエンス教育研究センター 瀬戸和希氏
プロジェクトでは、専攻も学年も異なる島根大学の3人の学生がチームを組み、実際に豊心会の現場でヒアリングを実施。シフト作成担当者の負荷軽減を目指し、生成AIを用いてシフト表の素案を作成する仕組みを提案しました。その結果、素案の作成時間を5時間から5分へと短縮。担当者の負担を軽減できる業務フローを実現しました。
▲豊心会のメンバーも授業に毎回参加。双方の理解を深めながら、解決の方法を探ったと言います
武部さんは最後に、DXや生成AIの導入で生まれた時間を、人材育成や地域活動、地域福祉に再投資することの重要性を強調。保岡さんと同じように、「地域全体を巻き込み、地域そのものを持続可能にする経営をしなければいけない」と述べ、地域のプラットフォーマーとして、今回の協業で生まれたつながりを広げていく決意を語りました。
冒頭、武部さんの「保岡さんのセミナーから引き続き参加している方は挙手いただけますか」という問いかけに対し、たくさんの方が手を挙げており、参加者の関心度の高さが伝わってきました。本セミナーで特に印象的だったのは「DXで本来変わるべきなのは仕組みやシステムではなく人。DXの本質は人材育成」という言葉。人が育つためにはホームとアウェイを行き来して学びを深める「越境学習」が効果的だという発想から、島根大学では今回のような協業に取り組まれているそうです。学生にとっても事業者にとっても多くの学びがある協業の事例が増えていくと、介護分野の未来がますます明るくなる予感がします!
▲横浜国立大学島研究室/UNTRACKED株式会社のブース。スタッフの腕の動きと連動し、白い筋電義手がポーズを作ります
展示棟東7ホールの特設ブース「テクノロジー×ケア展」では、大学や研究機関で開発中の、介護に関する最先端の技術や製品に触れることができました。東京大学 先端科学技術研究センター/TOPPAN株式会社のブースでは「VR吹き矢」を展示。VR空間に表示される的を狙って息を吹きかけることで、呼吸・口腔・空間認知トレーニング効果があるのだとか。ヘッドセットを着けて「VR吹き矢」を体験していた来場者からは「難しい!」と楽しそうな声が聞こえてきました。
横浜国立大学島研究室/UNTRACKED株式会社のブースでは、筋電位から使用者の動作意図を推定し、5本の指を連動して動かせる筋電義手のデモンストレーションや、心電図・脈波と独自のAIを活用して感情を見える化する「感情推定アプリ」の展示も。テクノロジーの活用で介護がこれからどんな進化を遂げるのか、注目です!
| イベント名 | H.C.R.2026 第53回国際福祉機器展&フォーラム |
|---|---|
| イベント概要 | 最新の福祉機器や介護ロボット、支援技術など、福祉の現場を支えるさまざまな製品やサービスが一堂に集まり、新しい福祉の可能性に出会える展示会&フォーラム。 |
| 展示会テーマ | クリエイティブな未来を拓く |
| 開催日 | 2026年10月7日(水)・8日(木)・9日(金) |
| 場所 | 東京ビッグサイト 東展示ホール |
| 公式HP | https://hcr.or.jp/ |
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