インタビューアーカイブ

2022/4

多世代が支え合う社会を実現するために 高齢者住宅を中心とした街づくりを推進(後編)

2035年には団塊世代が後期高齢者に突入し、ほかの世代を含めた総人口の約1/3が高齢者になるともいわれています。学研グループでは、こうした社会課題の解決を目指し、高齢者・子育て支援を主軸にさまざまな事業に取り組んでいます。今回は、高齢者住宅を全国的に展開している、学研ココファンの代表取締役社長兼COOの森猛氏を取材。全国規模で行っている研修や情報共有方法、コロナ禍でのスタッフのサポート体制、また学研グループが目指す「学研版地域包括ケアシステム」についてお話いただきました。

森 猛

株式会社学研ココファン 代表取締役社長兼COO
株式会社学研ココファン・ナーシング 代表取締役社長

品質向上のための議論や情報共有も含め
各種研修にオンラインを導入してより活発に

前編はこちら

初任者研修のあとも、さまざまな研修を開催しています。内容は、階層別のリーダー研修やフォローアップ、特定のサービスのスキルアップを目指す専門職研修のほか、重点課題を解決するための討論や情報共有などを全国規模で行っています。

その一つが、「入院をさせないケア会議」です。学研ココファンでは「サ高住内の入院率を2%以下にする」という目標を掲げていますが、これは先代の社長が提唱した「入院しない・させない介護、看護」をさらに推進するための取り組みです。ご入居者が今まで以上に健康になるために何ができるのかを、現場で培った専門知識をもとに予防的な観点での施策を検討し、全国のスタッフに伝えていくことを目的としています。

また、毎年1回行っている「ケア品質向上大会」も盛況です。これは、各事業所で取り組んでいる好事例を全国のスタッフの前で発表し、顕彰する取り組みで、事前に地区予選を実施しています。毎年、選りすぐりの事例が発表されますが、2021年度は、住み慣れた自宅から高齢者住宅に転居する際に生じるストレス「リロケーションダメージ」を軽減するための施策が高評価を得ました。多職種連携や居室内環境の見直しで改善させた事例に、「地域で暮らす皆さまにも知っていただこう」という意見が挙がり、専用のリーフレットを作成して外部への発信も行いました。

▲作成されたリーフレット

また、近年は高齢者介護では避けて通れない「お看取り」をテーマにした発表も目立っています。「サ高住であっても、ケアシステムが確立している事業所ではお看取りまで行えることがわかった」「私たちの事業所でも挑戦したい」と、他事業所の取り組みに刺激を受けたとの声も多く、事業所の枠を超えて知見を共有できたことに大きな手ごたえを感じています。

いずれの研修もコロナ禍で対面が難しい場合は、オンラインもしくはオンラインと対面のハイブリッドなど、臨機応変に判断して実施しています。参加手段が増えたことで参加率も大幅に上昇し、より活発な意見交換が行われるようになりました。

 

役員が現場スタッフの声を聴き
オープンに発言できる風土が財産

研修の機会を多く提供することと同時に、スタッフへのフォローアップにも注力しています。特にコロナ禍においては、スタッフの防疫面での健康管理やメンタルケアには細心の注意が必要で、会社としても各スタッフにこれまで以上に多くの緊張を強いることになります。このような状況を踏まえて、社内のフォローセンターを活用し、入社3ヵ月を目途に「仕事の状況はどうですか。いつでも相談してください」と、電話でコミュニケーションをとる取り組みを始めています。不安を抱えるスタッフには定期的に連絡をとり、会社としても改善できることはしっかりと対応していく。とにかく、会社からスタッフに歩み寄る姿勢を強く意識しました。

また、新たな取り組みとして2021年度から始めたのが、役員と現場スタッフの懇親会です。4人の役員が手分けをして、普段会話する機会のない現場スタッフ6人ずつとオンラインで意見交換をしていくのです。目標は、合計1,000人のスタッフと対話すること。会話の内容は、自己紹介から始まり、普段考えていることや職場に対する意見などですが、「この際だから、自由に話してください!」と伝えると、実にさまざまな意見が飛び交います。こうした「意見を言いやすい風土」は、学研ココファンのよさだとあらためて実感しているところです。

 

創業当時からグループが目指してきた
「学研版地域包括ケアシステム」の全国展開

冒頭でもお話ししましたが、高齢者・子育て支援事業は学研グループが社会に果たすべき大きな使命です。今後も高齢者は増え続けることから、「より多くの高齢者に高品質なサービスをいつでもどこでも受けていただく」ことは最優先に成し遂げなければと考えています。現在、ココファンに入居するタイミングは平均約85歳であることから、将来、高齢者向け住宅が本当に必要となるのは団塊世代の方が85歳になる2035年頃からだと見据えています。我々はこのタイミングに照準を合わせ、今後、年間25箇所を目標にサ高住の開設を進めていく構えです。 同時に、〝0歳から100歳を超える高齢者までの多世代が支え合いながら地域で安心して暮らしていく街づくり〞を目標にした「学研版地域包括ケアシステム」の構築も進めています。学研ココファンが展開するサ高住を中心に、その周りに介護・看護・障がい者福祉、子育て支援、教育、専門職人材の育成など、グループのサービスやコンテンツを機能させます。さらに、地域の医療機関や施設、団体・行政機関とも連携しながら、包括的に地域に住む「すべての人」の暮らしをサポートしていくのです。

▲学研が目指す「学研版地域包括ケアシステム」

この「学研版地域包括ケアシステム」こそが学研グループが達成すべき社会貢献の形だと考え、当社ではココファンシリーズの中でも、サ高住の機能に加えてクリニックや保育園、学びの場、交流スペースなどを付加した複合施設の運営にも力を注いでいます。2022年度には新たに三つの複合施設を開設し、今後も年間1拠点のペースで拡大していく予定です。学研ココファンは、これからも学研グループの理念に則り、「すべての人が心ゆたかに生きる」社会を実現するためにたゆまず努力を重ねていきたいと考えております。

 

森 猛

株式会社学研ココファン 代表取締役社長兼COO
株式会社学研ココファン・ナーシング 代表取締役社長

2001年、セントケア・ホールディング株式会社に入社。執行役員マーケティング部長や専務取締役経営企画部長などを歴任し、2012年に代表取締役社長就任。2020年6月より学研ココファンホールディングス取締役および学研ココファン品質管理本部本部長に。その後、同年11月より現職となる。

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