青森県立中央病院は、県に一つしかない県立総合病院として、これまで高いクオリティを維持しながら高度・専門医療を提供してきました。しかし、平成28年の青森県地域医療構想の策定を機に、病院のあり方にも大きな変化が起こります。こうした常に起こる時代の変化に対応するため、青森県立中央病院では4年ごとの経営計画を策定し、現在まで病院経営を行ってきました。時代のニーズに合わせて変革を続ける病院の成長プランについて、院長の藤野安弘氏にお話しをお聞きしました。
2018/9
青森県立中央病院は、県に一つしかない県立総合病院として、これまで高いクオリティを維持しながら高度・専門医療を提供してきました。しかし、平成28年の青森県地域医療構想の策定を機に、病院のあり方にも大きな変化が起こります。こうした常に起こる時代の変化に対応するため、青森県立中央病院では4年ごとの経営計画を策定し、現在まで病院経営を行ってきました。時代のニーズに合わせて変革を続ける病院の成長プランについて、院長の藤野安弘氏にお話しをお聞きしました。
青森県立中央病院 院長
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新成長プランの素案は、現場の職員たちが作成しています。センターごとに大きな目標を立て、さらにその下の各診療科でも細かくプランを練りますから、毎回かなりの数の素案が提出されます。内容は、次の4年に向けて自分たちに何ができるのかを考え、比較的、実現可能な範囲で目指したいことを設定してもらっています。中には、「医療スタッフを大増員してほしい」「高価な医療機器を購入したい」といった提案もありますが、プランはあくまでも〝計画〞であり〝希望〞ではありません。現実的に難しいこともありますが、予算も含めて達成までの工程を考えている場合は考慮することもあります。
そして、各部署のプランを我々が総合的に判断し、病院全体の方向性として打ち出します。さらに、毎年どこまで達成できているのか、評価自体も各部署で行い、達成できていないものに関してはその要因も考察してもらっています。我々も各工程で職員へのヒアリングを重ね、評価もしていきますから、こうした取り組みは現場の〝生の声〞を拾う、よい機会にもなっています。また、4年という近い将来を見据えて、職員自らが「今、何をすべきか」「どうしたら目標を達成できるのか」ということを考えるわけですから、病院を、医療をよりよくしようと個々が主体的に考える習慣も身に付きます。こうした意味でも、プランを細かく策定することは病院の成長のためにもとても意義のあることだと感じています。
時として、病院の方向性といった大きな決定などはトップダウンが必要なときもありますが、その一方で、自分たちの診療科をどのような方向に導いて行くかということに関しては、ボトムアップの仕組みも組織にとって絶対に必要なシステムです。そうでなければ、自分たちがやりたいことが見えてこなくなってしまいますし、そのせいで勤務意欲が低下しても困りますしね。当院では、新成長プランを通して、経営層と現場がちょうどよい加減で互いに手を取り合うことができているのではないかと思います。
平成19年の「県立病院改革プラン」からスタートしたこの経営計画も、すでに10年以上が経過しました。当初は、医師数が120人ほどでしたが、現在は170人まで増えました。医師の数が増加するということは、病院全体がよい方向に進んでいるからこそだと思いますので、着実に成長の道をたどっていると言えるのではないでしょうか。もちろん、病院の真の成長は、患者さんが満足してこそ成り立つものですが、働いている職員が日々進化している病院も、やはり成長している病院だと言えると思います。決して足踏みをしてはいけません。みんなが次のステップに向けて、「自分たちが成長するんだ」という意気込みをもって進んで行くことが、病院全体の成長につながるのだと思います。
平成31年から始まる次の「県立病院第3期新成長プラン」の策定は、動き出したばかりのためまだ何も決まっていませんが、地域医療構想との整合性はますます求められることが予想されます。地域の中での機能分化、医療提供のあり方などにおいて、あえて新しいことにチャレンジする必要はありませんが、地域医療構想自体がまだまだ手探りでもあるため、構想の変更や新しい事案が出てきた場合、当院としてもそれに従って新成長プランを調整していくことになるでしょう。
それから、「ペイシェント・フロー・マネージメント(PFM/Patient Flow Management)」という言葉がありますよね。この言葉の定義通りではありませんが、当院としては、患者さんが入院する前から退院した後の生活支援まで、一連の流れで患者さんとの関わりをもち、効率的な医療の提供を目指したいと考えています。病床管理を合理的に行うということだけではなく、患者さんにとって最適な医療を提供できるように、入院する前の段階からアセスメントを行い、入院中は効率的な治療を提供して、心地よく退院していただくことが一番大事なことだと思っているからです。残念ながら、当院ではまだそこまでの体制は整っていないため、次の新成長プランにおいて進めていくことができれば、また一段と成長できるのではないかと思います。
私の夢は、動脈硬化の教育センターをつくることです。あくまでも、個人的な夢なんです。でも、次のプランでは、少し具体化できるように提案していきたいですね。そして、もう青森県民を病気にさせない……とまでは言い切れませんが、病気になっても早期に治せるような体制をつくって、何年後かには平均寿命全国1位の県を目指したいですね。
青森県立中央病院 院長
昭和54年弘前大学医学部医学科卒業、平成11年青森県立中央病院に入職。医療局長、副院長を経て、平成28年、医療の質総合管理センター長、循環器センター長兼任で院長就任、現在に至る。得意分野は、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患一般、特に冠循環動態。
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