資格のチカラ

2024/4

在宅看護指導士/在宅介護指導士

医療・介護の地域連携の中心的役割を担う看護師、介護福祉士、介護支援専門員、リハビリ職が挑戦できる資格。在宅看護指導士は、人・組織・地域を育てる専門資格として、訪問看護の実践に必要な知識をはじめ、リスク管理、経営とブランディングなども包括的に習得します。在宅介護指導士は、医療の視点で疾患別のケアや緊急時の対応などを学ぶことで、利用者の身体の変化を素早くとらえ、医療につなげられる介護のエキスパートを目指します。

地域包括ケアを支える新資格! 在宅看護指導士・在宅介護指導士の役割とは

在宅看護指導士・在宅介護指導士の役割とは

加速する高齢化で、自宅での療養生活をサポートする訪問看護・介護サービスの利用者は年々増えています。利用ニーズの高まりを受け、訪問看護・介護の現場を率いるリーダーの育成を目指す資格、在宅看護指導士と在宅介護指導士が2024年に生まれました。この創設に関わった全国在宅医療マネジメント協会の末永一祝さんと北川歩理さんに、資格創設の背景や目的について聞きました。

<お話を聞いた方>
全国在宅医療マネジメント協会 代表理事
株式会社NEXAS メディケア訪問看護リハビリステーション福岡南 代表取締役
救急看護認定看護師 すえながかずのり
末永一祝さん

全国在宅医療マネジメント協会 理事/看護師
きたがわあゆり
北川歩理さん

「自己解決」が多い訪問看護・介護に必要なスキル

まず、在宅看護指導士・在宅介護指導士の資格をどのような方に向けて立ち上げたのか、教えてください。

末永

この資格は、在宅医療・介護に興味のある医療・福祉従事者を対象にしています。すでに在宅領域で活動していて、これから現場リーダーとして幅広い視野を身につけていきたい方、訪問看護・介護ステーションの開業を考えている方、あるいは訪問看護・介護の仕事に挑戦したい方など、幅広いステータスの方々に向けてつくりました。

具体的には、在宅介護指導士(以下、介護指導士)は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士を対象にしています。在宅看護指導士(以下、看護指導士)は、看護師だけでなく理学療法士、言語療法士、作業療法士の資格を持つ方も対象にしています。対象の幅を広げている理由は、現場での職種間の連携を強化するために、互いの職種の役割への理解を深めることが必要だからです。自身の専門性を土台にしながら、ヘルスアセスメントを通して看護につなげることが求められます。

 

お二人が監修されたカリキュラムでは、具体的にどんなことを学ぶのでしょうか。

末永

看護指導士のカリキュラムは、疾患別のケアマネジメントや生活支援、緊急時の対応など、訪問看護の実践で生かせる知識を中心としています。介護指導士については、看護師の視点を取り入れた疾患別のケアを広く学ぶことが可能です。ご利用者の生活を近くで支える介護従事者の方々が、ご利用者の体の異変にいち早く気づき、他の医療職に伝えるための観察視点や判断力を養うことを目的としています。

北川

訪問看護や訪問介護は、医師や他のスタッフが常駐している病院や施設とちがい、一人で現場に訪問することが多いため、自己解決しなくてはいけない場面が多々あります。「こんな症状が出ているけれども報告した方がいいのか」など、看護師の視点を学ぶことで、ご自身で具体的に整理・判断できるようになるのが狙いです。

末永

各ステーションでのBCP策定の義務化をふまえ、災害対策もカリキュラムに取り入れています。ご利用者の自宅というリソースが限られた環境の中で非常時に対応するためには、災害対策の知識は必須です。この他、本資格ではビジネスマナーや人材育成、経営やブランディングについても習得することに力を入れています。

在宅看護指導士/在宅介護指導士 テキスト

▲在宅看護指導士・在宅介護指導士になるためのノウハウが詰まった公式テキスト

これからは誰もが経営的な視点を持つことがマスト?

ケアの実践に役立つ知識だけでなく、経営やブランディングの習得に注目した理由は?

北川

在宅医療・介護のニーズの高まりを受け、全国で訪問ステーションの数は飛躍的に増えており、同じ地域内で活動する他のステーションはいわば競合他社となります。その中で、自分のステーションが提供する看護・介護の強みとは何なのか、それをどう周知させるのか、経営的な視点をもつことが重要になっています。

末永

経営者や管理者だけでなく、スタッフ一人ひとりが経営的な視点をもつことでチーム力も向上します。しかし、私自身も訪問看護ステーションの経営者として感じるのは、スタッフに経営面の話を自分ゴトとして捉えてもらうのが難しいということです。本カリキュラムで経営の基礎を学ぶことで、これまで敬遠してきた分野もより受け入れやすくなるのではないかと思います。

経営者として現場で感じている課題点が土台となっているのですね。

末永

経営者や管理者の悩みは、表に出てこないものがたくさんあります。というのも、いま医療・介護の専門がどんどん細分化されていて、職種や事業者間で横のつながりが希薄になってきているからです。他のステーションがどんな悩みをもっているのか、見えづらいのです。

しかし地域の方々にとってよい看護を提供していくためには、他の職種や地域でサポートしている方々との協力が欠かせません。そのためにも個人個人が、専門的なスキルだけでなく、他と協力し合える調整力や統制力を高めていくことが今後いっそう求められると思います。

北川

通常ステーション同士で協業することは少ないですが、難病患者さんの場合、複数のステーションが一人の患者さんの看護に介入することもあります。ご利用者に自分らしい生活を送ってもらうために何をすればいいのか、カンファレンスや情報共有を通して、同じ方向性で考えることがとても大切です。

訪問業務は一人で担うことが多い反面、ステーション内外の連携プレイが大切なのですね。

北川

ステーションによって規模も違えば、チーム構成の考え方も違います。末永さんのステーションのようにスタッフが団結して営業活動を行うところもあれば、管理者一人で営業活動を賄うところなど多種多様です。どちらがよいかは別として、ステーション内のつながりを強化するという点で、上司に相談しやすい環境づくりや人材育成といった視点を一人ひとりがもつことは大切ですよね。

在宅看護指導士/在宅介護指導士 末永さん事業所

▲末永さんが代表を務める訪問看護ステーションでのスタッフミーティングの様子

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訪問看護ステーションの経営者として――

末永さん曰く、近年訪問看護業界では、若い従事者や自身のステーションを開業する人が増えているそうです。末永さんも、自身の追求する看護を実現するために起業した一人。
「独立当初は不安だらけで、実際ライバルが多い中での経営も簡単ではありません。でもその場の環境を良くするのも悪くするのも自分次第。自分が目指す理想の看護やリハビリに近づけるのが、この仕事の醍醐味です」

取得方法・お問い合わせ

資格主催団体名一般社団法人 全国在宅医療マネジメント協会
資格種類在宅看護指導士/在宅介護指導士
受験資格【在宅看護指導士】次のいずれかの免許および実務経験年数を有する者
1. 看護師・理学療法士・言語聴覚士・作業療法士
2. 実務経験2年以上*
【在宅介護指導士】次のいずれかの免許および実務経験年数を有する者
1. 介護福祉士・介護支援専門員・社会福祉士
2. 実務経験2年以上*
*実務経験は、免許登録日以降、審査書類提出日までとする)
一般社団法人 全国在宅医療マネジメント協会 ホームページhttps://jhma.or.jp/

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