私たちの働き方改革

2023/1

定期的な新卒採用を実現し、離職率はわずか2.8%
充足した人員体制を維持し続ける白扇閣の取り組みとは

定期的な新卒採用を実現し、離職率はわずか2.8%<br>充足した人員体制を維持し続ける白扇閣の取り組みとは

社会福祉法人 清承会
特別養護老人ホーム 白扇閣

中央:施設長 久保田 和宏さん
左:興津川地域包括支援センター社会福祉士 大石 奈穂さん
右:介護職員 伊東 良織さん

人材不足が慢性的な課題となっている介護業界において、静岡県にある特別養護老人ホーム 白扇閣では、令和2年度から毎年4~8名の新卒を採用しています。さらに、令和3年度の離職率はわずか2.8%にとどまり(介護労働安定センターによる全国の介護労働実態調査では14.3% ※1)、高い定着率を実現。そこには、「ご利用者の喜びが、結果的に働きやすい職場づくりにつながる」という思いがありました。継続的な人材確保や職員の定着を叶えた取り組みについて、施設長の久保田さんと若手職員のお二人にお聞きました。

※1 令和3年度「介護労働実態調査」(介護労働安定センター)
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_kekka_gaiyou_0822.pdf

人材不足を解消するために、特別に取り組んだことはない

久保田

白扇閣では、開設時から「困った人を助ける」、「地元密着」、「地域貢献」という理念を貫いてきました。これまで介護度が重度の方だけでなく、金銭面でお困りの方、身寄りがない方などさまざまな事情を抱えた方々を受け入れる地域のセーフティネットとしての役割を担ってきました。

私が施設長に就任したのは2015年です。ここ数年、人材不足が業界内で大きな課題となっていることを受け、さらなる人材確保・育成の強化を目指し着任しました。とはいえ、実をいうと、これまでに施設として人材不足が大きな課題になったことはありません。ですので、「人材不足を解決するために」何か特別な取り組みをしてきたという経緯はないのです。しかし、今思えば「地域貢献」や「ご利用者目線に立ったサービスの向上」を目指した取り組みが、職員のやりがいに通じ、自然と人材の確保や定着につながっていったのだと考えています。

人材確保に通じた、地域の学校との密な交流

久保田

白扇閣の開設当初から、私たちが積極的に取り組んでいるのが、地元の子どもたちとの交流です。これまで、地元小中学校、高校、大学、看護学校の実習生や生徒さんなどを多く受け入れてきました。これは、地域貢献の一環でもありますが、施設全体で後進を育成していこうという狙いもあります。

大石

私はもともと福祉系の高校・大学に在学しており、白扇閣には何度か実習で訪れていました。その際、施設全体の雰囲気がとてもよく、丁寧に指導してくれたのが印象的だったんです。職員の方は皆、忙しい中でも実習生にとても手厚く、きめ細やかなサポートをしてくださり、「施設全体でしっかりと後進を育てよう」という思いを感じました。

実習生が直接介護に関わることができない施設も多い中、白扇閣では着替えのお手伝いや、髪の毛を乾かすといった、直接ご利用者に触れる体験ができたことも大きかったですね。こうした実習での経験を踏まえ、大学卒業後は迷うことなく白扇閣への入職を志望しました。

伊東

私は、静岡大学の理学部を卒業後、2022年に白扇閣に入職しました。きっかけとなったのは、就職活動時に白扇閣を見学し、アルバイトをしたことで介護の仕事のすばらしさを知ったことです。昔から「人の役に立ちたい」という思いがあり、母親が看護師をしていた影響で医療や福祉の分野に関心があったことも後押しになったと思います。

久保田

実習生やボランティアの受け入れは、ご利用者にとってもよい影響があると思います。学生さんと接する機会が多いことで、ご利用者に「自分が若手や学生の育成に携わっている」という意識が自然と生まれ、高齢者自身の生きがいや尊厳にもつながるのです。普段は職員に対して消極的な方でさえ、そういった役割意識からか、地域の子どもたち、中学生、高校生、大学生、それぞれの年齢にあった話し方、声色を変えて接してくださいますよ。ハキハキと話をされ、こちらが驚くほどです。こうした姿を目にすると、多くの若手を受け入れることは、ご利用者の喜びにも通ずる取り組みなのだと感じています。

▲白扇閣で行われた新人医療ケア研修の様子

「後進の育成」に取り組むことで得られる職員の自信と新たな人材

久保田

若手の育成で大切にしているのが、「学生時代の学び」を一年目から実践できるようにすることです。当施設の門を叩く学生の中には、介護福祉士などの資格を取得し、学んだ知識を現場で生かしたいという方、伊東のように、人や世の役に立ちたいという高い意識をもった方が多くいます。こうした若手の強い意欲を生かすことが、結果的に利用者サービスの向上にもつながると考えています。ですから白扇閣では、一年目から自身のスキルアップの向上はもちろん、ご利用者の尊厳を守ったケアの実現、地域貢献、社会への発信、後進の育成など、幅広くお任せしています。

中でも、若手に積極的に携わってもらっていることが「地域貢献」や「後進の育成」です。その取り組みの一つとして、地域の小中学校や自身の出身校に出向いてもらい、介護の仕事や施設の話をしてもらっています。

大石

私は母校で開かれた「介護の魅力、発見セミナー」に講師として参加しました。当初は緊張したものの、お世話になった先生方も多く、卒業後の自分を見ていただく貴重な機会でもあり、自身の成長を感じられる経験でした。何より同じ福祉の道を目指す後輩たちと話す楽しさもあり、仕事で母校に関われることは、緊張よりも光栄でうれしい、という思いに尽きます。実際、生徒や学生により近い年齢のほうが、福祉や介護職に対する理解も深まり、共感も得やすいと感じますね。

この機会を通じて、人前で話すことが以前よりも苦ではなくなり、自分から積極的に発言できるようになりました。現在は指導する側となり、実習生の質問や相談に対し、自身の経験を踏まえてアドバイスをしています。彼らの不安に寄り添い支えるという、後進の育成に関われるところにもやりがいを感じています。

伊東

私は、出身大学の就活セミナーに参加し、就職活動に悩む学生の方と直接話す機会をいただきました。そこでは、私が理学部から福祉の道を選んだ理由やいきさつ、介護の仕事の魅力について話をしました。

マイナスのイメージや偏見がいまだ多くある介護・福祉の分野ですが、大変さだけではない、それ以上の楽しさとやりがいがある仕事だと、白扇閣で働き始めて知りました。こうした私の話で、介護職が将来に悩む学生の職業選択肢の一つとなったり、福祉分野以外の学部を卒業した方に福祉の道を目指すきっかけにしてほしい。そんな思いで話をしました。

▲高校で授業を行う白扇閣の介護職員

急な休みが取りやすく、資格も取りやすい職場は長く働きやすい

久保田

職員に長く仕事を続けてもらうには、気兼ねなく休みを取れる体制が大切だと考えています。私は日頃から職員に自分自身のやりたいことはもちろん、家族や友人など自分の身近な存在を大切にするよう伝えています。働くからには仕事はもちろん、充実したプライベートを送ってほしいですし、やはり福祉を生業にする以上、家庭や地域の福祉もおろそかにすべきではありません。職員一人ひとりやその家族も健康で幸せな状態にあることが、支えとなり仕事の続けやすさにつながると思います。

実際、白扇閣では、ここ4年で8人程の職員が出産の機会に恵まれましたが一人も離職者は出ていません。

大石

現在も4人のお子さんを育てながら資格を取って働く先輩もいらっしゃいますし、多くの職員が当たり前のように産休、育休を取って職場に復帰していますよね。

久保田

コロナ禍ということもあり、家庭の事情や急用で休みを取る職員が一日2~3人いますが、それでも運営上、問題なくまわせています。実際、年次有給休暇の取得日数は、全国平均が7.3日(※2)のところ、白扇閣では10.2日とかなり高い取得日数となっています。人員配置に余裕があることや、若い世代から年配の方まで幅広い世代の職員がいることで、取りたい休日が自然と分散することも休みの取りやすさの一因かもしれません。

伊東

私は、働きながら資格取得を目指し、どんどんスキルアップができるところも白扇閣の大きな魅力の一つだと感じます。介護福祉士国家試験の受験資格の変更に伴い、平成30年4月から実務者研修が施設内で開講されました。資格取得のためのサポートも充実しており、受講費を全額施設が負担してくれるのも助かります。しかも介護福祉士の資格を取得した後は、社会福祉士の資格取得を目指すこともできます。白扇閣で長く働けば働くほど仕事の幅や可能性が広がり、自分がやってみたいことや、将来像がみえることも働く動機につながると思います。

大石

職員それぞれの望む働き方ができるのも、白扇閣で長く働く職員が多いポイントだと感じています。

※2 令和3年度「介護労働実態調査」(介護労働安定センター)
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_kekka_gaiyou_0822.pdf

▲施設内の従業員用の休憩室スペース。マッサージチェアの設置や、ソフトクリームやコーヒーを楽しめるなど、従業員がリフレッシュできる工夫を凝らしている

ご利用者の要望を叶える取り組みを職員に一任

久保田

職員のモチベーション維持につながっていると感じるのが、現場から拾い上げたご利用者のニーズを形にすることを、職員に任せているという点です。現場の職員の提案を、上司は「あくまでも」後押ししていくという流れを大切にしており、上層部から「こうすべき」というトップダウンにはならないようにしています。

その例の一つとして、見守りシステムの導入があります。職員が夜の見回りをしっかりと行うと、敏感な方ほど起きてしまうのです。これに課題を感じた職員から「ご利用者にはぐっすり眠ってほしい」という要望があがったため、上司を含めてどんなサービスがあるのかを検討し、結果的に導入が決定。私は、それが予算的に可能かどうかを確認し、後押しするという姿勢で対応しました。

▲現場にはICTも積極的に導入している

伊東

「リモートで初詣」も、ご利用者からのご要望をもとに職員が実現させたイベントです。コロナ禍で初詣に行くことができなくなったご利用者から、一年の無事や商売繁盛などを「祈願したい」「お参りしたい」という希望をいただきました。そこで、近くのお寺の和尚さんにご相談し「リモートで初詣」という企画を実施。ご利用者にも喜んでいただけましたし、長年培ってきた暮らしや地域文化、習慣を守っていくことも介護の大切な役割なのだと実感しました。

久保田

特に、若手職員の企画を形にする起爆力というのは目を見張るものがあります。企画したイベントをフロア全体に共有したり、告知のための企画書を作るといった作業に対しても、積極的に新しいアイデアを盛り込む姿勢には頼もしさを感じます。当初はすべてを任せてしまうことに不安もありましたが、彼らに任せることで結果的に施設全体が活気づき、チーム力も増したと思います。

ご利用者のニーズを満たすために、自分たちで企画し、チーム全体を巻き込んで実現させる。何より、職員自身が「ご利用者の喜びに積極的に貢献している」という実感こそが働く意欲につながっているのだと思います。

▲リモート初詣の様子

ご利用者の喜びは職員のやりがいにつながり、よい循環が生まれる

久保田

当施設では多くのことに取り組んでいますが、社会福祉法人として当たり前のことをしているだけだと思っています。その「当たり前のこと」の参考にしてきたのが、日本介護福祉士会が掲げる倫理綱領にある基本の内容(※3)です。まずはここに書かれていることをしっかりやっていこうという姿勢で日々運営しています。

先にも述べましたが、私たちの根幹にあるもの、一番目指しているものはあくまでも「ご利用者の喜び」「ご利用者目線でのサービスの向上」です。ご利用者によいサービスを提供するためには、優秀で熱い意欲をもった職員に長く働いてもらうことが必要になります。では、そうした職員に長く働いてもらうためにはどうしたらよいのかを考える。そうして生まれた施策を一つひとつ練り、机上の空論ではなく、しっかりと実働させてきたことが、人材確保・定着につながってきたのだと実感しています。

福祉を生業とするならば、ご利用者の喜びは、すなわち私たちの喜びでもあります。ご利用者の満足度がそのまま職員の満足度につながり、施設としてよい循環が生まれていくのだと思います。

※3 日本介護福祉士会倫理綱領に関する資料は以下からダウンロードいただけます

関連資料
資料ダウンロード

日本介護福祉士会 倫理綱領

施設名社会福祉法人 清承会 特別養護老人ホーム 白扇閣
住所〒424-0201 静岡県静岡市清水区承元寺町1341番地
事業開始1979年6月7日
事業内容特別養護老人ホーム(定員190名)、ショートステイ(定員20名)、デイサービス(定員30名)、ホームヘルプサービス、居宅介護支援事業、興津川地域包括支援センター、介護福祉士実務者養成施設(定員20名)

※2022年12月現在 特別養護老人ホーム 白扇閣 ホームページより抜粋

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