私たちの働き方改革

2023/3

多職種連携の強化やケアの画一化を実現
全職員の目線を合わせ、”協働力”を育む

多職種連携の強化やケアの画一化を実現<br>全職員の目線を合わせ、”協働力”を育む

医療法人 志太会
介護老人保健施設 ユニケア岡部

左から
副施設長 支援相談員 小沼 克典さん
介護福祉士      小澤 星花さん
ケアマネジャー    小林 幸三郎さん
フロア長 介護福祉士 大鐘 昌広さん

静岡県藤枝市にあるユニケア岡部は、介護・医療・リハビリを通じて、在宅復帰を目指すケアを提供している介護老人保健施設です。当施設は、若手人材の確保と定着をテーマに取材した特別養護老人ホーム白扇閣 から「根拠のあるケアを実施している」と絶賛されており、特にケアプランは、介護福祉士養成施設の教師陣からも高評価なのだそうです。実際、ユニケア岡部では、それぞれの専門性がしっかりと生かされたケアプランが作成されており、密な多職種連携を実現されています。その秘訣とは……? 称賛が集まる当施設のお取り組みについてお聞きしました。

ご利用者の生活に寄り添い、「生活の質」を上げるケアを

小沼

医療法人 志太会の理念は、「地域を支え、地域で看取る」です。法人の母体である三輪医院が開業したのは1915年。地域を大切にすることを第一に、100年以上もの間、地域の皆さまの医療・介護を支えてきました。

大鐘

私は以前、特別養護老人ホーム(以下、特養)で働いていましたが、ユニケア岡部は他の介護老人保健施設(以下、老健)とは少し毛色が異なるように感じます。「地域で看取る」という理念にもある通り、最期まで看ることもありますから、特養に近い施設でもあると思います。

小沼

老健は、医療とリハビリをメインに在宅復帰を目指す施設ですが、私たちは何よりも利用者さんの「生活」を重視した介護の提供を目指しています。もう少し具体的にお伝えすると、「その人自身の暮らしの延長線上にある介護」です。利用者さんの日常生活のこだわりを、施設でも継続できるようにサポートしたいと考えています。そのために私たちは、「利用者さんの生活を自分たちの仕事にあわせるのではなく、利用者さんの生活に自分たちの仕事をあわせていく」という考えを大切にしています。ですから、施設としてもできる限り制限を設けず、食品・お酒・たばこなどの持ち込みもOKにしています。また、「できることを増やす介護」を行うことで、利用者さんの生活の質を上げていきたいと考えています。

▲副施設長の小沼さん

同じ目標をもつことで、ケアプランの在り方にも変化が

小沼

このような介護を実現するために大切にしていることのひとつが、施設としての目標を明確にし、それをきちんと共有することです。組織の上がぶれると、下もぶれてしまいますから、何を目指す施設なのかを明白にすることがまずは重要だと思います。そして、それらを現場に落とし込んでいくために、施設内研修の場で理事長や施設長が、法人・施設として目指す介護、目標、大切にしたいことを伝えています。先月は、YouTubeで部門長会議を配信したこともありました。こうして全職員の目線をあわせることで、同じゴールを目指して働いていけるのだと思います。

こうした取り組み、考え方が生かされているのが、ケアプランだと感じています。ユニケア岡部は特養に近い形ということもあり、数年前まで自宅に戻る方はほとんどいませんでした。そのため、昔はケアプランもどこか惰性的になっており、利用者さんに大きな変化がなければ、以前の内容をそのまま流用して貼り付けて、毎月同じような中身になっていたと思います。

小林

私はユニケア岡部で現場の仕事を5年行い、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)の資格を取得しました。ケアマネとして働き始めて4年目になりますが、ここ数年課題に感じていたのが、在宅復帰までのケアの流れが明確化されていないことでした。小沼も話した通り、そもそも自宅に戻られる利用者さんが少なかったこともあってのことですが、近年は在宅復帰を目指すことが必須になってきています。ケアプランの立て方や立てる際の視点も改めて考え直す必要があると感じていました。

「できることを増やす」という視点で、ご利用者をケアしていく

小林

ケアプランを考える際は「利用者さんの自宅での生活」をベースにアセスメントし、利用者さん、そしてご家族の思いを反映させながらケアの方針を立てていきます。意識しているのが、利用者さんができることを探すことです。ユニケア岡部では「利用者さんの生活の質を上げていく」ことを目指していますから、自宅での生活を施設でも再現できるようなケア、在宅に復帰できる状態、そのために行うべき自立支援策を検討していきます。

例えば、ご自宅で失禁してしまい排泄に困っているという場合は、施設にいる間に排泄形態をきちんと把握し、さまざまな排泄用品を試します。そうして自宅に戻った際に、利用者さんもご家族も排泄に対しできる限りストレスが少なくなるようにする。また、独居の方が自宅に戻った時に、自分で洗濯ができるように、施設で実際に洗濯機を回してもらい、干して、たたむまでできるかを試してもらう。心不全の治療中の方は薬の内服管理が必須となりますから、カレンダーを使って管理し、自分で飲めるかまで確認する、などです。その分現場の介護スタッフの負担は増えますが、利用者さんが自宅に帰るためには必要なことであることを伝え、取り組んでもらっています。

▲利用者さんの自宅を思わせる、多様なデザインが施されている個室の入口

▲ドアの先には、あたたかみあふれる個室が。
自分の部屋のように、好きにレイアウトできる

多職種の目線があっているからこそ、より質の高いケアプランに

小林

ケアプランの作成には、多職種連携が欠かせません。ユニケア岡部では、利用者さんが入所して約1ヵ月後に担当者会議を行い、在宅復帰ができるようであれば、利用者さん、介護・リハビリスタッフとともにお宅に行き、ご家族と一緒に利用者さんの自宅での動きを確認します。そこで、必要な在宅サービスを検討していく流れです。一方、在宅復帰が難しい方は、月1回の頻度で担当者会議を行いながら、3ヵ月を目途にモニタリングをしています。

月1の担当者会議には、必ず医師に参加してもらうようにしています。介護スタッフが先生と話せる機会はそうそうないですし、医師から、利用者さんの状況をケアプランに関わる全職種に共有できるメリットも大きいですね。

小沼

多職種連携においては、ことさらケアに関わる全職種の目線をあわせることがとても大切だと思います。「地域を大切にする」「在宅復帰を目指す」という法人の目標を共通認識としたうえで、小林を始めとしたケアマネジャーが、その方にあわせたケアの方向性を示してくれます。あとは、現場職員がその方向性にあわせて、それぞれの専門性を生かしながら利用者さんのケアに対応し、情報収集をしていきます。

大鐘

以前の職場だった特養では、家に帰る方がほとんどいないこともあってか、担当者会議はどうしても形だけで済んでしまうことも多かったです。ユニケア岡部では、職種は違えど「在宅復帰に向けて」という同じ目標でみんなが考え、しっかりと話しあえていると思います。

小澤

私は現在就職して1年目ですが、以前初めて担当者会議に参加しました。現場でしかわからない情報を他の職種の方に伝えられる貴重な場だと思いましたし、多職種ならではの視点も勉強になりました。

小沼

「在宅復帰」「生活の質を向上させる」という目標が明確になったことで、ケアを定期的に見直し、検証していくことの必要性を介護に関わる全職種が自覚できるようになったと感じます。「全職種で」よりよいケアプランを作っていくという流れができていると思いますね。

寝たきりのご利用者が在宅復帰できたことも!

大鐘

現場でもケアプランを活用しています。職員一人につき2~3名のご利用者を担当していますが、その職員にはケアプランの中から特に達成したいことを2つピックアップしてもらいます。担当している利用者さんのケアプランすべてを把握するのはなかなか難しいので、特にその方にとって重要だと感じるものをまずは2つ、という考えです。それを表で管理し、毎日できているかどうかを確認してもらっています。

また、3ヵ月に1回、担当者にケアプランを見直してもらい、プランに対する現状の達成度合いをケアマネジャーに報告しています。

小林

私は、ケアマネジャーの資格を取る前、介護スタッフとして現場に出ていたのですが、正直なところケアプランの大切さをあまり理解できていませんでした。実際、特に現場のスタッフにはそういう方も多いと思います。そうした中で、担当者会議の時に、医師が「ケアプランに則ってケアをしているのか」と全職種に向けて確認してくれることで、ケアの指針として立ち返ってもらいやすくなっていると感じます。

利用者さんに関しても、経管状態で入所された方が、自分でご飯を食べられるようになったり、車椅子だった方が安定して歩けるようになったり、寝たきりだった方が元気になって自宅へ帰ることができたこともありました。自宅に帰りたいという利用者さんが多いので、退所前訪問で久しぶりに自宅に帰った際に、ものすごく喜ばれている姿を見ると、やはり励みになりますね。

▲たっぷりと光が入るように多方面に窓も設置されているリビング。
各々がゆっくりと好きなことを楽しめる

職員の働きやすさも忘れずに、全職種で同じ目標達成を目指す

小沼

どこの施設でも、課題や不安は常につきまといますし、自信をもって利用者さんと向き合うことはなかなか難しいと思います。そうした中でも職員が少しでも自信をもてるようにするためには、先にお話した通り、まずは法人・施設の目標を明確にして、みんなの目線をあわせることが大切だと実感しています。そうすることで、全職種一丸となって利用者さんと向き合えるようになると思います。

そして「職員の働きやすさ」も忘れてはいけません。働く楽しさ、うれしさを感じながら仕事をしてもらえることが重要です。職員の働きやすさを実現するために、ユニケア岡部では職員一人ひとりの声に耳を傾けるようにしています。そのために、定期的に面談を行い、年に一回意向調査をして法人の満足度や異動希望部署などを聞いています。今回の意向調査でも、「もっとインスタグラムを活用した方がいい」という意見があったので、始めました。それがより活発な情報発信につながり、施設の認知度の向上や人材の確保などにもつながっていくのだと思います。

あくまでも主役は現場の職員です。彼らの声にこたえ実現していくことが、働き方改革にもつながっていくのだと実感しています。

 

 

多職種での交流にも活用! 職員専用の「ゆにカフェ」

24時間運営の「ゆにカフェ」には、コーヒーやアイス、カップラーメンなどが並び、スタッフの憩いの場として活用されています。照明やテーブルなどは若手の女性社員に選んでもらい、おしゃれで居心地のよい空間に。「ユニットケアだと、どうしても隔離された空間になってしまい、他部署と交流しないんですよね。今は新型コロナの影響で、一緒に食事をしたり、たくさん話すことが難しいのですが、新型コロナの前にはリハビリの担当者や看護師、介護職員がカフェでコミュニケーションをとっている姿をよく見かけました」(大鐘さん)

 

施設名医療法人 志太会 介護老人保健施設 ユニケア岡部
住所〒421-1131 静岡県藤枝市岡部町内谷1473-3
事業開始2003年
事業内容介護・医療・リハビリを通じ、在宅復帰を目指す介護施設
長期90部屋 短期10部屋(全部屋個室)、通所リハビリ、訪問リハビリ
※2023年3月現在 医療法人 志太会 ホームページより抜粋

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