近年、糖尿病などの生活習慣病患者や足のトラブルを抱える方の増加に伴い、医療現場では「足」のケアが重視されつつあります。患者さんやご利用者の「足の悩み」に寄り添い、フットケア能力の向上を目指すフットケア指導士は、今後ますます注目される資格だと言えるでしょう。現在、訪問看護師として働く巻幡学さんに、資格取得による業務内容の変化、スキルアップを感じたエピソードなどについてお聞きしました。
高齢患者の足トラブルの多さが、資格取得のきっかけに
4年制大学の看護学部を卒業後、小児の専門病院に新卒で就職しました。脳神経外科・耳鼻科・泌尿器科・整形外科の4科合同の病棟やPICUで経験を積み、気づけば6年が経過していました。このまま同じ病院で管理職を目指すか、後輩の教育に注力するか、小児の看護を極めていくか……。今後のキャリアを考えたとき、小児だけでなくさまざまな年齢層の患者さんの看護にも携わりたいと思い、4年前に現在の訪問看護ステーションへ転職しました。
ご高齢の患者さんをはじめとして、さまざまな年齢、疾患を看られるのではと考えたからです。また、最近は早期に退院し、後は自宅療養という流れが増えているので、今後訪問看護の需要はますます高くなると思ったことも理由の一つですね。
実際、現在は小児から高齢者、軽症だけでなく重症の症例にも対応しており、前職よりも看護の幅は広がったと感じています。
経験値を着実に積み上げていく中で、フットケア指導士の資格取得を目指したきっかけは何だったのでしょうか。
タコや巻き爪、冷え性やむくみなど、足にトラブルを抱えているご高齢の患者さんが圧倒的に多かったことです。しかし、いざこうした足の症状に対処しようとしたときに、自分が足のケアについてよく知らないことに気がつきました。資格を取得する前は、爪切り一つとっても医学的な視点をふまえた方法がわからず、ふんわりとした支援しかできなかったんです。足は、私たちの体と生活を支えてくれている大切な部位だからこそ、明確なケアができるようになりたいと思いました。足のケアについて調べていたところ、フットケア指導士の資格を見つけ、取得を決意しました。
知識のインプット⇔実例での確認で学びを深められた
通常だと、「認定セミナー(※1)」に参加した後、認定試験を受験します。ただ、私が挑戦した時期は、コロナ禍により対面セミナーではなくeラーニングで講義を受ける形でした。
eラーニングとなると、受講する場所や時間を選ばないので自由度が高いですよね。その分計画性が求められそうですが、勉強を進めるうえで何か工夫したことはありますか。
朝に必ず時間をつくるようにしていたことと、学習時間を定めすぎなかったことがよかったと思います。
僕は基本的に日勤なのですが、夜は疲れと眠気でどうしても講義内容が頭に入ってこなくて。ですから、朝5時頃に起きて20~30分の学習をコツコツと続けていました。とはいえ「1日30分は絶対勉強する!」と決めていたわけではありません。「なんだか今日は集中できないな」と感じたら5分でやめた日もありますし、逆に「今日は体が軽いな」「集中できるな」という日はしっかり学びに時間をあてるようにしていました。
よい意味で、自分に厳しくしすぎないことが継続につながったんですね。
僕自身勉強は苦手ですし、むしろ好きではありません(笑)。それでも続けられたのは、とにかく「知りたい」と思える分野だったからだと思います。例えば、「巻き爪の患者さんがいたな。どう対処したらいいんだろう」といった感じで、わからないことを検索して答えを得る感覚というか。僕の場合は「学びたい」というより「知りたい」という気持ちが学習の原動力になった気がします。
カリキュラムでは、足の疾患や治療法などフットケアに関して幅広く勉強していくのだと思いますが、特に印象に残っている学びはありますか。
特定の何かというより、実例と照らし合わせながら学べたことが印象的でした。巻き爪やタコといった症例のほか、透析治療をされている方の血流障害など、インプットした知識を現場ですぐに実例を確認できたことで、より学びを深めていけました。
※1 フットケア基礎知識および専門知識に関する計6時間の講義(1日)。受講後、「認定セミナー終了証」が発行されます
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