資格のチカラ

2022/11

摂食・嚥下障害看護認定看護師

認定看護師は、高度化し専門分化が進む医療の現場において、水準の高い看護を実践できると認められた看護師です。「摂食・嚥下障害看護認定看護師」は、摂食・嚥下機能の評価、食事の介助、口腔ケアなどにより、誤嚥性肺炎、窒息、栄養低下、脱水の予防に向けたリスク管理を行います。安全を保ちつつ食の喜びを提供することで、患者さんのQOL向上に寄与しています。

患者さんに食べる喜びを 摂食・嚥下障害看護認定看護師

国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院
資格取得年月:2019年8月

看護師

苫米地 麻美

摂食・嚥下障害看護認定看護師は、加齢や疾患によって食べる力、飲み込む力が衰えた患者に摂食・嚥下機能の維持向上、食事の介助、口腔ケアなどを行っています。整形外科病棟の看護師として働く苫米地麻美さんに、資格取得の経緯、認定看護師のやりがい、今後の展望についてお話をうかがいました。

高齢の患者さんの力になりたくて、資格取得にチャレンジ

摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格を取ろうと思ったきっかけを教えてください。

私が働いている整形外科病棟には、高齢の患者さんが多くいらっしゃいます。飲み込む力が衰えている方も多いため、食べ物や唾液などが気管に入って誤嚥性肺炎を引き起こさないよう、飲食を禁止される患者さんも。「お水をください」と言われても、飲ませてあげられないのが切なく、なんとか力になれないかと思っていました。そんな中、看護師長が摂食・嚥下障害認定看護師について教えてくれたんです。当時は入職56年目で、私も看護師としてスキルアップしたいと思っていたタイミングだったので、資格取得に向けて勉強を始めました。

資格取得のための勉強で、特に大変だったことは?

摂食・嚥下障害は、脳梗塞など脳の疾患により引き起こされることの多い障害です。脳、頭頸部、呼吸のメカニズムなど、整形外科病棟では馴染みのない領域について学ぶ必要があり、とても大変でした。他にも、体の機能やリハビリ、口腔ケアなど、学習範囲は多岐にわたるため、苦労しながら勉強しました。

仕事と勉強をどうやって両立させたのでしょうか。

仕事が終わってから、院内の図書室で1時間勉強していました。仕事終わりに長時間勉強すると、疲れてしまって翌日に響きます。無理せず、毎日コツコツ続けることを心がけていました。

栄養状態の改善により、患者さんの回復スピードが向上

現在は、どのような場面で資格を活かしているのでしょうか。

病棟で、摂食・嚥下障害の患者さん、低栄養の患者さんの食事内容を調整したり、食事ができるようにリハビリを進めたり、口腔ケアを行ったりしています。飲み込みやすいよう姿勢を整えるだけでも、患者さんがむせることなく食事できるようになるんです。

資格を取ったことで、患者さんとの接し方も変わりましたか?

今まで見えていなかった問題が見えるようになり、患者さんへの接し方も大きく変わりました。実を言えば、これまでは口腔ケアについてあまり意識していませんでした。でも、よく見ると「あ、口の中がずいぶん汚れていたんだな」「入れ歯ってこんなに重要だったんだな」と気づくことも。栄養状態が良くなることで、患者さんの調子もみるみる良くなり、あらためて摂食・嚥下機能の大切さを実感しました。

栄養サポートチームの一員として、多職種と連携して患者さんをケア

資格を取得したことで、業務内容にはどのような変化がありましたか?

資格取得後、院内の栄養サポートチームに加わりました。医師や薬剤師、理学療法士などがチームになって、患者さんの栄養状態改善、治療効果の向上のために情報を共有しています。整形外科以外の患者さんと接する機会も増え、退院した患者さんがどうすれば快適に生活できるのか、家族はどうサポートすればいいのかと、広い視点で物事を考えられるようになりました。

他職種と連携する機会が増えたのですね。

ほかにも、新人看護師向けの院内研修を受け持つことになりました。「摂食嚥下スキルアップコース」を担当し、希望者と一緒に摂食・嚥下に関する勉強会を行っています。認定看護師の資格を持たない看護師でも質の高い看護ができるよう、「このやり方ならみんなもできるよね」と食事の介助方法などを提案し、“つなげる看護”を目指すようになりました。

食べることは生きる意味

「この資格を取って良かった」と思うのは、どんな時でしょう。

患者さんの状態が良くなることが、一番の喜びです。当たり前のことですが、患者さんのつらそうな姿、ご家族が悲しむ姿はできるだけ見たくありません。でも今は、「食べられるようになってうれしい」「水がおいしいね」と声をかけていただく機会も増えています。資格を取ったことで、少しは患者さんやご家族の力になれていると実感できるようになりました。

苫米地さんが考える摂食・嚥下障害看護認定看護師の魅力を教えてください。

食べることは、人生の彩り、生きる意味です。こうした営みを手助けできるのが、摂食・嚥下障害看護認定看護師の魅力。低栄養の患者さんに何もしなければどんどん体が衰えていきますが、少し気に掛けるだけで格段に状態が良くなります。「看護の力って大きいんだな」と実感できる分野だと思います。

知識・スキルを身につけ、看護の力を発揮

今後、資格を生かして挑戦したいことはありますか?

今年、特定行為研修を修了したため、医師が作成した手順書により、診療の補助を行えるようになりました。脱水症状や低栄養の患者さんに輸液を投与するなど、患者さんの状態を見極め、タイムリーなケアの提供ができるようになったので、この資格を活かしてさらに患者さんの役に立ちたいと思います。

資格取得を検討している読者に向けて、メッセージをお願いします。

「勉強が大変そう」「お金がかかりそう」という理由で受験をためらっている方もいると思いますが、資格を取得して後悔することはありません。私も資格を取得したことで視野が広がり、より患者さんや同僚看護師の役に立てるようになりました。今までは「水が飲めない患者さんがつらそうで、なんとかしてあげたい。でも、ご高齢だし仕方がないか」とモヤモヤしていましたが、「こうすればいいんじゃないか」と前向きな提案ができるようになったことは大きな喜びです。看護の力を発揮できる知識やスキルが身につくので、迷ったらぜひチャレンジしてください。ただし、お金はかかるので、あらかじめ貯金をしておくことをお勧めします(笑)。

1日のスケジュール

8:00朝食時間に合わせて病棟ラウンド「患者さんの摂食状況を見てまわり、むせていないか、食事を柔らかいものに変えるべきか確認します。食べやすいよう姿勢を変えることも。食後は、歯磨きなどの口腔ケアを行います」(苫米地さん)
9:00リハビリ介助、資料作成「離床できそうな患者さんを車椅子に乗せるなど、忙しいスタッフのサポートをします。また、空いた時間には院内研修の資料を作成しています」
12:00昼食の介助
15:00栄養サポートチームの打ち合わせ「週に一度、医師、看護師、薬剤師などが集まり、栄養状態が気になる患者さんについて情報共有します。みんなで患者さんの状態を診て診療方針をお伝えしたり、口腔ケアが必要な患者さんについて他の病棟のスタッフに伝えたりする活動をしています」
17:00勤務終了
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趣味のヨガでリフレッシュ!

「不合格になったら恥ずかしいので、受験勉強をしていることは周囲に隠していました(笑)。研修が始まってからは、周りの看護師が応援してくれて、とても助かりましたね。勉強に疲れた時は、趣味のヨガでリフレッシュしました」(苫米地さん)


←愛用していたヨガウェア

取得方法・お問い合わせ

資格主催団体名:日本看護師協会
資格種類:日本看護協会 資格認定制度
受験資格:次の1~3の項目をすべて満たしていること。
1.日本国の看護師免許を有すること。
2.看護師免許を取得後、通算5年以上の実務研修を受けており、そのうち通算3年以上は特定の認定看護分野における実務研修であること。
3.A課程認定看護師教育機関若しくはB課程認定看護師教育機関叉は外国においてそれらと同等と認められる教育を修了していること。
ホームページ:日本看護協会 審査に関するご案内(認定看護師)

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