資格のチカラ

2022/9

感染管理認定看護師(B課程)

認定看護師は、高度化し専門分化が進む医療の現場において、水準の高い看護を実践できると認められた看護師です。「感染管理認定看護師」は感染予防・管理システムの構築、医療関連感染サーベイランスの実践、施設の状況の評価などを行います。2019年の認定看護師制度改正にともない、現在は特定行為研修を組み込んだ新たな認定看護師教育(B課程)がスタート。21の認定看護分野も再編され、19分野に統合されました。

コロナ対応の最前線! 感染管理認定看護師への道

(地独)東京都立病院機構 東京都立荏原病院
資格取得年月:2021年12月

看護師

伊藤 未恵

感染管理認定看護師は感染対策のスペシャリストとして、各病院でその知識と実践力を活かして対応に当たっています。2021年度には診療の補助を行うことのできる、新たな認定看護師も誕生。その一期生にあたる伊藤未恵さんに、資格取得の道のり、取得後の働き方、未来の展望についてお話をうかがいました。

感染管理認定看護師の資格を取ろうと思ったきっかけを教えてください。

私は荏原病院に入職し、1年目から感染症病棟に配属されました。それから23年してエボラ出血熱が流行し、当院でも受け入れ訓練をすることに。その時に陣頭指揮を執った感染管理認定看護師の姿がとても印象的だったんです。医師や他の看護師に対して「私はこう思います」とはっきり意見を言い、きびきびと働く姿にあこがれ、私も感染管理認定看護師になりたいと思うようになりました。

そこからすぐに準備を始めたのでしょうか。

 いいえ。4年目になり、副看護部長から「先代の認定看護師は手術室も経験していた」とうかがい、急遽手術室に異動になったんです。「感染症病棟の知識だけでは足りないので、もっと勉強しましょう」ということですね。そこから6年にわたって手術室の経験を積みました。

手術室の仕事から、どんなことを学びましたか?

一般病棟では、清潔/不潔の主体となるのは患者さんです。つまり患者さんが触ったものが不潔とされるのですが、手術室はその逆。患者さんに触れる滅菌されたものが、もっとも清潔ということになります。その違いを感覚的に理解するのが難しかったですし、それまでは内科系の感染症病棟で働いていたので、開腹手術、開頭手術に直面するのも驚きの連続でした。

救急外来から産婦人科まで、実務経験がない領域も幅広く学習

資格取得のための勉強で、特に大変だったことは?

感染管理認定看護師が学ぶべきことは幅広く、救急外来、小児科、産婦人科、集中ケア、無菌状態の患者さんをケアする移植病棟の感染対策など、これまでの経験からは想像もつかない知識と実践力が求められます。実務経験がない領域も多かったので、用語もなかなか理解できず、とても苦労しました。新興感染症への対応など、法律や学校保健法に関する知識も求められるため、参考書などを読みつつ必死で学習しました。

資格を取得するには、教育機関で約1年にわたって教育を受ける必要があります。伊藤さんの受講期間は、コロナ禍と重なり大変だったのでは?

荏原病院は、感染症指定病院として早期から多くのコロナの患者さんを受け入れてきました。そんな中、よく教育機関へ送り出してくれたと思います。研修扱いで学びに行くことができ、「病院に大切にされているんだな、頑張って資格を取って貢献しなきゃいけないな」と励みになりました。

自分の存在が、「感染管理」の意識向上につながる

認定審査に合格して感染管理認定看護師になられてから、病院の業務において、感染管理認定看護師の資格はどのように活かされていますか?

資格取得後、すぐにコロナ病棟で働くことになったため、感染対策について適切な助言ができるようになりました。それまでは、疑問が生じたら専従の感染管理看護師にその都度確認していましたが、その場で私がフィードバックし、現場の不安を解消できるようになったのは大きかったですね。また、私が感染対策の実践モデルとなり、「こうしなきゃダメなんです」と実際に手本を示す機会も増えました。

病院全体の意識向上にもつながりそうですね。

資格を取ったことで、「私が感染対策をしっかりしていかなきゃ」という意識も芽生えました。「マスクを正しくつけてください」と言い続けていたら、私と廊下ですれ違うだけで、鼻出しマスクの医師がしっかりつけ直すようになりました(笑)。さらに「ありがとうございます。でも、マスクの表面を触ったので手指消毒してくださいね」と言うと、「あ、そうか」とハッとした表情に。感染対策のマスコットキャラのように、私がいるだけで意識向上につながっているのかなと思います。

多職種と関わるようになり、人間的にも大きく成長

スキルアップを感じたエピソードを教えてください。

私は、特定行為研修を含むB課程の認定審査を受けました。特定行為には、抗菌薬の適正使用や提案も含まれます。独学で勉強するには難しい分野なので、感染症医の指導のもとで学べたのは大きなアドバンテージになりました。看護師は患者さん主体で物事を考えるため、抗菌薬を点滴している患者さんがいれば「早くやめさせてあげたい」と思いがちです。でも、抗菌薬への理解が深まったことで「今はまだ抗菌薬の点滴が必要だな。でも、こういう効果が出れば、内服薬に切り替えられそうだな」と提案にもつなげられるようになりました。

感染管理認定看護師の仕事に、どんな魅力を感じていますか?

資格を取ったことで、人との関わりが大きく広がりました。これまでは病棟勤務だったので病棟内の患者さんや看護師、医師と向き合っていましたが、今では他の科の感染対策について相談を受けたり、他の病院の感染管理看護師から情報を仕入れたり、より多くの職種と関わるようになりました。チーム看護・チーム医療の重要性を強く感じていますし、人間的にも成長させていただき、とてもありがたいですね。成長する機会って、なかなか得られるものではありませんから。

地域や他院と連携し、感染対策の協力体制を築きたい

今後、資格を生かして挑戦したいことはありますか?

資格取得に向けて実習を行った滋賀県の病院は、地域や他院の感染管理看護師とネットワークを形成していました。私も当院にとどまらず、地域の方々や大田区内の他院と連携を取りながら、感染対策の情報を提供したり、協力体制を築けるようになったりすればいいなと思います。

キャリアアップのために資格取得を検討している読者に向けて、メッセージをお願いします。

チャンスはいつ転がってくるかわかりません。転がってきた時にしっかりつかむには、常に心の準備をしておくしかないと思っています。私はコロナ禍の中で受験しましたが、その分いろいろな体験をさせていただきました。今コロナ対応にあたっているのも、すべてはご縁だと思っています。大変なこともありますが、少しでも楽しみながら資格取得を目指してください!

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先輩看護師から教わった参考書で、とにかく学習!

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