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私たちの働き方改革
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1978年の設立から、47年にわたって福島県郡山市の高齢者介護を支えてきた太田福祉記念会。同法人では、職員を「人的資本」ととらえ、職員に寄り添ったサポートの提供や人材育成を行っています。特に注目すべきは、新たな取り組みを実施する際に全職員にアンケートを取り、職員の想いや考えを拾い上げていること。職員ならではの視点で生まれた企画やサービスは、職員自身はもちろん、ご利用者にもよい効果をもたらしているといいます。ボトムアップでの施設整備を進める意義や成果についてお聞きしました。
<お話してくれた方>
社会福祉法人 太田福祉記念会
常務理事兼法人事務局長 猪腰 久子さん(中央左)
法人事務局 主任事務員 滝田 和弘さん(左)
特別養護老人ホーム玉川ホーム 主任事務員 安田 道さん(中央右)
特別養護老人ホーム玉川ホーム 介護長 長谷川 陽さん(右)
INDEX
猪腰
太田福祉記念会は、福島県郡山市内で、特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問介護などの計8つの介護サービスを提供しています。
私は、2011年に太田玉川デイサービスセンターの所長から特別養護老人ホーム玉川ホームの施設長に異動しました。これを機に、以前から模索していた「働きやすい職場づくり」に、より本格的に取り組もうと考えました。法人としても、施設の在り方をあらためて検討していた頃であり、職員が将来設計を描きやすくなるようにと、給与体系や研修内容の見直しなどに着手し始めていた時期でした。
当時は法人全体にトップダウンの組織文化があり、現場の声を拾い上げて何かを変えたりする流れはほぼなかったと思います。しかし私は、職員が自主的に施設づくりに関わることこそが、職員にとって本当に働きやすい職場をつくることにつながるのではと思っていました。職員が施設に何を求めているのか、どんな職場にしたいのか、どんなことがしたいのか。そんな意見を自由に出せる場が必要だと感じていたのです。
そこで、同年の2011年に「企画調査班」を新設。各事業所から意欲のある職員を選出し、法人全体の課題や改善策について意見を出し合える場をつくりました。さらに、全職員を対象としたアンケートをこの年に初めて実施しました。これを機に、ボトムアップでの施設整備が進んでいきました。
▲ボトムアップでの職場づくりを進めてきた常務理事兼法人事務局長の猪腰さん
猪腰
アンケートは新たな取り組みを始める前に行うことが多く、紙での記入式で、自分の意見に責任をもってもらうため、記名式で回収しています。初回は、職員の職場に対する要望を知ることを目的に実施しました。どんな職場にしたいのか、取り組みたい企画やレクリエーション、職場に欲しいものなどを聞きました。自分たちの要望が上層部に伝わり、さらに実現すれば、職員のやりがいや向上心によい影響が生まれるのではないかと考えたのです。初めてのアンケートでしたが、想像以上に多くの意見が集まったことを覚えています。
長谷川
アンケートをもとにいくつか新たな取り組みが始まりました。印象に残っているのは、利用者さんが行きたい場所に行く「お出かけ支援」です。目的をもったお出かけを支援する企画で、これまで、お墓参りや美術館に利用者さんと一緒に出かけたり、お寿司やラーメンを食べに行ったことも。日頃から利用者さんの要望を聞いていた職員だからこそ、提案できたアイデアだったと思います。これらの事業名は職員が考えて愛着のあるネーミングにしました。
猪腰
「わんこと遊ぼう」もアンケートから実現した企画です。定期的に犬と遊ぶ機会を設けたこの企画は、衛生面などを不安視してネガティブな意見もありましたが、動物と触れ合うことの効果を考え、実施に踏み込んだものです。認知症の方が穏やかになったり、「次はいつなの?」と楽しみにしてくれる方もいました。現在は、新型コロナウィルス感染症や訪問してくれていた犬の高齢化により実施していませんが、とてもよい企画だったと思います。
▲玉川ホームの介護長を務める長谷川さん
安田
2013年の玉川ホーム中央棟の改修工事の時にもアンケートを実施しました。今だからこそ採用して本当によかったと思っているのが、「感染対策のために必要」という意見をもとに、玄関に設置した手洗い場です。改修工事完了後、新型コロナ感染症が社会問題化しましたから、まさに先見の明でした。
▲景観の視点から当初は反対意見もあったという手洗い場。施設に入る前に手を洗えるので感染対策につながった
(写真提供:太田福祉記念会 特別養護老人ホーム玉川ホーム)
長谷川
完全個室でエアコン完備の仮眠室も、職員発案で設置されたものです。もともと夜勤の職員がゆっくりと休憩できる部屋がなく、介護員室にある小上がりのようなところで休んでいました。「静かな空間が欲しい」「プライベートに配慮されたスペースが欲しい」という要望が叶えられ、職員はとても喜んでいました。
安田
施設の中に、利用者さん同士やご家族でおしゃべりをしたり、くつろげる場所をつくりたいという職員の発想から生まれたのが「Café たまがわ」です。改修工事を機に、食堂スペースにカウンターキッチンを設けました。オーブンが使えるようにしてあり、お菓子づくりが得意な職員が中心になって手づくりスイーツやコーヒーを提供しています。コロナ前には、昔の友人と再会しておしゃべりを楽しむ姿も。現在も、利用者さんや職員の憩いの場としてCafé たまがわの活動は続いています。
▲Café たまがわの様子。コーヒーの香りが漂い、施設とはまた異なる雰囲気の中で会話を楽しめる空間に
(写真提供:太田福祉記念会 特別養護老人ホーム玉川ホーム)
滝田
お出かけ支援やCafé たまがわのような取り組みは、年度ごとに重点事業プランとして事業計画に組み込み、プロジェクトチームをつくって具体化していきます。
猪腰
チームは、企画調査班を中心に、企画を提案した職員や、企画内容に精通している職員、そして各事業所のメンバーで編成します。
滝田
プロジェクトにはできるだけ経営層にも参加してもらい、経営層と現場が意見交換できるようにしています。現場が重視していることと、施設を経営する側が重視していることを直接確認することできます。双方の考えの違いを埋めながら進めていくことで、お互いがより納得した状態でプロジェクトを形にしていけるのだと思います。
長谷川
現場の職員がプロジェクトメンバーに選ばれた際は、業務量や業務時間を調整します。利用者さんをケアする仕事と、プロジェクトの仕事どちらにも集中できる環境をつくることを大切にしています。
滝田
「一体感」も意識していますよね。どうしてもプロジェクトチームのみの動きになってしまいがちなので、いかにしてチーム外の職員を巻き込んでいくのかが難しいところです。チームの進捗状況や今後の予定をタイムリーに職員に共有するようにしているのは、チーム外の職員にもプロジェクトに興味や関心を向けてもらうことが狙いです。
また、重点事業プランに選ばれた企画は、毎年2月に行っている法人研究発表会の事業報告で発表してもらっています。自分たちが行ってきたことの振り返りにもなりますし、成果を発表する場を設けることは、モチベーションの維持にもつながると思います。
▲主任事務員としていくつものプロジェクトをサポートしてきた滝田さん
次のページ:膨大な意見の採用・不採用の基準とは
| 施設名: | 社会福祉法人 太田福祉記念会 |
|---|---|
| 住所: | 〒963-1303 福島県郡山市熱海町玉川字阿曽沢11-1 |
| 開設: | 1978年2月 |
| ホームページ: | http://www.ohta-fukushi.or.jp/index.html |
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