【イベントレポート】総勢731名の看護師が参加した「ナースまつり2023」
2023/10/31
みんなの広場
2026/8

2026年7月4日(土)、第13回目となる「PNS※1研究会」がJR福井駅前に位置する複合施設「AOSSA」にて開催されました。ケアコムは、医療・介護勤務環境ナッジ研究所代表の小池智子氏を講師にお招きし、ランチョンセミナーを共催。不確実性の高い医療・看護の現場に求められる「ゆとりマネジメント」についてお話しいただき、参加者の皆様に明日から実践できるヒントを持ち帰っていただきました。
※1 PNS®:パートナーシップ・ナーシング・システム®(Partnership Nursing System®)
講師 小池 智子氏
医療・介護勤務環境ナッジ研究所 代表。慶應義塾大学 看護医療学部/大学院健康マネジメント研究科 准教授。看護学博士。専門は看護管理・看護政策。慶應義塾大学病院で13 年間、臨床や現任教育に従事。東京医科歯科大学大学院博士課程修了後、慶應義塾大学看護医療学部専任講師を経て、2007 年より准教授。2026年より現職。

日々、予測のつかない急変や多様化するニーズへの対応に追われる看護の現場。目の前の業務に追われ、心の余裕をなくしてしまいがちな状況の中で、果たして安全で質の高いケアを提供し続けられるのでしょうか?
「組織の活力を生み出す『ゆとりマネジメント』」と題されたランチョンセミナーには、全国から集まった約300名の看護職が参加。講師の小池氏による「皆様はきっと、“ゆとりマネジメント”って何だろう? と思われたと思います」という、会場の心の声を代弁するような問いかけからセミナーは始まりました。
お弁当の箸を置き、メモを取る人も。ランチの時間さえ惜しんで、熱心に耳を傾ける参加者の皆様
看護の現場における「ゆとり」とは、決してサボることや楽をすることを意味するのではなく、「環境変化や新たな挑戦を支える重要な資産であり、維持すべき“バッファ(緩衝材)”」だと語る小池氏。脳の処理容量には限界があることにも触れ、余裕がない状態は判断力を奪い、組織の推進力を低下させると指摘します。
「アイデアを練り、複雑な問題を解決するには「思考の余白」が不可欠。これがないと、活力や推進力は生まれない。まずはその余白を生み出す仕組みをつくりましょう」と呼びかけ、会場の心を深くつかんでいました。
出典:ランチョンセミナー配布資料より
セミナー参加者にお配りしたお弁当
会場では、図版解説がふんだんに盛り込まれた50ページに渡るセミナー資料が配布されました
では、多忙を極める日々の業務の中で、どうやってその「思考の余白」を生み出せばよいのでしょうか。その鍵となるのが、行動経済学の「ナッジ」という考え方です。「ナッジ」とは、「人々が熟考すれば選ぶであろう行動のほうに、そっと背中を押すような働きかけ」のこと。無理なく自然に行動できるような業務・環境設計を行うことで認知の負荷が少なくなり、「思考の余白」を生み出せると小池氏は強調します。
例えば、医療廃棄物箱の内側の8分目辺りに赤いラインを引くことで自然とゴミの回収を促す工夫※2や、常時閉めておくべき清潔戸棚の扉の両側にキャラクターを貼り付けておき、扉を閉めるとキスするように見せるといった遊び心のある工夫※3など、明日から実践できるようなヒントをいくつも紹介。
「こうした現場の小さな仕掛けや工夫によって、あっという間に行動が変わることがあります」と小池氏。本人の意志力や努力に頼るのではなく、負荷の少ない業務・環境設計を行うことで「思考の余白」が生まれる。ゆとりある環境だからこそ、高い成果が目指せることを示しました。
※2 事例提供)慶應義塾大学病院「2022-2025年ナッジ研修報告書」
※3 事例提供)慶應義塾大学病院看護部(ナッジ研修会資料)
あっという間に過ぎた1時間。医療現場でのナッジ事例が豊富な講義内容に、会場全体が静かに引き込まれていました
自然に行動できる業務設計は、後輩育成やPNSのパートナーシップにも生かせるのでしょうか。この疑問に対しても小池氏は、「教えるときに認知的な負荷をかけないことが大切。例えば、一度に伝える内容は最大3つまでに絞ってください」とアドバイス。数を限定的にし、確実にできることから進めることもナッジ的なアプローチだと説明しました。
最後に小池氏は「負担をかけずに職場のみんなの行動を後押しする楽しい取り組み方法ですので、ナッジをぜひ使ってみてください」と呼びかけ、セミナーは大きな拍手の中で幕を閉じました。
「3つまで」のナッジは患者さんに対しても同じ。特に高齢の患者さんに何か協力をお願いするときは、「今日はこの3つをパーフェクトにしましょう」と、わかりやすい声がけがベスト!
小池先生、おつかれさまでした! 会場では時折なごやかな笑いが起こりつつも、皆さん、深く頷きながら最後まで耳を傾けていましたね。
そして先生に質問です。自分たちの現場に合ったナッジのアイデアは、どのような視点をもって考えたらよいのでしょうか?
小池 智子氏
実は私たちの社会環境の中では、既にたくさんのナッジが使われています。例えば、幼稚園のお片付けエリアに「きれい好きなぞうさんのコーナー」などと名前を付けると、園児たちはそこに自然と片付けるようになりますよね。病棟の車いす置き場も同じように工夫することで、使ったあとみんなが指定場所に置くようになって、看護師さんたちもノーストレスに。エネルギーを使わずに済むんですね。ポイントは、「みんなにとって負担にならず自然に行動できる仕掛け」を考えるとよいですよ。
PNSはとてもよい仕組みです。パートナーシップを取ること自体が目的化してしまうとすごく残念ですので、ナッジでゆとりをもってもらい、みんながワクワクしながら創造的なパートナーシップに取り組めるとよいですね。
本日はありがとうございました。セミナーの中で特に印象に残ったお話についてお聞かせください。
福井大学医学部附属病院 副病院長・看護部長 諏訪 万恵氏
PNSはもちろんですが、どのような看護体制であっても、「ゆとり」をもって仕事をすることはとても大切なことだと思います。物価高などで経営も厳しい中、多職種で連携して病院の回転率を上げようとすると、どうしても現場の「ゆとり」は削られてしまいます。空いた時間も急患やトラブル対応に追われるのが今の現実だからこそ、「ゆとりマネジメント」は看護部だけでなく、組織全体で取り入れていかなければならないと深く感じました。
本日は看護師長さんなど看護管理者の方が多く参加されているので、小池先生のお話をどう受け止めて、今後の病棟運営を考えてくれるのか楽しみでもあります。
ケアコムさんは、全国の病院さんと現場改善に一緒に取り組んでおられ、当院でも長年にわたりナースコールとスマートフォン連動等においていろいろとサポートいただいております。本日はランチョンセミナーを共催いただき誠にありがとうございました。
| セミナー名 | 第13回 PNS研究会 ランチョンセミナー |
|---|---|
| 開催日 | 2026年7月4日(土) |
| 場所 | AOSSA(アオッサ) 8階福井県県民ホール |
| 開催概要 | 第13回PNS研究会 |
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