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2017/6

専門外来の外でも支援を。チームで依存を断ち切る禁煙指導(後編)

「緩やかな自殺」とも言われているほど、喫煙は健康被害が大きなものです。禁煙治療は、医師・看護師だけでなく、薬剤師や歯科医師、予防分野を担う保健師などを含めた多職種で、各職の専門性を活かして協働で取り組みを進めていくことが重要です。禁煙指導の方法やナースが禁煙にかかわる意義などについて、日本禁煙学会 理事の久保田 聰美氏にお話をお聞きしました。

久保田 聰美

一般社団法人 日本禁煙学会 理事 / 高知県立大学 健康長寿センター 特別研究員 / 医療法人須崎会 高陵病院 教育顧問

禁煙外来でもっとも重要なのはコミュニケーションスキル

前編はこちら

禁煙外来では、実は特殊な活動や技術が必要になるわけではなく、看護の基礎教育の一つである「対象の理解」を強く求められます。これは禁煙のみならず、 禁煙だけでなく、「食育」や「保健教育」などの健康にかかわる社会的な活動支援をする上では必須のスキルです。

禁煙外来では、患者さんの社会的環境を看て、生活スタイルに合わせた治療方針を固めていきます。最も大切なのは、患者さんとの会話の中で、適切な質問や聞き返しを行いながら信頼関係を築き、患者さんの心を引き出すことです。喫煙習慣の状況だけでなく、患者さんがどのような環境にあり、周囲の人々とどうかかわっているのかという情報は、治療のための重要なヒントとなります。
例えば、親戚に子どもができた、友人ががんになったなど、周囲の人々の変化によって、禁煙を決意する人は少なくありません。患者さんから目的を引き出し、それを中心に据えた治療方針を考えます。禁煙を続けるためのモチベーションアップの手段は、こうした情報の中から見いだせるのです。

このような対象者の生活をアセスメントし、ご自身のセルフケア能力を重視する 治療手段を探っていくことに魅力を感じ、禁煙外来で働くナースも実は少なくありません。禁煙指導の面白さを、もっと多くの看護職に広めていけたらと思います。

禁煙支援の技術は「看護そのもの」

正しい禁煙をして、ニコチン以外のものにも依存しない生活を送るためには、地域の病院が地域とともに患者さんを見守る環境をつくっていくことが理想です。みなが生きやすい地域づくりを行うことが、地域包括ケアの一端です。喫煙者VS非喫煙者の構図から 喫煙者を排除する社会にはしたくありません。 禁煙支援にかかわる看護職 には、患者さん本人を看るだけでなく、もっと広い視野を持ち、地域全体を意識してほしいと思います。
これまでは「病院丸ごと禁煙指導チーム」として、院内の各職種がそれぞれの得意分野を活かし、患者さんをサポートしてきましたが、今後は「地域丸ごと禁煙指導チーム」として、喫煙の予防分野を担当する保健師や、看護協会、行政などと連携しながら、体系的な広がりをつくり、地域での禁煙指導の底上げをしていきたいと考えています。そのためには、職種や組織を超えたタテ・ヨコ・ナナメのつながりの強化を進めていかなくてはなりません。

私は、禁煙支援は看護そのものだと思っています。
「タバコを吸う」という行動がその人や周囲の人々の「いのち」を脅かすものであるにも関わらず、なぜその行動をとり、そしてそれを容認する人々がいるのか、当事者の心理状態とその人を取り巻く環境を冷静に見つめる視点こそが、看護のアセスメントの視点なのです。患者さんや利用者さんそして地域住民の方とのコミュニケーションを通じ、健康問題だけでなく、その背景の社会全体へ視点を広げていければ、看護の「シンカ(進化・深化・深化・新化)」を実感することができるでしょう。

 

禁煙支援の認定制度

日本禁煙学会では、学会員向けに禁煙指導にかかわる認定を行っています。

  • 禁煙サポーター

    禁煙指導ができる日本禁煙学会会員。学会指定講習会を受講で認定。

  • 日本禁煙学会 認定指導者(認定指導医、認定指導看護師など)

    禁煙学を背景にEBMに基づいた禁煙指導ができる日本禁煙学会会員。試験で認定を行い、5年ごとに更新。

  • 日本禁煙学会 認定専門指導者(専門医、専門看護師など) 

    高度な禁煙学の知識をもとに禁煙指導ができる日本禁煙学会会員。試験で認定を行い、5年ごとに更新。

詳細は、日本禁煙学会のWebページをご確認ください。
http://www.jstc.or.jp/modules/certificate/index.php?content_id=1

久保田 聰美

一般社団法人 日本禁煙学会 理事
高知県立大学 健康長寿センター 特別研究員
医療法人須崎会 高陵病院 教育顧問

【略歴】
1986年
高知女子大学家政学部看護学科卒
1986年
虎ノ門病院入職
2004年
近森病院入職
2007年
同院看護部長就任
2014年
高知県立大学看護学部 看護学研究科 特任准教授
2015年
株式会社ぺーす代表(訪問看護所長)
2016年
高陵病院教育顧問
2017年
高知県立大学健康長寿センター特別研究員

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