今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第183回 2018/07

2018年度に大きく動き出す認定看護師制度の再構築

国が地域を基盤とする「地域包括ケアシステム」へと大きく舵を切るなか、人々の医療・介護ニーズは多様化・複雑化しています。今後、地域が求める看護職の姿はどのように変化していくのでしょうか。2017年6月に日本看護協会会長に就任した福井トシ子氏に、就任後の一年を振り返ったご感想と、今年度から大きく動きだす「認定看護師制度の再構築」などについて詳しくうかがいました。

公益社団法人日本看護協会 会長
福井 トシ子 氏

公益社団法人日本看護協会

日本看護協会が目指す方向性を、現場の看護職と共有していきたい

1946年に設立された日本看護協会は、現在73万人以上の看護職が加入し、47都道府県協会と連携・協力して活動しています。2017年度は、次年度にスタートする診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のいわゆる「トリプル改定」や、日本看護協会の創立70周年など大きな節目を迎え、非常にめまぐるしい一年となりました。
 
私が会長就任以来、常に意識してきたのは、本会の意義や目指す方向性を現場で働く看護職に広く知ってもらい、会員の皆さんとともに行動していくということです。昨年度は、「生きるを、ともに、つくる。」というタグライン(企業・団体が社会に果たす内容や約束する価値を簡潔な文章・言葉で表現するもの)を作成したり、機関紙「協会ニュース」や公式ホームページでの情報発信することで、私たちが目指すビジョンを、少しずつ皆様と共有できるようになってきたと感じています。
 
しかし、一方で私たちが年度ごとに表明している政策、各事業を「自身のこと」として捉えている看護職は、まだまだ多くないという現状があります。2018年度も引き続き、日本看護協会全職員と一致団結しながら広報活動に注力していきたいと思います。

新たな認定看護師制度で、時代に合ったプロフェッショナルを育てる

本会では今年度、「看護教育制度の改革の推進」「地域包括ケアにおける看護提供体制の構築」「看護職の働き方改革」「看護職の役割拡大の推進と人材育成」の4つの重点政策を掲げています。これらは団塊世代が後期高齢者となる2025年を見据えて作成した、「看護の将来ビジョン」を具体的にアクションに落とし込んだものです。
 
今年度、大きく動き出す事業に「看護職の役割拡大の推進と人材育成」内のひとつ、「認定看護師制度の再構築」があります。日本看護協会では、2020年度を目処に、特定行為研修を組み入れた、新制度による認定看護師教育をスタートすることにしました。
 
特定行為とは、医師または歯科医師の判断を待たず、手順書に従って一定の診療の補助を行うための制度です。現在、1万8,542人(2018年6月現在)の認定看護師があらゆる分野で活躍していますが、認定看護師制度がスタートしてから20年、人口構造の変化に伴って看護職が必要とされる場はもはや病院だけにとどまらなくなっています。特定行為研修のスタートは、地域そして在宅、さらには学校といった「暮らしの場」での医療サービスの提供という社会のニーズに、現行の認定看護師教育では補いきれなくなっているという背景があります。
 
これまでのように看護師個人がスキルアップしていく時代ではなく、臨床推論と病態判断ができ、自立的で実践力のある看護師集団として成長することが求められているのです。特定行為を認定看護師が行えるようになる意義は計り知れません。今後は、現行の21分野の再編や更新審査を含め、皆様から広くご意見をいただきながら検討を重ねていきます。

看護管理者と統括保健師の連携で「全世代型の地域包括ケア」を実現する

こうした社会の変化に伴い、あらゆる場所で働ける看護職の育成が求められる今後、キーパーソンとなるのは「看護管理者」です。2025年、そして2035年を見据えたとき、必要になるのは医療・福祉機関の「統合」だと言われています。これからは看護職以外の介護や福祉で活躍する方々とも手を組んでいくことが必要です。看護職の「協働する力」を強化する必要があります。
 
看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)では、「協働する力」「意思決定を支える力」「ニーズをとらえる力」「ケアする力」の4つのコンピテンシーを強化し、「実践力を鍛える」ことに特化した、教育を推進しています。看護管理者には、これらをバランスよく備えた看護職を輩出し、院内外に送り出していくことが期待されています。
 
また、看護管理者自身も地域へと出ていくことが求められます。今年度の重点事業には、「看護管理者及び行政保健師の機能強化と連携の推進」を入れました。私たちが掲げる「全世代型の地域包括ケア」を実現するには、自治体側で働く行政保健師と、医療機関・施設の看護管理者が、相互に地域内の課題を共有し、ケア体制の整備を協働ではかっていく必要があります。
 
院内だけでなく地域を見据えたマネジメントが自らの役割であることを看護管理者に改めて定義づけ、今後は、これまで医療機関任せになっていたマネジメントラダーを日本看護協会で整備していきます。今後、看護管理者と行政保健師の双方の役割を明確にし、相互に連携していける体制づくりが本格的に始まるのです。
 
後編では、2018年度の「看護職の働き方改革の推進」について、日本看護協会としての考えをお伝えします。

福井 トシ子 氏

【略歴】
2005 年3 月 国際医療福祉大学大学院博士後期課程修了
東京女子医科大学病院、杏林大学医学部付属病院総合周産期母子医療センター師長、
同院看護部長などを経て、2017年6月から現職

【役職】
公益社団法人日本看護協会 会長

【資格】
看護師、助産師、保健師、診療情報管理士、経営情報学修士、保健医療学博士
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