今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第185回 2018/09

病院の成長に欠かせない経営計画を院内が一体となって策定する意義とは(前編)

青森県立中央病院は、県に一つしかない県立総合病院として、これまで高いクオリティを維持しながら高度・専門医療を提供してきました。しかし、平成28年の青森県地域医療構想の策定を機に、病院のあり方にも大きな変化が起こります。こうした常に起こる時代の変化に対応するため、青森県立中央病院では4年ごとの経営計画を策定し、現在まで病院経営を行ってきました。時代のニーズに合わせて変革を続ける病院の成長プランについて、院長の藤野安弘氏にお話しをお聞きしました。

青森県立中央病院 院長
藤野 安弘 氏

青森県立中央病院

県全体の高度な医療提供体制を維持しながらも
地域医療の継続性の要でもある病院


図1 青森県の二次医療圏と青森地域
青森県立中央病院は、昭和27年4月に病床数115床で開院し、現在は一般病床679床、感染症病床5床の規模まで拡大しました。開院当初からの当院の使命は、県に一つしかない県立総合病院として、青森県全域を対象とした高度・専門医療を提供すること。全国的に見ても引けを取らない高いクオリティを維持し続けてまいりました。しかし、平成28年の青森県地域医療構想の策定以来、当院のあり方も大きく変わり、地域医療の支援も当院が果たすべく重要な役割として加わりました。
 
このことについて、私はよく「面を見ながら点を見る」ということだとお話ししています。「面」は、今までの当院の役割のことで、県全体の高度・専門・政策医療の提供を指します。「点」は、青森地域(青森市、平内町、外ヶ浜町、今別町、蓮田村)における(図1)、地域により密着した医療の提供を意味しています。我々は、青森県全体の高度な医療の提供を維持しながら、青森地域における医療・介護の継続性を意識した医療提供体制も構築していかなければならないという、非常に難しい立場の病院になっているわけです。
 
こうした、常に起こる時代の変化に対応するためには、医療提供体制の抜本的な改革と経営基盤の強化が必要です。そこで当院では、平成19年から4年ごとに経営計画を策定し、これに基づき病院運営を行うこととしました。初年度には「県立病院改革プラン」を策定し、具体的な取り組みとして地方公営企業法を全部適用しました。また、改革プランを立ち上げた最大の目的である、5疾病・5事業に対する医療提供体制の構築において、平成20年に「がん診療センター」「循環器センター」「脳神経センター」を開設し、平成22年には「糖尿病センター」を本格稼働させました。改革プラン最初のときでしたから、外来も病棟もなにかと慌ただしかったので、各センターの整備は4年くらいかかりましたね。
 
続く平成23〜26年を計画期間とする「県立病院新成長プラン」では、平成23年に「新救命救急センター」の稼働、ドクターヘリの一部運用を開始、平成24年には「地域医療支援病院」として承認され、平成26年にMRI棟の新設を行うなど、地域貢献、医療機能の充実、経営システムおよび施設インフラの進化を柱に病院運営を進めていきました。

果たすべき役割を認識しながら
地域医療に力を入れる第2期新成長プラン

現在は、今年度が最終年となる「県立病院第2期新成長プラン」の真っただ中です。高度急性期病院としてより質の高い医療提供を目指し、医療機能の向上、経営基盤の強化に向けて取り組んでいます。具体的にはかなりの項目がありますが、やはり地域医療には、院内全体で非常に力を入れています。
 
平成26年に開設した緩和ケアセンターには緩和医療課を設置し、在宅緩和ケアの支援を推進しています。例えば、「在宅緩和ケアマップ」(図2)の作成。患者さんとそのご家族が、住み慣れた自宅で療養生活が送れるように、地域の医療機関のご協力を得てネットワークを構築しました。診療所や介護・福祉施設はもちろん、訪問看護ステーション、訪問リハビリテーション、訪問歯科、調剤薬局などともスムーズな連携を実現できる体制を整えています。
 
そしてもう一点、青森県では県内の複数の医療機関や診療所を結んで情報を共有する「あおもりメディカルネット」(図3)を活用しています。当院も情報提供医療機関として参加しており、電子データ上で患者情報のやりとりを行っています。昨年度からは、電子カルテシステムのデータも閲覧できるようにしました。
 
その他、以前に導入した手術支援ロボットの「ダヴィンチ」や念願のPET‐CTなど、高度な医療を提供するための最先端の医療設備も備えており、特殊な分野を除けば大学病院並みの機能を付帯している病院に変わりつつあります。
また、そうした地域との密接な関係を保つために、医療連携部にはかなりの人員を投入することも試みています。医療連携部自体は以前からありましたが、地域医療支援病院に承認されたのを機に、機能をより強化しようと進めてきました。そして、医療機関の連携といえばパスがありますが、パスの運用もここのメンバーが中心となって、切れ目のない医療の実現のために日々奮闘しています。特に、当院はがん地域連携パスの活用が全国的に見ても多いため、連携する医療機関とのやりとりが非常に活発に行われています。


  • 図2 「在宅緩和ケアマップ」。病院ホームページでは、連携施設が検索できる

  • 図3 院内掲示用ポスター。「あおもりメディカルネット」の参加機関では、ポスターやリーフレットなどのツールで患者への利用を呼びかけている
藤野 安弘氏

昭和54年弘前大学医学部医学科卒業、平成11年青森県立中央病院に入職。医療局長、副院長を経て、平成28年、医療の質総合管理センター長、循環器センター長兼任で院長就任、現在に至る。得意分野は、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患一般、特に冠循環動態。
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