今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第232回 2022/08

地域が抱える問題を“面”で捉え 医療や教育と連携して細やかな支援を(前編)

地域貢献のために社会福祉法人ができること、すべきこととは――。社会福祉法人 福音会では、介護人材の育成や子ども食堂、認知症カフェなど、さまざまな地域貢献活動を、近隣の大学や、町田市社会福祉協議会、町田市子ども家族支援センター、町会などと連携し、精力的に行っています。「社会福祉法人は、時代によって変化する地域のニーズを捉え、応えていくべき」と語る奈良高志氏に、地域貢献における視点や、これからの社会福祉法人の役割についてお聞きしました。

取材日:2022年5月

社会福祉法人 福音会 理事長
奈良 高志 氏

社会福祉法人 福音会

「仕える心 担う心 感謝の心」を大切に
高齢者支援、地域貢献に従事


社会福祉法人福音会は、医療法人財団福音医療会を母体として1982年に設立されました。福音医療会は、戦後間もない1947年、日本基督教団社会部が、当時のアメリカ軍の兵舎を借り、引揚者や生活困窮者、戦災孤児に対して無償で医療を提供したことからスタートしました。やがて世情が安定し、国民皆保険制度が定着したことから、今度は医療だけでなく高齢者福祉のために力を尽くすことに。そこで福音会を発足し、町田市に事業所を構えました。現在は町田地区、文京地区、練馬地区で計26事業所を運営しています。
 
福音会では、キリスト教精神である「隣人愛」に基づき、「仕える心 担う心 感謝の心」を理念に掲げています。「仕える心」は、おごらずへつらわずに相手を支える心。「担う心」は、利用者の生活課題やニーズをくみ取る心。「感謝の心」は、チームケアの原点でもあるスタッフ同士が感謝し合う心です。仕事を通じて三つの心を体現することが、社会福祉法人の公益性、ひいては地域貢献にもつながっていくと考えております。

地域の公益活動は
社会福祉法人の根幹をなす取り組み

2016年に改正された社会福祉法では、社会福祉法人の「地域における公益的な取組」実施に関する責務規定が定められました。これは、社会福祉法人は事業継続に必要な財産を控除したうえで社会福祉充実残額を明確化し、その利益の一部を社会福祉事業や地域公益事業などに還元するという制度です。
 
とはいえ、社会福祉充実残額がプラスになる社会福祉法人は、全国で約1割にすぎません。それほど、経営状態は厳しいのです。
 
それでも社会福祉法人は、地域のさまざまなニーズに応えるべきだと考えています。そもそも社会福祉法人は、国の制度では対応できない課題に対し、細やかな支援を行う非営利組織です。一見すると見過ごしそうな隙間に入り込み、先駆性や開拓性をもって地域貢献活動のきっかけをつくる。それこそが、社会福祉法人の役割ではないかと思っています。

訪問型サービスや子ども食堂など
幅広い世代に向けた地域活動を実施


▲事務所の廊下の壁一面に掲載されている子ども食堂「ふくちゃん食堂」の取り組みの様子
こうした思いのもと、福音会ではさまざまな地域貢献活動を行っています。1983年には、町田市の委託事業として、市内で初めて高齢者在宅サービスセンター事業を開始しました。当時としては珍しい訪問型サービスに取り組み、入浴介助だけでなく、布団をお預かりして乾燥するサービスも実施していました。また、少子化により福祉・介護の人材が減少することを見越し、町田市、町田市高齢者福祉施設運営協議会、町田市社会福祉協議会と連携して町田市介護人材開発センターを設立。全国でも一、二の早さで、介護人材の育成にも取り組んできました。当初より、福音会のスタッフを派遣するなど、法人としても一体的に関わっています。
 
男性を対象とした料理教室も好評でした。一人暮らしの高齢者が増えていく中、男性も食事を作れるようにならなければ、自立した生活を送れません。そこで管理栄養士がチームを作り、地域の集会所で料理教室を開いたのです。
 
その後、この取り組みは、子ども食堂へと受け継がれていきます。地域のニーズについて町会役員と話し合ったところ、議題に上がった取り組みでした。当初は福音会の施設で食事を提供していましたが、2017年からはより子どもたちが通いやすい場所で、本格的に子ども食堂を運営しています。

近年は、町田市を本拠地とするサッカークラブ「FC町田ゼルビア」の食堂「ゼルビア×キッチン」で、地域の方々とお茶を飲みながら認知症への理解を深める「認知症カフェ」を開催しました。ゆくゆくは、選手たちにもPRに加わっていただければ、市民にとって何よりの認知症への理解促進になります(※)。
 
こうした取り組みにより、スタッフの意識も変わりつつあります。私が理事長に就任した2019年当時、将来のビジョンを描くことが苦手なリーダーたち、事業所をどのように運営していきたいかわからないスタッフも少なくありませんでした。福音会の存在意義、自分たちの活動基盤を一人ひとりが理解できなければ、事業を発展させることはできません。地域貢献活動に関しても、トップダウンで取り組みを行うのではなく、スタッフの意見や思いを吸い上げることで意欲的に取り組んでいます。今後も、地域の方々やスタッフと協働で目指すべき未来像を探っていきたいと考えています。

※2022年7月で、「ゼルビア×キッチン」での開催は終了。別会場での開催準備が進行中。

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後編では、昨今の地域課題やどのような視点で地域のニーズを捉えていくかをお聞きしました。

奈良 高志氏
 
明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業。日本総合研究所「通所介護計画」セミナー講師を務めるなど、全国各地を回り、利用者主体の通所介護計画普及に尽力。これまでに在宅サービスセンター長、施設長、法人本部管理統括(いずれも他法人)等を務め、2019年より現職。
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