インカム活用による労働環境のDX化で、記録時間の短縮や入居者との時間創出を実現
2024/11/29
私たちの働き方改革
2024/4
<お話してくれた方>
右から
産科新生児科病棟 周産期統括マネジャー 黒川 寿美江さん
外来Ⅲ ナースマネジャー 深山 香代子さん
経営企画課 アシスタントマネジャー 八木 貴裕さん
(2024年3月時点)
「患者中心の質の高い医療サービスを提供する」ことをミッションとし、医療・看護分野で革新的な取り組みに挑戦し続けている聖路加国際病院。その一環として2023年にスタートしたのが、産科でのスマートフォン(以下、スマホ)の活用です。妊婦への情報提供や母親学級の予約業務を電子化・自動化し、看護師の業務効率化はもちろん、妊婦の利便性向上や印刷経費の削減も実現しました。この取り組みが高く評価され、日本看護協会が主催する「看護業務の効率化 先進事例アワード 2023」で最優秀賞を受賞しています。看護師の黒川さん、深山さん、そしてプロジェクトマネジメントを担当した経営企画課の八木さんに、取り組みによる効果や業務のICT化を進めるポイントをお聞きしました。
八木
当院では、数年前から、「ICTを活用した業務改善の推進」を院内方針として定め、業務のICT化を進めていました。最優秀賞をいただいた取り組みのきっかけとなったのは、ベンダーさんからスマホのコミュニケーションアプリを活用したシステムをご提案いただいたことです。
黒川
私たちはこのシステムを使って妊婦さんへの情報提供と、母親学級の予約システムの構築に取り組みました。
八木
取り組み先として産科を選んだ理由はふたつあります。ひとつ目は、妊婦さんの年齢層は、コミュニケーションアプリを使い慣れている方が大半であると考えたこと。ふたつ目は、妊娠~出産までの約10か月の間、妊婦さんへ定期的かつ継続的な情報提供が必要であることです。こうした理由から、このシステムは産科での活用が最も効果的だと判断しました。
深山
私は産科外来を担当していますが、現場としても妊婦さんへの情報提供や母親学級の予約管理が電子化できることは願ったりかなったりでした。というのも、以前はどちらも紙ベースで運用していたので、看護師の業務がかなり煩雑化していたのです。また、母親学級の予約には来院していただく必要があり、妊婦さんへの負担が大きいことも課題でした。
黒川
産科での実施が確定し、医師や薬剤師、病院の事務方などの他職種で構成されたプロジェクトチームが発足しました。2022年7月から本格的に取り組みがスタートし、2023年5月にはコミュニケーションアプリによる情報配信を、7月にはシステムからの予約受付を開始しました。
▲産科病棟マネジャーの黒川さん
黒川
まず取り組んだのが、コミュニケーションアプリによる情報配信です。以前の情報提供の方法は、妊娠初期から出産までの過ごし方や注意事項などを母親学級テキストや口頭で説明していました。突発的なお知らせなどは紙にまとめ、それをプリントしてお渡ししていました。
深山
母親学級テキストは厚みがそれなりにあり、自分でページをめくって情報を探さなければなりません。そうなると、どうしても忙しさなどから読まない方がいらっしゃるのが気になっていました。
また、紙のテキストの大きな問題点が内容の改訂です。従来は大量印刷した在庫を使用する必要があったため、改訂は基本的に年に1回しか行えませんでした。すぐに更新しなければならない情報は、プリントを作成して印刷し、テキストに挟んだり配ったりして対応していました。タイムリーな情報更新がしづらい仕組みだったと思います。
▲外来Ⅲ ナースマネジャー 深山香代子さん
黒川
コミュニケーションアプリでは「必要な時期に必要な情報を届ける」というコンセプトのもと、主にふたつの情報を配信しています。ひとつ目は、妊婦さんの週数に合わせた情報です。内容は母親学級テキストからの抜粋で、例えば16週目の方には16週目の時に必要な情報が自動的に配信される仕組みになっています。
深山
この配信は妊婦さんからも好評で「配信のおかげで、自分が今何週目なのか気づけた」という声も多くいただきました。また、内容に関してかなり具体的に質問してくださる方もいらっしゃり、届いた情報を読み込んでくれていることを以前よりも実感しています。さらに大きな課題だった改訂も、今はタイムリーに、かつ簡単に行えるようになり、母親学級の担当者は「かなり業務が楽になった」と話していました。
黒川
もうひとつ配信しているのが、季節性や突発性のある「病院からのお知らせ」です。これは他職種にも協力してもらい、分担して内容を作成しています。例えば、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に関することは感染管理のスタッフ、食事による体重管理に関することは栄養士さんの協力を仰いでいます。
深山
妊婦検診では、例えば冬にはインフルエンザの予防接種のこと、春先には花粉症のことなど、季節ごとに妊婦さんからの質問内容が決まってくるんです。今まで季節に関するものや突発的なお知らせは外来でプリントにして配っていましたが、すべて配信に切り替えています。内容を作成する業務は同じですが、プリントする必要がなくなり、印刷費の削減にもつながりました。年間1,560件印刷していた母親学級テキストも廃止されたため、結果的に年間約45万円の印刷費の削減に成功しています。
黒川
これらの情報は、説明文のようなテキストベースのほかPDFファイルや動画もあります。動画は新規で作成したものもありますが、母親学級で利用していた既存の動画をブラッシュアップすればよいものも多くありました。すべての動画を一から作成する必要がなかったことが、取り組みへのハードルを下げてくれました。
配信開始から3週間後に行った妊婦さん対象のWebアンケートでは、「スマートフォンならいつでも視聴できる」「紙媒体より画面の方が見やすい」といったご意見もいただきました。妊婦さんにとっても便利なサービスであることがわかり、とてもうれしかったです。
▲サービスの利用には友達登録が必要。とはいえ、「今まで友達登録をお願いして拒否された方は一人もいません」と、深山さん。明確なターゲット設定と時代に即したサービスが妊婦さんに合致したよう
次のページ:母親学級の予約システムを独自に構築
施設名: | 学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院 |
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住所: | 〒104-8560 東京都中央区明石町9-1 |
ホームページ: | https://hospital.luke.ac.jp/index.html |
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