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2024/12

小林光恵さんの おやすみコラム #026「今日も誰かの誕生日」

小林光恵さんの おやすみコラム #026「今日も誰かの誕生日」

「病院で誕生日を迎えるということ(※)」と題した症例報告を読みました。

予後不良の状態となった女性患者(60代)のもうすぐやってくる誕生日を、彼女の夫と共に看護師がお祝いすることに、賛成する看護師、反対意見の看護師、患者や家族の意見を聴き尊重していくと考える看護師。
結局、看護師は積極的には介入せず、病室では家族でホールケーキを囲み、患者と写真を撮っている姿が見られたようです。

これを読んでいてスナックのママMさんの話を思い出しました。常連客の高齢の男性Tさんは、ある夜Mさんに頼みました。「実は、一番忘れたくないことが妻の誕生日なんだ。オレがボケはじめて、もし忘れているようなら、その日だとおしえてほしい」と。
Mさんはこう続けました。
「Tさんはね、超のつく照れ屋なのかな、奥さんの誕生日になんのお祝いもしたことがない。おめでとう、も一度も言ったことない。でも、秘かに、今日は誕生日なんだな、とじっくり思うことにしてるんだ、って」
それ以来Mさんは、常連さんの誕生日には、〇〇さんの誕生日だな、と思いながらビールを一杯やるようになったのだとか。

前述の症例でも、意見交換をした看護師さんらは、その女性患者の誕生日に直接お祝いはせずとも、彼女が誕生日であることを思ったことでしょう。
考えてみれば、プレゼントやメッセージを送らなくても、今日は〇〇の誕生日だな、と思う日が私も少なくありません。誕生日を迎えた本人が思うよりもずーっと多くの人が、その人が誕生日であることを思っているのかもしれませんね。

※山川(木村)華瑠佳. 病院で誕生日を迎えるということ~看護師の価値観に関する若手看護師の気づき~:日救急医会関東誌

著者/小林 光恵さん
元看護師。著述業。つくば市在住。
エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。

看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。

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(Aナーシング 日経メディカル)
●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」
(Will Friends 日本看護学校協議会共済会)
●ドクターズコラム
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