インタビューアーカイブ

2017/10

医師とつながる安心感の提供。ネットやSNSを通じた新しい診療の形

前半でご紹介した重症度の高い患者さんへの利用のほか、生活習慣病や花粉症などの病気をライトに受診するためのシステムとして、オンライン診療に期待がかかっています。患者さんの負担を減らし、医療費も下げる可能性があるとして、政府も力を入れているオンライン診療。遠隔医療を導入する浅草ハートクリニック 院長の真中哲之氏にオンライン診療の可能性についてうかがいました。

真中 哲之

浅草ハートクリニック 院長

通院のハードルを下げるオンライン診療

前編はこちら

2018年の診療報酬改定で、大きく変わるであろうと予測されているのが「オンライン診療」の分野です。これまでの制度では、医師の診察を受ける際には必ず医療施設までおもむく必要がありました。オンライン診療は2015年に厚生労働省に認可され、テレビ電話での診療を行い、患者さんが医療施設に行かなくても診察、処方を受けることができるようになりました(再診に限る)。これにより通常は医師とのテレビ電話で診察を行い、来院頻度を数か月に1度程度に減らすことができます。処方せんも郵送で受け取ることが可能です。来春の診療報酬改定で診療報酬がより明確に規定され、現在よりも医療施設のコスト面でのメリットが改善することも期待されています。最近メディアでも多く取り上げられており、今後多くの病院・クリニックでオンライン診療が始まるでしょう。

 

自宅で簡単「スマホ診療」の発展

近年、スマートフォンを利用したオンライン通院システムを導入する医療機関も増えています。待ち時間もなく、手軽に診察を受けることができ、生活習慣病などの治療によく利用されています。初診は対面で診察する必要がありますが、2度目以降はスマートフォンを通じた診療が可能です。

現在、健康診断で血圧やコレステロール値が高いと診断されたにもかかわらず、生活習慣病の治療を受けていない方は実に4人に3人だと言われています。これらの患者さんの多くは「病院に行くのが面倒」「すぐに治療が必要な状態ではない」と考え、通院にまで至っていないのではないでしょうか。スマホ診療なら、通院の手間が省けますし、こうした忙しい“生活習慣病予備軍”の方々の受診率が上がるのではないかと期待しています。彼らにスマホ診療が広まれば、早めのケアを提供でき、将来的に心筋梗塞や脳梗塞患者の低下、ひいては医療費の削減にもつながるのではないでしょうか。

また、花粉症や不眠症など、診療に時間のかからない病気にも、スマホ診療は便利です。禁煙外来なども、オンライン診療が発展するとよい分野だと思います。数時間待って数分の外来受診では、患者さんの満足度も上がりませんし、手軽な診察は需要が高いと思われます。

ただし、触診が必要な病気など、対面で診察しなければならない病気も多くあります。対面診療が必要なのか、オンライン診療で十分なのか、医師は判断を見誤らないようにしなくてはなりません。
患者さんによっては、医師と対面でしっかり話したい方もいらっしゃいますし、逆にスマホでサッと手軽に済ませたい方もいらっしゃいます。患者さん一人ひとりの生活スタイルやニーズによって、患者さんが選べる選択肢を増やすことが大切なのだと思います。

 

より患者さんとのつながりを強固にできるシステムを

現在諸事情で開発がストップしているのですが、医師と患者さんが簡単につながれるSNSの開発を進めています。自宅で自覚症状が出た時に気軽に利用いただくためのシステムです。
文字入力だけでなく、音声入力にも対応し、高齢者にも使いやすいデザインを目指しています。例えば、患者さんにバイタルデータを読み上げていただき、その音声データをSNSに登録すると自動でグラフに記録するなどの機能を搭載しています。

いつでもどこでも医師とつながれるという安心を、患者さんへ提供できればと思います。
遠隔医療は、前編でお話したような重症度の高い病気への展開も、後編でお話したような軽い治療にも、利点を生かした活用が可能です。私の専門である心臓疾患はもちろん、慢性疾患の患者さんにも貢献できるよう遠隔医療を発展させていくことが、今の私の目標です。

真中 哲之

浅草ハートクリニック 院長

1995年
筑波大学医学専門学群卒業
1995年
東京女子医科大学循環器内科入局
1999年
榊原記念病院 循環器内科
2002年
ハーバード大学ブリガムアンドウイメンズ病院客員研究員
2005年
東京女子医科大学大学院卒業、医学博士号取得
2007年
東京女子医科大学循環器内科 心臓電気生理検査室長(不整脈治療カテーテル検査室長)
2015年
浅草ハートクリニック開院

SNSでシェアする