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2019/2

創立150周年を控える国立大学病院の病院長が果たすべき使命とは(後編)

神戸大学医学部附属病院は、平成31年に創立150周年を迎えます。同院は、国立大学病院として日本の医療の発展を支えていくため、平成28年に文部科学省によって新設された国立大学改革の「3つの枠組み」に参画。「世界最高水準の大学病院」を目指して、医学教育の質の向上にも取り組まれています。世界に目を向ける大学病院病院長が果たすべき使命とは。神戸大学医学附属病院病院長平田健一氏にお話しをおうかがいしました。

平田 健一

国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 病院長

大学病院と地域の距離を縮め地域のネットワークづくりの中心に

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「医療人の育成」と密接に関わっているのが、地域医療です。当院の基本理念の4番目にも掲げていますが、これからの大学病院はますます地域医療にも力を入れていかなければなりません。兵庫県はとても広いうえ、国立大学は神戸大学しかないため、地域の中で幅広く活躍できる人材の育成は、当院にとっても非常に重要な課題となっています。

そこで神戸大学では、毎年10名の地域枠を設けて地域の学生を受け入れる体制を整えており、卒後9年間の義務年限で、丹波や但馬、赤穂など兵庫県内全体で活躍できるようにキャリアパスを作成するなどフォローを行っています。また、平成26年4月には、兵庫県と連携して「神戸大学医学部附属地域医療活性化センター」を設立しました。ここでは、地域医療を担う人材の、卒前から卒後に至る一貫した教育や研修を行っています。施設内には、技術トレーニングコーナーと模擬病室からなる「臨床基本技術トレーニングセンター」や、腹腔鏡や消化器内視鏡をはじめとする先進医療のトレーニングが可能な「先端外科医療・内視鏡トレーニングセンター」などを設置し、地域医療の充実につながる医療人の育成を目的としたさまざまな支援を行っています。

そしてもう一つ、大学病院が地域の中で担う役割といえば、地域包括ケアにおけるネットワークづくりがあると思います。大学病院というところと、地域包括ケアの在宅の距離は遠い印象があるかもしれませんが、今は、実はそうでもないと私は思っています。地域の基幹病院と、診療所や在宅ケアが連携しやすいネットワークを構築したり、ケアに携わる人たちが勉強する場を提供したりするのは、大学病院が担うべきだと考えているからです。

例えば今後、心不全パンデミックが起こることが予測されていますが、当院は神戸市立医療センター中央市民病院と協力して心不全地域連携パスを整備し、患者さんには「心不全手帳」を作成しました。これまでは病院同士が個別に情報共有をしていたため、地域の病院や診療所は「あの病院はこれで、この病院はあれで……」と、混乱する場面もあったと思います。地域連携パスは一例ですが、このように基幹病院や診療所と関わり合いながら、地域を調整していく役割も私たちにはあるのです。

今までの大学や大学病院は、人材育成や研究が最たる使命だったかもしれませんが、これからは、全体像をよく把握して、方向性を指し示したり、意見を出すのは、大学主導で進めていかなければいけないと考えています。

新しい医療開発に挑むため 「臨床研究中核病院」の認定が目標

研究面における直近の目標は、「臨床研究中核病院」の認定を取得することです。これは、平成27年4月から施行されたもので、「日本発の革新的医薬品・医療機器等の開発を推進するため、国際水準の臨床研究等の中心的役割を担う病院」として、厚生労働大臣が承認するものです。承認されるためには高い水準の要件を求められます。例えば、不適正事案の防止等のための管理体制の整備や、医師主導治験や臨床研究の件数、研究論文の数などの実績、臨床研究に携わる人員の数(医師・歯科医師、薬剤師、看護師、データマネージャー、生物統計家など)など、厳しく規定されています。

こうした要件をクリアして承認されると、質の高い最先端の臨床研究・治験を実施することができます。当院でも、新しい治療を開発するためには臨床研究を進めていかなければなりません。ぜひとも承認を目指す取り組みを加速していきたいと思っています。

穏やかで協力的な兵庫の人たちの支えで、兵庫の医療はよりよい方向へ

当院は、昔は県立病院でしたから、規模は小さく、関連病院も多くはありませんでしたが、ここ最近は少しずつ病院のあり方も変わってきたように思います。今は、兵庫県との関係性もできあがりつつあり、県知事も含めて病院が行政とコミュニケーションをよくとるようになりました。神戸大学が主体となって行政と協力しながら、病院統合や新しい病院の開院に携わる例も多くなっています。例えば、平成23年の加古川市民病院の統合、三木市立三木市民病院と小野市立小野市民病院を統合した北播磨総合医療センターの開院などです。さらに、平成31年には、兵庫県立柏原病院と柏原赤十字病院が統合し、県立丹波医療センターに生まれ変わり、平成34年開院予定で、兵庫県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院も統合します。

当院のある神戸は、国際的にも開かれていて、いろいろな文化を受け入れる懐の広さをもつ街だと思います。人間的にも穏やかで、みんな仲良しで協力的なので、大学病院の雰囲気もとてもいいんです。医師は努力家が多く、看護師さんはやさしくていい人ばかりです。緊急入院でも快く引き受けてくれますし、病床マネジメントも看護部がしっかりとコントロールしてくれます。この何年間で診療報酬の請求額でもかなり伸びていますし、病床稼働率も国立大学病院の中ではトップクラスに位置しています。それぞれが目標をもって頑張っているので、この何年間で当院もずいぶんと成長しました。そんな人たちに支えられて、兵庫県の医療はかなりよくなってきました。これからも、地域、大学、行政と協力しながら、大学病院の使命、そして病院長の使命を果たしていきたいと思います。

 

平田 健一

国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 病院長

昭和59年神戸大学医学部卒業後、同大学医学部第一内科入局。
平成4年同大学大学院医学研究科修了。
平成8年から米国Vanderbilt大学、Stanford大学研究員。
神戸大学大学院医学研究科循環器内科学教授、同大学医学部附属病院副病院長を経て、
平成30年2月より同病院長、現在に至る。

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