インタビューアーカイブ

2020/2

「患者第一」の〝医院〞が取り組む 未来型ホスピタルの病院改革とは(後編)

「すべては、患者さんのために」――。2019年4月、順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長に就任した髙橋氏は、「患者第一」を掲げ、病院改革を先導しています。国際的な環境格付け基準LEEDを取得した「未来型エコホスピタル」、患者さんの要望に応じた多様な診療センターの設立。さらには、待ち時間の短縮を目的とした「医療費あと払いクレジットサービス(あとクレ)」の導入など、さまざまな病院再編事業を推進する髙橋氏に、徹底した「患者第一主義」を貫く同院の取り組みについてお聞きしました。

髙橋 和久

順天堂大学医学部附属 順天堂医院 院長

サービス、接遇も「患者目線」で!快適に受診できる環境をととのえる

前編はこちら

ソフト面で力を入れているのがサービスの改善です。院内の投書箱に寄せられた声や満足度調査を参考に、さまざまな改善策を実行しています。
現在、最も注力しているのが、「待ち時間を短縮する取り組み」です。順天堂医院は、大規模病院の中でも外来の患者さんが非常に多い病院です。1日だいたい、4,500人前後の患者さんが来院します。また、患者さんの金銭的負担や薬局への移動負荷を少しでも抑えたいという思いから院内調剤にこだわっており、結果、多くの患者さんで混み合う中、さらに調剤での待ち時間が発生するということが常態化していました。投書箱や満足度調査によって寄せられる意見も、「待ち時間の短縮」や「混雑の緩和」に関するものが多く、ここを改善することが急務と考えています。

そこで導入したのが、医療費あと払いクレジットサービスです。これは、事前にWebサイトでクレジットカードなどの情報を登録しておけば、会計を待たずに、「あと払い利用票」を提出するだけで帰宅できるというもの。診療や薬にかかった代金は、約4日後にクレジットで決済される仕組みになっています。

併せて、薬の後送サービスも始めました。こちらは残薬がある方を対象に、薬を後日宅配でお送りするサービスです。これらサービスを導入したことで、待ち時間を大幅に短縮することができました。

ほかにも、JCI(Joint Commission International)を取得し、英語・中国語、韓国語が話せるスタッフを配置した外国人専用の窓口である国際診療部を設置したり、患者さんのお迎えや関連病院への移送を行う院内救急車を導入したりと、患者さんが求めるサービスを積極的に導入しています。
そして、何より大切にしているのが、笑顔で、患者さんの目を見て話すということ。お待たせしたときは必ず「お待たせいたしました」と言い、エレベーターの扉は必ず医師を含む職員が開ボタンを押して患者さんを送り出すようにしています。こうした基本的な接遇も、投書や満足度調査を参考にして徹底的に行うようになりました。

投書の数は、平均して月満足度200件程度。すべての投書に私自身が目を通して、月1回の幹部会議で説明や議論を行い、継続して速やかに改善に取り組んでいます。

 

タスクシフトやAIの導入で医療・看護の在り方が変わっていく

最後に、看護の改革についてもお話しさせてください。看護において、今後、ますます重要になってくるのが、いわゆる「タスクシフト」であると考えています。タスクシフトとは、医師が行っている業務の一部を、資格をもつ看護師が代わりに行うこと。アメリカでは、すでに、ナースプラクティショナーが医療行為を行う体制が確立しています。私たち順天堂医院も、看護師の専門資格取得を促進し、これからどんどんタスクシフトを推し進めていきたいと考えています。さらに、AI(人口知能)を活用し、看護師の勤務表を作成する取り組みや、看護計画や問診票を作る試みも始めました。

無駄な手間を省き、職員の超過勤務を抑え、人件費を削減する努力をするというのは、よりよい医療を提供するという意味でも、病院経営という意味でも欠かせないこと。今後を見据えた効率化を行うため、ITを活用しながら、医療と看護の役割分担を見直すことは必要不可欠であると考えています。
ハード、ソフトだけでなく、医療や看護の在り方まで……。多くのモノ・コトを俯瞰的かつ総合的に、ダイナミックに変えていく。こうした病院改革を臆せず、継続して、積極的に続けていくことで、今後も「患者第一」の医院を、徹底的に追い求めていきたいと考えています。

髙橋 和久

順天堂大学医学部附属 順天堂医院
院長

1985年、順天堂大学医学部を卒業。1994年、ハーバード大学医学部附属マサチューセッツ総合病院腫瘍外科学に留学。帰国後は順天堂大学医学部呼吸器内科学に所属。GCPセンター長、臨床研究支援センター長などを経て、2014年、副院長に就任。2019年4月より現職。

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