インタビューアーカイブ

2022/4

多世代が支え合う社会を実現するために 高齢者住宅を中心とした街づくりを推進(前編)

2035年には団塊世代が後期高齢者に突入し、ほかの世代を含めた総人口の約1/3が高齢者になるともいわれています。学研グループでは、こうした社会課題の解決を目指し、高齢者・子育て支援を主軸にさまざまな事業に取り組んでいます。今回は、高齢者住宅を全国的に展開している、学研ココファンの代表取締役社長兼COOの森猛氏を取材。全国規模で行っている研修や情報共有方法、コロナ禍でのスタッフのサポート体制、また学研グループが目指す「学研版地域包括ケアシステム」についてお話いただきました。

森 猛

株式会社学研ココファン 代表取締役社長兼COO
株式会社学研ココファン・ナーシング 代表取締役社長

少子高齢化の加速を見据えて
学研が取り組んだ高齢者へのサービス

学研ココファンは、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を中心とした「ココファン」シリーズの運営と介護サービスを主軸に、高齢者支援事業および人材養成事業を展開しています。2010年に日吉で誕生した「ココファン日吉」は、サ高住を制度化する際のモデルともなりました。以来、サ高住のリーディングカンパニーとして拠点を拡大し、現在は全国に180棟(2022年4月1日時点)を運営しております。

学研グループは、1946年の創業以来、「社会課題の解決」に取り組んでいる会社です。企業理念は「すべての人が心ゆたかに生きることを願い、今日の感動・満足・安心と明日への夢・希望を提供します」。創業当時は「戦後の復興は、教育をおいてほかにない」と考え、教育事業に注力していました。その後、時代と共に移りゆく社会のニーズに応え、「これからの超少子高齢社会で貢献できる事業を考えねばならない」と、2004年から高齢者・子育て支援事業を開始し、今では主軸事業の一つとなっています。これは創業者の遺言でもあり、学研ココファンを含む学研グループが一体となって取り組んできた大きな社会課題です。

その課題解決のために学研ココファンでは、元気な方から介護・医療を必要としている方まで、より多くの方が暮らせる社会を目指し、サ高住を提供するのと同時に、グループ企業と連携しながらサービスの拡充をしてまいりました。例えば、サ高住のご入居者を主な対象とする訪問看護に関しては「学研ココファン・ナーシング」と協働。特にコロナ禍においては自室で機能訓練を行う必要性が高まり、同社の理学療法士などのセラピストによる対応を強化しています。また、子育て支援を行う「学研ココファン・ナーサリー」との連携により、高齢者と子どもが触れ合う多世代交流の場を創出しています。

 

理念とスピリットに共感したスタッフが
共通のマインドセットをもつ

当社の社員は全国に約5,500人。加えて、毎年100人以上のスタッフが入社しますが、中には介護の実務経験者だけでなく、他業種からキャリアチェンジした者も多数います。そのため、各拠点ではさまざまなバックグラウンドをもつスタッフが共に理念の実現を目指して働くことになります。当然、実務に入る前にはスキルの習得は欠かせませんが、その前段階に社員のマインドセットを共通化することは不可欠だと考えています。

その取り組みの一つが、入社時の初任者研修です。強く意識しているのが、「学研ココファンの事業は世の中の人々にとって絶対に必要だ」という我々の信念を、一人ひとりが自分事としてとらえること。そのために、会社創立から受け継がれる歴史や理念、精神を社員に伝え、共感、実践までの道筋を具体的に示すことを徹底しています。

その際に柱としているのが学研グループ企業理念と、当社独自で定めた「ココファンスピリット」、そして「学研ココファン 介護憲章10ヵ条」です。
いずれも企業理念に沿った内容ですが、「ココファンスピリット」は全スタッフが目指すべき行動を明文化したもの。特に三つ目の項目はスタッフへのメッセージでもあります。理念にある「すべての人」には学研ココファンで働く「すべてのスタッフ」も含まれています。「人間的魅力を身につけて、私たち自身も輝き、心ゆたかに生きよう」という想いも込められているのです。

また、「学研ココファン 介護憲章10ヵ条」は介護サービスの具体的な提供方針のうち、特にマインド面にスポットを当てたもの。専門職として意識すべき心構えを、一文字の漢字で表現しています。中でも「慮〜介護者の自己満足はお客様のためにあらず〜」という項目は、学研ココファンらしい価値基準だと自負しています。介護は決して押し付けであってはならないし、相手に気遣いをさせてはいけないのです。初任者研修では、「学研の創業の精神に共感できた」「介護サービスを提供するうえでのマインドセットが理解できた」などの声が挙がり、各々のモチベーションアップにもつながっていることを実感しています。


後編では、コロナ禍でのスタッフサポート、学研が目指す「学研版地域包括ケアシステム」についてお伝えします。

森 猛

株式会社学研ココファン 代表取締役社長兼COO
株式会社学研ココファン・ナーシング 代表取締役社長

2001年、セントケア・ホールディング株式会社に入社。執行役員マーケティング部長や専務取締役経営企画部長などを歴任し、2012年に代表取締役社長就任。2020年6月より学研ココファンホールディングス取締役および学研ココファン品質管理本部本部長に。その後、同年11月より現職となる。

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