今月のインタビュー

医療・福祉のあらゆる分野の第一人者の方々に、ご専門分野に関する現状・課題・今後の展望などをおうかがいする「今月のインタビュー」。
多くの看護師、医療従事者の方々にとって"目指すべき医療とはなんなのか"を考えるきっかけにしていただけるよう、毎月テーマを厳選してお届けします。

第189回 2019/01

これからの先進医療のあり方を 医工連携に強みをもつ東北大学病院に探る(前編)

東北・北海道の中で最も古い大学病院である東北大学病院。医学と工学の連携に圧倒的な強みをもち、数々の医療機器を世に排出して、日本の先進医療の発展に大きく貢献してきました。「世界をリードする病院を目指す」と語る、東北大学病院病院長の八重樫伸生氏に、いかにして日本の医療の最前線に立ち先進医療を推進されてきたのか、そして現在、力を入れているのはどのような取り組みなのか、これからの展望とともにお話しいただきました。

国立大学法人 東北大学病院 病院長
八重樫 伸生 氏

東北大学病院

先進医療と地域医療の両立をはかり
東北の医療を守ってきた歴史ある大学病院

東北大学病院の前身となる仙台藩医学校施薬所が創設されたのは、文化14年(1817年)のことです。大正4年(1915年)に東北帝国大学医科大学附属医院と改称してからは、100年以上の時が流れ、東北・北海道の中では最も古い大学病院になります。

当院は、大学病院として高度・先進医療で日本の医療の発展に貢献してきた一方で、昔から地域との結び付きが非常に強いという特徴があります。旧帝国大学の病院は通常、北海道大学病院なら札幌医科大学附属病院、京都大学医学部附属病院なら京都府立医科大学附属病院といったように、地域の中核病院と連携して地域医療を担っています。ところが当院には、このような連携先となる病院がこれまでなかったという背景があり、大学病院でありながらも、東北地方の広範囲にわたって地域に根差した医療に力を注いできたという歴史もあります。これは、7つある旧帝国大学の中でも際立って異なる特徴だと思います。また、昭和50年代までは、東北の多くの病院の病院長などを東北大学出身者が務めていたことからも、地域とのつながりがとても深いということがわかると思います。

現在は、平成28年にようやく東北医科薬科大学病院ができ、より一層、充実した地域医療に取り組む体制が整いました。先進医療と地域医療の両立をはかり、安全かつ高度な医療を地域全体に提供するために努力を続けているところです。

先進医療の推進には
患者さんに優しい医療との「調和」が大切


▲東北大学病院がかかげる基本理念と将来構想
当院の基本理念と将来構想では、「先進医療」と「患者さんに優しい医療」を、「調和」という言葉で結んでいます。医療には、まさにこの「調和」がとても重要で、必要な言葉なのです。

新しい薬や新しい手術法を患者さんに提供する。これは、先進医療の一つですよね。医師あるいは研究者が新しいものに取り組むとき、どうしても研究という側面が強調されてしまい、倫理的な配慮を失念しがちになることがあります。昨今、全国でさまざまな医の倫理に反するような事件・事故が起きていますが、患者さんの立場を十分に考慮しないで先進医療に突き進んでしまう、こうしたことが事件・事故の背景にあるのだと思います。

医療というのは、常に「患者さんのために」という視点をもって取り組む必要があります。ただし、それだけであれば、一般的な病院でもよいわけで、開業医や市中病院のほうが確実に実践しやすいはずです。大学病院の特徴は、やはり新しい医療技術を開発することであり、それを世界に発信していくことに意味があります。「先進医療」と「患者さんに優しい医療」の足並みが揃わなければ、患者さんやご家族に非常に不都合なことになってしまいます。この二つの「調和」を目指すことが、何よりも大切なのです。

医学と工学の連携に圧倒的な強みをもち
日本の医療機器開発をリード

先進医療といってもさまざまですが、主に、創薬、再生医療、医療機器・材料の三つに分けることができます。工学系に強い東北大学は、この中でも特に医療機器の開発を得意としています。これは、2番以下の大学を大きく引き離し、断トツでトップを独走していると思います。国からの評価も同様ですし、他大学からも認められる事実だと思います。

東北大学の歴史をさかのぼると、数々の革新的な研究や開発が行われてきました。例えば工学系では、八木秀次先生らによって発明された、テレビ放送の受信アンテナに使われた「八木・宇田アンテナ」、東北大学第代総長を務められた西澤潤一先生が発明した「光ファイバー」などが有名です。医療分野においては、「脳波学の父」と称され、東北大学第代総長も務められた本川弘一先生が、戦前から脳波研究に取り組み、日本で初めて脳波増幅器を完成させました。加齢医学研究所では、昭和年代頃からCT画像の基礎研究においてめざましい成果をあげています。最近のニュースでは、これまで実現不可能とされてきた胎児の心拍数計測を世界で初めて可能にした、次世代型胎児モニタリング装置「アイリスモニタ®」が、臨床試験を経て商品化に成功しました。このように、東北大学には昔から医学系と工学系の連携の土壌があり、そして、それは現在も続いています。

近年は、そのムードはさらに加速しています。大きなきっかけは、平成15年度から19年度を実施期間として立ち上げられた医歯薬系研究科・「医歯薬系研究科・研究所と工学・情報系研究科・研究所の学内連携による「先進医工学研究機構(Tohoku University Biomedical Engineering Research Organization (TUBERO))」でした。文部科学省から多額の予算が投入され、東北大学を拠点に次世代の医工学の創生を目指した戦略的研究を展開することが目的でした 。これによって、工学系と医学系の各研究グループが一緒に研究に取り組むという関係性が一気に深まっていきました。そして、そこから発展して平成20年に誕生したのが、日本初の「大学院医工学研究科」です。ここには教授が約30名いますが、そのうち2~3割は医学部出身者です。同じ研究科で医学部と工学部の出身者が協同で教育・人材育成に取り組んでいます。

 

八重樫 伸生氏
国立大学法人 東北大学病院 病院長

昭和59年東北大学医学部卒業、八戸市立市民病院を経て、
東北大学医学部附属病院産婦人科入局。
米国フレッドハッチンソンがん研究所留学等を経て、
平成12年に東北大学大学院医学系研究科教授に就任。
平成27年4月より現職。専門は産婦人科。
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