優れた看護を賞賛し、看護職を元気に! 「としこの部屋」大島敏子さんインタビュー
2024/8/30
みんなの広場
2025/9
この先、私はどんなキャリアを歩んでいくのだろう。将来のことを考えると、仕事だけじゃなく、お金の計画もきちんと立てなくては。でもこれ、誰に相談すればいいのかわからない……。
そんな看護師の皆さんのお悩みに、看護師の先輩であり、現在それぞれキャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナーとして活躍されている濱田安岐子さんと中林友美さんがズバリお答えします。第12回は、病院勤務のサヤカさんから認定看護師の資格取得に関するご相談です。
看護師・サヤカさん(28歳/中規模病院勤務6年目)のお悩み
認定看護師の資格取得を目指していますが、仕事と勉強の両立ができるか不安で悩んでいます。仕事をしながら勉強を進める方法がわからず、資格取得後のキャリアパスもイメージが湧いていません。資格取得には費用も多くかかると聞いているので、費用の概算や、助成制度なども知りたいです。
中林さんのアドバイス
認定看護師を目指すという選択は、サヤカさんのキャリアを大きく前進させる力強い一歩です。ただし、その道のりには費用や生活の不安がついてまわります。学費や通学費、生活費の確保、さらには収入減への備え……。キャリアの夢を叶えるには、モチベーションだけでなく、夢を後押しする「制度」や「工夫」を知っておくことが欠かせません。
認定看護師教育課程ですが、従来のA課程による教育課程(600時間程度)は2026年度までで終了となっており、現在は2020年度から始まったB課程(特定行為研修を組み込んでいる認定看護師教育課程で800時間程度)が主流です。そのため研修期間は従来の6ヵ月程度から8~10ヵ月程度と長くなっています。
各教育機関にもよりますが、概ね受験料は5万円程度、入学金も5万円程度。授業料は特定行為研修もプラスされた影響で120万円前後に上がっており、多くの場合は合格通知が届いてから一定期間内に一括払いとなるため、初期に130万円以上の現金が必要です。さらに教材費・交通費・生活費の増加分を含めると、総額は200万円以上になることもあります。キャリアアップを望む看護師にとっては大きな投資となりますので、早めの資金準備が大切です。
1. 教育訓練給付金を活用する
厚生労働省の「教育訓練給付金」は、条件を満たせば受講費用の最大80%(年間上限64万円)まで支援される制度です。自分が対象か、希望する養成機関の認定講座を調べ、まずはハローワークで確認してみましょう(参考1)。
2. 奨学金や助成制度を利用する
日本看護協会では、年額120万円以内を無利息で一括貸与する奨学金制度があります(原則返還が必要で、返還開始は貸与年度の翌年10月、返還期間は最長4年)(参考2)。
自治体でも支援があります。たとえば東京都は「訪問看護推進総合事業」で、訪問看護ステーションからの申請で授業料や給与費などの50%を補助(参考3)。
千葉県八千代市では最大100万円の貸与制度があり、市内で勤務すれば返還免除となります(参考4)。
医療法人グループでも手厚い支援があります。徳洲会グループは授業料・入学金・生活費まで全面的に負担(参考5)。一宮西病院(杏嶺会)では授業料や住宅手当、帰省費も含めて総額の約80%を病院が負担しています(参考6)。
他にも自治体や医療法人などでの独自の助成や補助が行われています(参考7)。
3. 勤務先に相談する
日本看護協会の調査(参考8)によれば、認定看護師資格取得に際して勤務先から何らかの支援を受けた人は約7割。特に公的機関や医療法人では、給与の継続支給や復職後のポスト保障といった「生活の安定」を中心とした支援が多く見られます。
各勤務先で独自の支援が検討されていることもありますので、まずは所属先に相談することが第一歩です。もし今そのような制度がなくても、のちに詳しく説明しますが、診療報酬加算や人材育成のメリットを示しながら交渉すれば、新しい制度のきっかけをつくることもできます。
学費の補助や給与保障などは、資格取得のモチベーションにも大きく影響します。まずは上司や看護部に相談してみることから始めましょう。
4. 先取り貯蓄の習慣化
制度や支援を活用しても、自己負担はゼロにはなりません。「学び用の積立口座」をつくり、毎月の先取りで資金を蓄えると、一括払いの心理的負担が軽くなります。少額でも継続していくことで大きな資産になっていきます。
勤務先に資格取得の支援制度がない場合でも、あきらめるのはまだ早いです。むしろ制度導入を提案することは、認定看護師資格取得後の活動を後押ししてもらうための貴重な機会ととらえることができます。
ポイントは、例えば所属先が病院であれば、メリットを「診療報酬加算」に結びつけて伝えることです。認定看護師の配置によって加算が認められる分野があり、これは病院の収益増につながります(参考9)。加えて、患者の安心・安全の向上、看護部全体のスキルアップ、病院ブランドの強化など、多面的な効果を整理して伝えましょう。他の病院での取り組みや、前述の看護協会の調査結果なども合わせて伝えれば制度導入の可能性が高まるのではないでしょうか。ぜひ積極的にチャレンジしてみましょう。
サヤカさんが抱えている「仕事と勉強の両立」への不安も、実は多くの認定看護師を目指した先輩方が通ってきた道です。経済的な安心があると、学びに集中できる時間や気持ちの余裕が生まれます。だからこそ、支援制度や勤務先の理解をうまく組み合わせることが、キャリアと生活を両立させる大きな力になるのです。
認定看護師の資格取得はゴールではなく、そこからが本番です。お金とキャリアを切り離さずに考え、どう資金計画を立て、どう所属先と協力するかを具体的に描いていくことで、夢は現実に近づきます。
学びの一歩は大きな決断ですが、その先には今よりもっと大きなやりがいと輝くキャリアが待っています。どうか不安を力に変えて、一歩踏み出してください。その一歩が、未来のあなたを大きく輝かせるはずです。サヤカさん、そして同じように悩みながらも前を向こうとしているすべての看護師の皆さんの挑戦を心から応援しています!
<参考資料>
参考3
東京都では「訪問看護推進総合事業」として、訪問看護ステーションを通じて認定看護師や特定行為研修を受講する場合、入学金・授業料・認定審査料・受講中の給与費用の50%を補助します。
令和7年度訪問看護ステーションにおける認定看護師資格取得支援事業
参考4
千葉県八千代市では、認定看護師養成課程受講者に対し最大100万円の修学資金を貸与。修了後に市内の医療機関で一定期間勤務すれば返還免除となります。
【認定看護師】看護師等修学資金貸付の新規募集※今年度の募集は終了
参考5
徳洲会グループ(全国):認定看護師養成課程の授業料、入学金、生活費を病院が全面的に負担する制度を整備。所属病院の推薦を受けて派遣され、資格取得後は復職して専門性を生かすことが前提です。 https://www.tokushukai.or.jp/kangobu/recruit/scholarship.php
参考6
社会医療法人杏嶺会グループ(愛知県一宮市):入学試験の受験料、授業料、審査料、さらに住宅手当や帰省費まで支援。受講中の給与と賞与も全額支給。結果として総費用の約80%を病院が負担しています(自己負担は教材費のみ)。
https://www.anzu.or.jp/ichinomiyanishi/nurse/welfare/
参考7
国際医療福祉大学 成田病院(千葉県成田市):大学院や教育奨学金と連携し、入学金免除や学費補助の制度があります。
https://kango.iuhw.ac.jp/narita/careerup/
参考8
公益社団法人日本看護協会 労働政策部
「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する 評価・処遇に関する調査」報告書
参考9
認定看護師・専門看護師教育における研修が算定要件に該当する診療報酬項目については以下をご参照ください。
https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/qv_haichiyoken2024_sinryo.pdf
【認定看護師として活躍する先輩方のインタビューはこちら】
床ずれや失禁の苦痛を軽減 QOLを向上させる皮膚・排泄ケア認定看護師
患者さんに食べる喜びを 摂食嚥下障害看護認定看護師
【過去の相談も合わせて読む】
看護師のためのマネー&キャリア相談室#11「認定看護師資格を取得するために」
看護師のためのマネー&キャリア相談室#10「仕事と不妊治療の両立、お金の不安」
濱田 安岐子さん NPO法人看護職キャリアサポート/株式会社はたらく幸せ研究所 代表 看護師/国家資格キャリアコンサルタント/ハラスメント相談員 看護師臨床11年、看護教員3年を経験した後、2006年からフリーランスとして独立。2010年、NPO法人看護職キャリアサポートを設立し、看護師が元気に自分らしくキャリアを継続できるように活動中。2018年には、株式会社はたらく幸せ研究所を設立。健康と幸福学で幸せに働ける社会を目指している。 | 中林 友美さん フローレンス FP オフィス 代表 看護師/ファイナンシャルプランナー/国家資格キャリアコンサルタント 長らくがん看護に従事し副看護師長を経験後、FPなどの資格を取得。多忙で自分のことをつい後回しにしてしまう看護師が自分らしく輝く人生を歩むために、2019年よりフローレンスFPオフィスを立ち上げ、日々活動中。 |
SNSでシェアする