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2025/3

【プロの視点 #01坂本すがさん】患者さんの手を離さず伴走する それが看護のプロフェッショナル

【プロの視点 #01坂本すがさん】患者さんの手を離さず伴走する それが看護のプロフェッショナル

患者さんに寄り添い、専門性を発揮しながら支える看護の仕事。その道を極めたプロフェッショナルたちが考える「看護のプロの姿」とは? 今回は、看護界のレジェンドともいわれる坂本すがさんにインタビュー。助産師からキャリアをスタートさせ、今日に至るまで看護に携わり続ける坂本さんの看護人生には、「看護のプロフェッショナル」として働き続けるヒントが詰まっています。

チームで働く楽しさに開眼 看護師長時代は人生最高の日々

私は、和歌山県の龍神村で生まれました。もともと教師を目指していましたが、大学受験に失敗し、母の勧めもあって看護学校に進学しました。その後、助産師として関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)に入職。もちろん一生懸命仕事に取り組みましたが、「仕事が大好き!」というわけではありませんでした。

仕事への考え方が変わったのは管理職に就いた時です。産婦人科病棟の看護師長になってからは、チームで仕事をする楽しさに目覚めていきました。自分の思い通りに采配を振る楽しさを知り、まさに人生最高の日々でした。

看護師長になり、私はまず看護師や助産師に「みんなは何をしたい?」「私たちには何が求められていると思う?」と聞きました。ですが、なかなか答えは出ません。そこで、聞く対象を変え、妊産婦さん100人にアンケートを取ることにしたのです。

回答を見るまで、私たちは「ケアを手厚くしてほしい」「話を聞いてほしい」という声が上がると思っていました。ですが、蓋を開ければ「おいしい入院食が食べたい」という意見がダントッ。となれば、私たちも動かないわけにはいきません。ただ、栄養課は個別メニューには対応できないため、事務長や栄養課長にかけあい、特別病棟と同レベルの豪華な入院食に変更しました。妊産婦さんからは大好評で、病棟に笑顔が広がり大きな手ごたえを感じました。

人を見て、個々の能力を伸ばす 坂本流チームマネジメント

チームで仕事をするには、誰が何に向いているのか、それぞれの能力を見出すことも重要です。看護師長時代、どうしても仕事がうまくいかない助産師がいました。夜勤を任せるのも不安ですし、みんなで心配していました。ですが、よく見ていると彼女は出産時の出血量等のデータを取るのが得意だとわかりました。

当時、産婦人科病棟ではお産に関するデータの取得・分析を行う必要性を感じていました。例えば、妊娠後の体重増加は難産の可能性を高めるというデータに基づいて説明すれば、栄養指導がスムーズですよね。そこで、彼女を中心に、お産に関するデータの取得・分析プロジェクトを始めることにしたのです。こうして活躍の場を設けたところ、いきいきと働き、周囲にも認められるようになっていきました。

仕事がうまくできない人には、何を任せていいのかわからず、本人も居づらくなって辞めてしまうことがあります。ですが、私はどんな人にもしっかり働いてもらいたい。そのために、その人をきちんと見て、秀でたところを見つけるよう心がけています。

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坂本すがさんの「座右の銘」は?

おもしろいことをさがしてワクワクしよう

私は田舎生まれなので、川で泳いだり山を探検したりして育ちました。それが原体験となり、今でも好奇心旺盛で面白いことが大好き。この年齢になっても、ワクワクすることはないかと絶えず目を皿のようにして探しています。看護師の仕事においても、それは同じ。大変なことがあれば「じゃあ、こうして工夫してみない?」と考え、誰かが落ち込んでいたら「何か食べにいかない?」と話を聞く。「面白いことやろう」が、私のモットーです。

坂本 すがさん
東京医療保健大学 副学長
医療保健学部 看護学科 学科長
助産学専攻科 専攻科長

1972年、和歌山県立高等看護学校保健助産学部卒業。2007年、埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。76年4月、関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)入職し、1997年より看護部長を務める。06年、東京医療保健大学看護学科学科長・教授就任。中央社会保険医療協議会専門委員などを歴任。2011年6月~17年、公益社団法人日本看護協会会長。17年6月より現職。

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