小林光恵さんの おやすみコラム #012「離常食というおくりもの」
2023/10/11
みんなの広場
2026/9

ステルベン(sterben)は、死ぬ、亡くなるを意味するドイツ語で、日本の医療界で使われていますが、現場のスタッフ間では「ステった」という形で使われることがあり、そちらのほうが隠語の度合いが高くなっていると思います。
〇〇った、という言い方は、過去形のややくだけた表現であって、私は自分の口が実際に「ステった」と発する時、以前からその言い方に小さな不安を感じていました。アポった、コアグった、ネクった、などの出来事と同列に扱っている感じで、それはどうなのか、でも、スタッフ間の情報伝達のためのいわば記号なのだから同列でまったく問題ないのでは? でも、例えば誰かのお位牌がそぐわない場所に置かれていることにも似ているような……。
まったく関係のない「やった」「拾った」「願った」といった語尾の響きを耳にするだけで、「ステった」について考えだすこともあったりして。小さな悩みは解決しないままになりがちですが、この小さな不安も胸の内の隅に置かれたままでした。
先日、「ステった」ではなく「お帰りになりました」と表現するようになった緩和ケア病棟があると聞きました。すると、小さな不安が消えたようです。パート先の介護施設でうどんがお好きな女性利用者に「今日のお昼はうどんですよ」と声をかけると、彼女が「やった!」と無邪気に喜んでバンザイをしたので、私は一点の曇りもない気持ちで小さくバンザイをしたのでした。
ところで、鉄道業界には、タダ乗りなどの不正乗車の客を「薩摩守(さつまのかみ)」と表現する隠語があるとのこと。平安末期に薩摩守の役職にあった平忠度(たいらのただのり)にちなんでいるようです。各業界にさまざまな隠語があるのでしょうね。

| 著者/小林 光恵さん | 元看護師。著述業。つくば市在住。 エンゼルメイク研究会代表、ケアリング美容研究会共同代表。 看護師、編集者を経て、1991年より本格的に執筆業を中心に活動。『おたんこナース』『ナースマン』など。 <新刊情報 !> 老化にブレーキをかける! 日常でできる運動方法がギュッと詰まったエクササイズ本 『日常動作が安心&快適に!老化防止エクササイズ おうちで簡単カラダづくり』(メイツユニバーサルコンテンツ)が発売中! <多数のメディアで連載中!> ●小説『ナイチンゲール7世』 (イースト・プレス) ●小説 『令和のナースマン』 (月刊ナーシングキャンバス 株式会社Gakken) ●エッセイとイラスト 「アンチヘブリンガン」 (月刊ナーシング 株式会社Gakken) ●コラム 小林光恵の「ほのぼのティータイム」 (Aナーシング 日経メディカル) ●コラム 「ついついやってしまいがちなエンゼルケア」 (Will Friends 日本看護学校協議会共済会) ●ドクターズコラム (健達ねっと メディカル・ケア・サービス) など |
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