資格のチカラ

2023/11

ビューティタッチセラピスト

ビューティタッチセラピストは、肌に触れながらスキンケアやメイクを施すことを通して、高齢者の心と身体の健康をサポートする美容療法の専門家です。介護に関する基礎知識を含め、高齢者に対する専門的な美容知識と技術に基づいたケアで、QOL(生活の質)・ADL(日常生活動作)、免疫力の向上など介護予防に貢献しています。

介護福祉士から介護美容の道へ 「美容の力」と「触れる」ケアで高齢者を元気に

資格取得年月:2020年12月
介護美容サービス ぬくもりんご
介護美容×介護福祉士

ごしま めぐみ五島めぐみ

近年、介護を必要とする高齢者に肌のお手入れやメイクを施す「介護美容」が、認知症予防や抑うつの低下など、心と身体の健康に効果をもたらすとして注目されています。「心が動けば身体が動く」――介護現場での実体験から、ビューティタッチセラピストの資格を取得し、介護美容で自ら起業した五島めぐみさんに、資格取得の経緯や今後の展望を聞きました。

介護現場でのモヤモヤが晴れた、介護美容との出会い

介護福祉士としてのご経歴と現在のご活動について教えていただけますか。

私は高校の福祉科で3年間介護を学び、卒業時に介護福祉士国家試験を受験し資格を取得しました。その後、結婚・出産を経て、介護福祉士としてデイサービスで5年間勤め、現在は住宅型有料老人ホームの登録ヘルパーとして従事しながら、2021年に立ち上げた介護美容サービス「ぬくもりんご」でビューティタッチセラピストとして活動しています。

ビューティタッチセラピストについてどのように知ったのですか?

デイサービスで勤務していた頃、たまたま読んだ新聞記事で「整容介護※」について知ったのがきっかけです。これこそ自分が介護現場で大切にしたいことだと感じて、勉強できる場所を調べていく中で、日本介護美容セラピスト協会のビューティタッチセラピーに出会ったんです。

※洗顔や整髪、口腔ケア、爪切り、髭剃りなど、身だしなみを整えることで、高齢者の自立をサポートすること。

介護美容を「これだ!」と思った理由は何だったのですか?

遡ると高校で介護実習をしていた頃から、高齢者の方の尊厳を大切にその方らしく元気に過ごしていただける介護って何なのだろうという、モヤモヤした気持ちを抱えていました。でも当時は何をしていいかわからず時間が過ぎ、デイサービスで働くようになって、また同じ気持ちを抱いていました。でもある日、女性のご利用者様に口紅を塗ったら、すごく素敵な笑顔になったのが強く印象に残っていました。普段は食事後の時間に寝てしまうことが多かったのが、他のご利用者様との会話が弾み、生き生きとした姿が見られました。キレイやおしゃれを楽しむことが活力となって、人との交流が生まれていたのです。

ビューティタッチセラピストの五島めぐみさん「子育てを通しても、肌と肌の触れあいが愛情や安心感となることを実感し、介護現場では本音を引き出せるきっかけとなることを実感。『美容の力』と『触れる力』の両方を叶えられる介護美容に、『これだ!』と思いました」

そのことが原体験として心に残っていたのですね。

そうですね。人は歳を重ねるにつれて鏡で自分の顔を見る習慣やお化粧をする機会が減ってしまいがちです。口紅を塗るのも、最初は皆さん「歳だからいいわ」と遠慮されていましたが、一人の方が塗った姿を見て、皆さんもつられて「私も」と希望され、活気にあふれていました。それで次にデイサービスに来る時にはいつもよりおしゃれされていたり、リハビリも前向きに取り組まれる様子が見られたり、よい連鎖が生まれていたんです。このようなきっかけを介護現場に広めることでご利用者様も介護現場もより明るくなると思い、資格取得を目指しました。

仲間とのオンライン練習で苦手なメイクを克服!

ビューティタッチセラピストの認定までのプロセスを教えてください。

認定基本講座は、ハンドセラピー、フェイシャルセラピー、メイクキュアセラピーなどの講座があり、高齢者に対する美容知識や技術、お声がけなどの接遇を幅広く学びます。各講座では10名の方に施術し、レポートする課題があります。施術する方の肌質や骨格に合わせたケアをはじめ、年齢や生活環境に合わせた会話に対する意識が高まりました。

講座の中で特に印象に残ったことはありますか?

施術では、いきなり肌に触れるのではなく、まずご利用者様と目線を合わせて声がけし、リラックスしていただいた状態で始めることが大切です。講座で見せていただいた講師の手本は見事で、同じ言葉かけでも顔の表情や目線の位置によって伝わる雰囲気が全く違うのが印象的でした。

勉強や認定試験の準備で大変だったことはありますか?

私自身、それまで職場ではすっぴんでもいいと思っており、介護美容に出会って化粧を意識するようになったので、施術をすべて覚えるのには苦労しました。肌の触れ方も、触れるスピードや肌と肌の密着度で感じ方が変わってくるので、習得が大変でした。でも同期の方たちとグループLINEを作って学習内容を報告し合ったり、試験前にはオンラインで練習会をしたりしたことが、すごく励みになりましたね。

同期の方にはどんな職種の方がいたのですか?

私と同じ介護福祉士のほか、民生委員、元美容部員、整体師、美容が好きな方と、職種や参加理由はバラバラでしたが、皆さん「高齢者を元気づけたい」という同じ志をもっていたので、よい刺激を受けました。民生委員の方は、地域密着型の高齢者サロンでビューティタッチセラピーの体験会を開いてくれて、試験前に実践の練習を行うこともできました。高齢者の方々が集って交流する場所をつくることの大切さをあらためて感じた体験でした。

ケアの中から生まれる対話も大切なのですね。

そうですね。これまで現場で関わってきたご利用者様の中にも、例えばご家族への要望や寂しい思い、不安を遠慮して口に出せない方が多くいらっしゃいました。でも資格を取得してあらためて実感したのですが、触れながらのケアをしていると、徐々に心がほぐれてそうした本音をポロポロ話してくださるんです。第三者が話を聞く機会をもつことで、家族間のわだかまりが解けるきっかけとなることもあります。ケアでは、言えずにいる気持ちや、自然と蓋をしてしまっていた本音を吐き出すことで気持ちが軽くなったり、前向きになっていただけたりすることを意識しています。

ビューティタッチセラピーの施術風景施術では、ご利用者と目線を合わせて声がけすることを大切にしている。

次のページ:独立による、介護現場への新たなアプローチ

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「絶対に届ける」という思いで、仕事と家事・育児を両立!

「資格取得時、ビューティタッチセラピストとは別に、他の資格の勉強もしており、仕事と勉強と家事・育児の両立は正直大変でした。でも『介護現場に早く届けたい』という思いが強かったので、気持ちが揺らぐことはなかったですね。子どもたちにも施術の練習に協力してもらい、助かりました!」

取得方法・お問い合わせ

資格主催団体名一般社団法人 日本介護美容セラピスト協会
資格種類ビューティタッチセラピスト
受講資格なし。
以下の資格を保有し、現役で就労されている方は、介護基礎講座が免除となります。
保健師・看護師・准看護師・介護職員初任者研修修了者・ホームヘルパー1級、2級・
介護福祉士実務者研修修了者・介護福祉士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・ケアマネージャー
ホームページ一般社団法人 日本介護美容セラピスト協会

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