診療看護師を目指したワケ 高度な医療知識と判断力で、チーム医療のキーパーソンに
2024/7/16
私たちの働き方改革
2022/9
新井
タスクシフトは医師との信頼関係のもとに行われますから、実際に手技を行うスタッフがきちんとできなければ、任せてもらえなくなると思っていました。だからこそ、実施方法や計画は綿密に、私自身が自信をもてるようになるまでしっかりと考え、作り込みました。
取り組み実施者側には規定を設け、「小児の集中治療に携わる看護師のクリニカルラダー(※1)」のⅣ(幅広い視野で予測的判断をもち看護を実践する)以上のレベルのスタッフのみ、実施可能としました(※2)。これも安全性を確実に担保するための判断です。さらに、効率的な指導を行うために、医師の手順書をもとにしたオリジナルのマニュアル、指導者や医師による技術チェックを受けるための指導チェックリストを作成。また、手技の手順を確認できる動画を集中ケア認定看護師のスタッフが作ってくれました。3分ほどの長さで気軽に見ることができますから、スタッフの学習にも役立ったのではないかと思います。
※1 日本看護協会、日本集中治療医学会看護部会のラダーを参考に作成されたラダー
※2 2022年9月時点では、安全性が担保されたことを受け、実施可能レベルをⅢ―Ⅰに変更
▲手順を学べる約3分の動画を作成
猪瀬
ほとんどのスタッフが前向きに取り組んでいましたが、「これは医師の仕事ではないか」という反応もゼロではありませんでした。そうしたスタッフには、強引に押し付けるのではなく「あなたはこうした業務ができるレベルにいるということだよ」とプラスにとらえてもらえるような伝え方をしました。
新井
勉強会も実施しましたよね。私たちがタイムリーに気管内チューブ固定テープ交換を行えば、医療関連機器圧迫創傷(以下、MDRPU)の発生率を減らすことができるはずだと伝えました。恥ずかしながら、気管内チューブ固定テープ交換を実施する前のMDRPUの発生率は、66%(※3)と非常に高かったのです。こうした現状に加えて、看護師がテープ交換に対応できれば、交換時に口腔ケアを行うことができることも伝えました。「患者さんにとっても、自分たちにとってもよいタイミングに口腔ケアができ、MDRPUも予防できるなんて最高じゃない?」とお話しすると、後ろ向きだったスタッフも納得して取り組んでくれるようになりました。
猪瀬
こうしたMDRPUの発生率や動脈ラインポートからの採血数などの情報を、スタッフステーションに設置しているディスプレイを使ってリアルタイムにフィードバックしていました。自分たちの現状を知ってほしかったですし、目に見える形でないと達成感を得にくいのではないかと思ったからです。データを見た先生方が、「助かるよ」と私たちに声をかけてくれたこともあり、スタッフのモチベーション向上にも大きな効果があったと思います。
※3 集計期間:2020年4月~6月
<計算式> MDRPUインシデント件数/5mm以上の挿管チューブ使用数
▲スタッフステーションの大型サブディスプレイにMDRPUの発生率や動脈ラインポートからの採血数などを表示
次のページ:看護師の超過業務時間は約1.5時間、MDRPUの発生率は50%減少
施設名 | 地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都立小児総合医療センター |
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住所 | 〒183-8561 東京都府中市武蔵台2-8-29 |
開設 | 2010年3月 |
病床数 | 561床(一般347床、結核12床、精神202床) |
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