私たちの働き方改革

2024/12

ナースコールから解放される休憩時間を確保し、夜勤の負担を軽減

ナースコールから解放される休憩時間を確保し、夜勤の負担を軽減

ナースコールを外すことで、精神的な解放感も

土田

取り組みを始めて3ヵ月後にアンケート調査を行ったところ、一定の効果が出ました。取り組み前は、52%の看護師が「1時間の休憩を取れていない」と回答していましたが、取り組み後は19%に。現在はすべての看護師が1時間の休憩を取っています。

当初の課題だった業務量の偏りと、それにともなう不公平感も解消されつつあります。以前はベテラン看護師が重症の患者さん、認知症のせん妄の強い患者さんを担当していましたが、今では他の看護師もこうした患者さんのケアを行うようになり、お互いに助け合っています。誰かひとりに過度な負担がかかることもなくなりました。その結果、患者さんをお待たせすることなくナースコールに対応できるようになり、患者さんにとってもプラスの効果が生まれています。

今田

現場の看護師は、ほぼ全員、この取り組みを高く評価しています。休憩中の1時間はナースコールに一切対応しないため、「体の負担が減った」「心理的にも解放された」「リフレッシュできて、休憩後にしっかり対応できるようになった」という意見が挙がりました。

8時間の勤務中、担当病室のナースコールには常に対応しなければならないと思うと、気持ちが張り詰めた状態が続きます。1時間でも担当から外れることで、精神的にとても楽になったようです。看護師間にも“お互い様”の精神が芽生え、チームワークも良くなりました。

土田

看護師は常にナースコールを受ける端末を身につけていますが、それを物理的に外すようにしたのも良かったですね。端末を他の看護師に預けることで、勤務時間と休憩時間のメリハリもつきますし、気持ちも解放されます。特にこちらからアドバイスしたわけではなく、看護師が自発的に外すようになりました。

今田

この1時間は、看護師がそれぞれ自由に使える休憩時間です。ゆっくり休む人もいますが、中には看護記録を書いたり、委員会活動の仕事をしたりと業務にあてる人も。「ナースコールを受けながらでは込み入った仕事はできないけれど、休憩時間を使うと効率化できる」という意見も聞かれました。

土田

各看護師の伝達スキルも向上しました。夜間の患者さんの容態が急変した場合、以前は夜勤帯のリーダーから医師に報告していましたが、現在は立場にかかわらず、患者さんの容態変化を最初に把握した看護師が、自分の口で医師に伝えています。また、以前はリーダーが担当していた日勤看護師への申し送りも、それぞれが行うことに。どの看護師もみんなの前できちんと報告できるようになりました。

今田

こうした取り組みが認められ、山形県看護協会の「看護の業務改善 in 山形」で「Goodチームワーク賞」を受賞したのは、とてもうれしいサプライズでした。日頃から「チームワーク良ければミスもなし」を合言葉に看護師間の連携を深めているので、チームワークを評価していただいて、大変光栄です。

土田

取り組みを推進するには、病棟師長のような中間管理職が先導する必要があります。看護師は、真面目でついがんばってしまう人が多く、「休みたい」となかなか言えない人もいます。そこに気を配れる病棟師長がいると、病棟の雰囲気も変わるのではないでしょうか。万全な体調でよりよい看護を提供するのは、看護師の基本です。身体的、精神的な健康管理は、患者さんのためでもあります。看護師としての使命をもう一度見つめ直すと、こうした取り組みも実施しやすいのではないかと思います。

「看護の業務改善in山形」でGoodチームワーク賞を受賞された真室川病院様

休憩ルールを応用し、二交代制をスムーズに導入

土田

今回の取り組みは成功しましたが、当院の看護部にはまだ課題が残されています。そもそも小規模な病院なので夜勤の担い手が少なく、新たに看護師を募集してもほとんど応募がありません。看護師の高齢化が年々進めば、夜勤の人員確保はますます難しい問題になっていくでしょう。できるだけ負担を軽減し、60歳を超えた看護師でも夜勤ができるよう、新たな体制を考えていかねばなりません。

その一環として、2024年4月からは日勤(8:30~17:15)と夜勤(16:30~9:15)の二交代制も導入しています。三交代制を継続している看護師もいますが、今ではほぼ二交代制に切り替わりました。休憩1時間ルールを応用し、夜勤中は誰もが2時間の仮眠を取り入れています。休憩時間を確保する取り組みがなければ、ここまでスムーズに二交代制に移行できなかったと思います。

こうした改善には、看護師の協力が欠かせません。看護師の業務量は以前よりも増え、多重かつ多様な仕事を担っています。業務量はすでに限界に達しているため、何かひとつ作業が増えたら、他の何かを減らさなければ看護師は疲弊してしまいます。今回、休憩を1時間確保するにあたり、私たちは業務改善も行いました。例えば、おむつ交換の回数を減らすため、おむつの種類を変えるといったことも改善点のひとつ。看護師の働き方改革においては、仕事量のプラスマイナスのバランスを取り、彼らの表情や言葉に気を配ることが大切だと思います。

今田

今後もささやかな気づきを大切にしながら、みんなで意見を出し合って業務改善に取り組んでいきたいですね。負担軽減に努め、働きやすい職場環境を整えていきたいと思います。

土田

私たちが楽しく仕事をすれば、「看護って楽しいんだよ」と周囲に伝わり、看護師になりたい人も増えると思います。今後は、病院という箱の中にとどまらず、医療、福祉、介護がさらに連携を深め、住民サービスにより一層の貢献ができたらと考えています。地域医療において、看護師の持つパワーは欠かせません。地域に活動を広げ、楽しみながらよりよい看護を提供できたらうれしいです。

夜勤負担の軽減に成功した町立真室川病院看護部の皆さま

文:野本由起/写真:町立真室川病院ご提供

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施設名町立真室川病院
住所〒999-5312 山形県最上郡真室川町新町469-1
開設1956年
病床数 55床
ホームページhttps://www.web-clover.net/mamurogawa-byouin/

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